しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「U ウー」  皆川博子 

2018年09月29日 | 読書
「U ウー」  皆川博子  文藝春秋  
 
1915年、ドイツ。
イギリス軍にUボート13が捕獲される。
Uボートに秘密を守る為に、31歳の乗組員、二等水兵のハンス・シャイデマンが自沈作戦任務を志願し実行する。
そのハンスを救出に向かう為、Uボート19が向かう。
ハンスの身元を確認する任務で、民間人で王立図書館の司書、ヨハン・フリードホフを乗船させる。
ヨハンはハンスを「私の半身」と言う。
U19の19歳の二等水兵、ミヒャエル・ローエは乗船したヨハンに「久し振りだな」と声を掛けられる。
ミヒャエルは、子どもの頃にヨハンに出会い、やはり「久し振りだな」と声を掛けられた事を思い出す。
ミヒャエルは幼い頃両親を亡くし、ハンスに引き取られて暮らしていた。

1613年、オスマン帝国への道。
荷馬車が強制徴募(デウシルメ)した少年たちを乗せ、カルパティアの山並みを越え首都のイスタンブールへと運んでいる。
そんな中で13歳の少年、マジャール人のヤーノシュ・ファルカーシュとドイツ人のシュテファン・ヘルクが知り合う。
ルーマニア語が分からないシュテファンに、ドイツ語で通訳してくれたのがヤーノシュだった。
その2人に11歳のルーマニア人のミハイ・イリエが慕い付き従う。
オスマン帝国の軍隊に入れられるため、少年たちはムスリムに改宗させトルコの名前を与えられる。
シュテファン(サリフ)は王宮で仕える廷臣に選ばれる。
ヤーノシュ(ラマザン)とミハイ(イスマイル)はまずは農民に預けられ、言葉や生活様式を身に付けてから新たに軍隊に入れられる。
やがて戦いの中3人は再会する。
物語は300年の時を繋いで続いて行く。










オスマン帝国が勢力を誇っていた時代。
知っている事はあまりなく、興味深くその時代や歴史も知っていく。
ミハイの出身はルーマニアのトランシルヴァニア。
ドラキュラのモデルとなった串刺し公、ヴラド・ツェペシュを思い出し、実際に串刺しの話も噂話で出て来る。
物語の時代より少し前の話。
永遠の命を得たドラキュラだが、この物語でも同じような事が起こる。
シュテファンとヤーノシュが、300年後の世界を生きる。
永遠の命を得るのには、色々な方法があるのだ。
吸血鬼になったり、火の鳥の血を飲んだり。
シュテファンとヤーノシュの場合はまたちょっと違うのだが。
2人にともにミハイの存在が大きく、物語を動かし面白くしている。

ラストは思いもしなかったものだった。
遠い時と、自分を取り戻す旅を続けて来た2人のエンディングに相応しいのかも知れない。
そして、ミハイの血はずっと続いて行くのだろう。


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