しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「カロライナの殺人者」 ディヴィッド・スタウト 

2011年01月11日 | 読書
「カロライナの殺人者」ディヴィッド・スタウト  MYSTERIOUS PRESS BOOKS       
CAROLINA SKELETONS          堀内静子・訳

アメリカ、サウス・カロライナ州アルコル。
1944年3月下旬。
タイラー製材所には、そこで働く黒人たちが暮す、掘立小屋の村があった。
その近くで、シンディ・ルーとスー・エレンの2人の少女が殺される。
犯人として逮捕されたのは、14歳の黒人の少年、ライナス・ブラッグ。
ライナスは裁判で死刑判決を受け、1944年6月16日に刑が執行される。
それから44年後、ライナスの姉の息子、ジェイムズ・B・ウィロップがアルコルを訪れる。
母親が残した手紙に、ライナスは殺していないからそれを調べてほしいと書かれていたからだ。




2部構成の物語。
14歳の黒人の少年が死刑になるという実際にあった話をモチーフにした2部構成の物語。
1部は殺人事件が起こり、ライナス少年が死刑になるまで。
2部はジェイムズが事件を調べたことにより、新たな事件が起きる。
その時代の白人と黒人の関係がよく分かる。
白人の少女を見ることさえ悪いと教えられる、黒人の少年。
黒人をあからさまに差別する白人と、同じ人間として扱おうとする白人。
人種政策が、政治家の立場を決める。
犠牲になるのは、弱い立場の人間。
分かり合おうとしても、まだまだ色々なことで難しい時代。
やり切れなさだけが残る。
時代は、黒人にも好意的であろうとした保安官にも間違いを起こさせる。
なぜ、しっかりと事実を聞かなかったのだろう。
ライナスが何に罪悪感を持っているか、見抜けなかった。
そして、弁護士。
黒人に好意的な弁護士だったら、状況は変わったことだろう。
形だけとも言えないくらい、お粗末な裁判。弁護士はいなかったと同じ。
2部の1988年でも、まだ白人と黒人は同じにはなれていない。
それは今も変わらないのだろうか。
静かに進む物語だが、後半は激しく動くき、ミステリとしても読み応えがある。
心情が丁寧に書かれ、人間について考えさせられる。
ライナスと、死んでしまった少女が哀れだ。

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