しましましっぽ

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「刑事たちの四十八時間」  アレックス・グレシアン 

2016年07月28日 | 読書
「刑事たちの四十八時間」  アレックス・グレシアン   創元推理文庫   
 The Black Country   谷泰子・訳

1890年3月、英国中部地方、まだ雪が降り寒さ厳しい炭鉱の村ブラックハンプトン。
プライス家の3人、両親のサットンとへスターと、末の息子オリヴァ―が行方不明になる。
村のハリー・グライムズ巡査はスコットランド・ヤードに応援を要請。
2日間の期限でウォルター・ディ警部補とネヴィル・ハマースミス巡査部長が派遣される。
村には古くからの迷信があり、宿屋の主人ローズは、子どもはもう死んでいると確信していた。
その為、あまり捜索は行われていないようだった。
プライス家の残された子どもは12歳のピーターと11歳のアナ、5歳のヴァージニア。
へスターは後妻で、オリヴァ―だけが本当の子どもだった。
捜索を開始したハマースミスはやがて、血に染まった小さいドレスを発見する。

―英国中西部のわらべ歌―
生首さらす 血まみれがいこつ
悪い子どもを 家からさらい
連れてゆくよ 荒れはてた かくれ家へ
そして その子は もうそれっきり

「刑事たちの三日間」の続編








前作より1日短くなって、2日間の物語。
冒頭のシーンから、ゾクゾクする不気味さが。
炭鉱の町と言うだけで、暗いイメージ。
それが地盤沈下をおこして地震が頻繁に起こり、外は視界が遮られるほどの吹雪。
そして、迷信に囚われている村人たち。
何が起こってもおかしくない舞台が整う。
読んでいるとつい時代を忘れそうになるが、1890年なのだ。
ディとハマースミスが捜査するのは失踪事件だが、その中にかなり盛りだくさんに織り込まれるそれぞれの人物の物語。
あっさりと語られるには重すぎる事が沢山あって、その心情に追いつけない所も。
プライス家の出来事を、もっと詳しく描いて欲しかった。
結論としては、愛憎の果ての悲劇。
世の中、色々な事が同時進行するのだ。
始めは何となく悪ガキのように思えたアナとピーター。
実はそうではなく、機転が利く愛情深い性格だった。
ディとハマースミスのやり取りや、キングスリー博士とヘンリ―のやり取り。
人との繋がりが悲劇を招くが、ほっとさせられる関係もあると思わせてくれる。
ただ、グライムズ巡査があのままで、物語が終わってしまったのは、酷すぎる。
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