しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「魔界転生」

2006年09月29日 | 観劇
2006.9.2(土)~9.26(火)  新橋演舞場
原作 山田風太郎  脚本・演出 G2
<ストーリー>
*落城した島原城、戦いの場にいた宮本武蔵を女人を従えた由井正雪が訪ねて来る。
武蔵の前で女を切り、その中から荒木又衛門と天草四郎を転生させる。
そして、武蔵にも転生を勧め、その時の為にとお通の姪を置いて行く。
*それから8年後、柳生の郷で暮らす十兵衛の元に、和歌山の紀州藩から家老の娘お縫と家老が逃げて来て、紀州藩の危機を伝え、十兵衛に助けを求める。藩主、徳川頼宣は魔物に憑かれていると。
*十兵衛は紀州藩に乗り込むにあたり、弟子の柳生衆に命をもらう。
十兵衛は様子を探る為ひとり紀州藩に、柳生七人衆達は巡礼を装うにあたり、1番札所の那智山は青岸渡寺に向かい、白浜で落ち合う。
*魔界衆は十兵衛を仲間に引き入れようと巡礼の行く先々で待ち受ける襲いかかる。


<感想>
柳生十人衆が柳生七人衆になったり、紀州家の家来の娘がお縫一人で、弥太郎は始めから柳生にいたり、魔界衆も少なかったり、全体的に人数が少なくなっていた。
細かい事は原作と違うが、原作の流れを踏んだ作りだった。
登場人物の雰囲気もみんな似ていたので、気持ちが落ち着いて見ていられた。
原作と比べて見てしまうが、始めの島原落城のシーンや、魔界に転生するシーンなど芝居らしい見せ方は面白かった。      
魔界衆の衣装も豪華だったし、四郎の白い衣装もよかった。
原作と一番違うのは、主役が柳生十兵衛と天草四郎になっていたので、天草四郎の役がより重要になっていたこと。(これは映画と同じ) 
原作は魔界衆のひとりで、話の途中で十兵衛に切られてしまう。
折角、天草四郎を主役にしたのだから、四郎の恨みをもっと全面に押し出してもいいような気がした。ラストがその様な作りになっているのだが、途中で柳生親子の戦いもあるので、ちょっと曖昧になっている感じがする。
十兵衛と四郎の戦いをもっと強調すれば…と思ってしまった。   
魔界衆と十兵衛達の戦いは、ちょっと迫力がなかった。
天草四郎のキャラクターは、中性的で面白かった。しかし、最期はあんな風に味方に裏切られてしまうのは、なんだか寂しい。すっぱりと十兵衛に切られて欲しかったと思う。
笑いを誘う場面も多かったが、原作もそんな雰囲気なので。


*中村橋之助 柳生十衛
 やはり存在感がある。動きが綺麗なのは姿勢がいいから。殺陣も真っ直ぐの姿勢のままで振り向く時や切る時に歌舞伎の型が入っていた。激しく切り結ぶ訳ではないが、これは歌舞伎調だからかと勝手に理解した。
重々しさのない人のよい十兵衛は原作と同じだった。
始めは両目とも開いていので、あれっと思ったが、途中で切られる設定で、最後は片目になっていた。始めからだと大変だからか。
しかし、チラシと舞台とでは、見えない目が違っていた。どっちが本当だったか・・・本にはきちんと書いてあるのだが、忘れた。

*成宮寛貴 天草四郎
 始めて見たのだが、妖艶な感じで綺麗だった。
衣装をなびかせての動きもすーっと優雅に動く感じで、人間ではない魔界のものという感じが出ていた。それの応じた様な話し方もよかったと思う。
しかし、もう少し十兵衛と対等に戦って活躍しても欲しかった。
話している表情が、香取慎吾さんに似ていると思ったのは、口が大きいからだろうか。

*笠原浩夫 由井正雪
 堂々とした歩き方や、流暢に台詞を言って口のうまい正雪の役をこなしていた。
最後に天草四郎と会話をするシーンがあるが、即座にぴりっとした空気になった。
存在感は正雪の方が勝っていたような気がするが、原作にはないこのシーン、よかった。
笠原さんは始めての本格的時代劇という事で、花道と殺陣を楽しみにしていたようだが、花道からの登場でひとつクリア。殺陣の方は刀を振り回してはいたが、殺陣はなかった、残念だったかな。
そう言えば、このような舞台の稽古は始めから浴衣を着るそうだ。
笠原さんはその為に浴衣を購入したそうだが、それが随分お高かことを後で共演者に聞いて知り、悔しがっていた。

*弥太郎は子役。台詞もしっかり言って、可愛かった。子どもを見るとほっとして、優しい気持ちになれる。  

*遠藤久美子 お銭
 魔界衆の一員だけれど、いまひとつ役所がこの舞台では分からない気がする。魔界衆のまとめ役と言う感じでもあったが、天草四郎より宮本武蔵に付く利点がよく分からない。
しかし、遠藤さんの声はよく通る。目も大きくてはっきりした顔立ちは舞台向き。 
*馬渕英俚可 お品
 十兵衛を誘惑する役なので、女性人の中では1番色っぽかった
*藤谷美紀 お縫
 こちらは十兵衛側で、武家の娘。きりっとした清楚な感じだった。

メインの女優さんは3人、それぞれの役の個性があった。     

*六平直政 柳生但馬守      
 人間の時は優しい物分かりのいい人と言う感じだったのに、魔界衆になったらがらりと雰囲気が変わった。メイクもあるのだろうが、さすが。

*田尻茂一 宝蔵院胤舜 
 田尻さんは始めから魔界衆になって登場するのだが、あまり迫力なく、わりと普通の人だった。首を取られて作り物の首が登場するのだが、それが結構似ている。自分で見たら嫌だろうな。

*西岡徳馬 宮本武蔵
 原作でも飄々とした武蔵だったけれど、舞台も同じだった。
白髪をなびかせて、どっしりしている武蔵だった。

*柳生七人衆は年齢もばらばらで、それぞれ個性もあるのだが、1回見ただけだと、多少混ざってしまう。わりとあっさり死んでしまうので残念だけれど。
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