しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「優しすぎて、怖い」  ジョイ・フィールディング 

2011年09月04日 | 読書
「優しすぎて、怖い」  ジョイ・フィールディング         文春文庫
 SEE JANE RUN         吉田利子・訳

春遅いある日の午後、ジェーンはミルクと卵を買いに出かけ、自分が誰だかわからなくなった。
何の予兆も予感もなかった。
自分の名前も年も家も分からないのに、ミルクと卵を買いに行く途中だということは知っていた。
そしてコートの下の服には血が付き、ポケットには現金1万ドルが入っていた。
警察に助けを求め、行った先の病院で「ホイティカー先生の奥さんですよね」と声をかけられる。
小児外科医のマイケル・ホイティカーの妻、ジェーンだと身元がわかり、マイケルが迎えに来る。
しかし、ジェーンは夫を見ても、家に帰っても何も思い出せない。
そして、日々体調が悪くなっていく。
それは、夫が飲ませる薬のせいかも知れないと、ジェーンは思う。






自分が誰だが分からない恐怖。
自分の主張が受け入れられない恐怖。
子どもを奪われるかも知れない恐怖。
頭が混乱しながらも、そんな恐怖に向かい合い解決しようと行動するジェーン。
ジェーンの行動力が、道を切り開いている。
記憶を失う前のジェーンは、かなり短気で行動的な女性らしい。
おしとやかな悲劇のヒロインでないところが、面白い。
そして、記憶を取り戻そうとする物語から、思わぬ方向に展開していく。
その流れがスムーズで、スリリング。
世の中は理不尽だ。
裁判になる場面で、最後に現れた強力な助っ人。
その存在がなければ、この後どうなっただろう。
この裁判になる事件だけでも、ひとつの物語になる。

正反対な内容の話しを聞いたら、どちらを信じるか。
まったく知らない人たちなら、その人の見た目や社会的な地位が判断の要素になるだろう。
知っている人なら、どちらと親しいかが要素になりそう。
そんなことを考えると、真実を知るのは結構難し気がする。

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