しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「倒錯の死角(アングル)」【201号室の女】   折原一  

2011年09月05日 | 読書
「倒錯の死角(アングル)」【201号室の女】   折原一          創元推理文庫

東京北区東十条。
古い木造2階建てに、翻訳家の大沢芳男は伯母と2人で暮らしていた。
2階の部屋からは、隣にあるアパート、メゾン・サンライズが見える。
芳男には、のぞき願望があり、屋根裏から201号室の若い女性を見ていた。
ある日、その女性が殺され、その死体を見てしまったショックから、芳男は酒に逃げアルコール中毒になる。
3ヶ月入院して、アルコール中毒を治療して退院した日、その部屋に若い女性が倒れているの発見して愕然となる。
まさか、退院したその日に、また同じ部屋で女が殺されるなんて。
しかし、その女性は起き上がり、芳男の視線に気が付き会釈をする。
それは、就職して、田舎から引っ越して来たばかりの清水真弓だった。
真弓の存在が、芳男ののぞき願望を刺激し心を乱していく。







大沢芳男と清水真弓、そして、アルコール中毒治療の病院に同じ時にいたこそ泥の曽根新吉。
3人の視点で書かれていく。
叙述トリックではあるのだが、それほど複雑ではないと思っていた。
それほど、突拍子がないこともなく、ありそうな物語。
しかし最後に分かる、隠された真実。
そういう訳だったのかと、今までのことが納得出来た。
と、そこで終わりではなく、その続きが。
それがまた、意外なことばかりぽろぽろと。それも狂気だらけ。
最後まで気を抜かずに、読みきる。

可哀想なのは、大沢芳男。
確かにのぞきは良くないが、屋根裏から見えなければ我慢出来るくらいのもの。
そして、アルコールは飲まないと思っているのに、それを本気にしない周りの人たち。
芳男のいらいらと落ち着かない気持ちが、狂気に向かっていく様子が痛い。

テンポよく、一気読みの物語。
折原さんの長編第1作。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「優しすぎて、怖い」  ジ... | トップ | 「蛇の歯」  フェイ・ケラ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事