しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「罪と祈り」  貫井徳郎 

2020年09月25日 | 読書
「罪と祈り」  貫井徳郎  実業之日本社   

平成28年。
元警察官の濱仲辰司が、隅田川で水死体で発見される。
現場に駆け付けた刑事の芦原賢剛は、それが幼馴染の濱仲亮輔の父親で、自分にも父親代わりだった濱仲辰司だと知って驚く。
賢剛と亮輔は父親同士も親友だったが、賢剛の父親は5歳の時に自殺していた。
辰司の頭部には殴られた痕跡があり、殺人事件として捜査が始まる。
正義感が強く、トラブルに巻き込まれたことも想像出来なかった。
しかし、亮輔は辰司には自分の知らない一面があるとずっと感じていた。
母親に聞くと、辰司の性格が変わったのは、賢剛の父親、智士が死んでからだと言う。
智士の自殺の原因は誰も知らなかった。
亮輔は父親のことを知りたいと親しくしていた人に話を聞き始める。







現在の亮輔と賢剛、1989年頃の辰司と智士の物語が交互にある。
1989年にも事件があり、それが現在に結び付いていく。
誘拐事件なのでそちらの方に興味がいく。
誘拐と言えば身代金受け渡し方法。
絶対捕まらない方法と言っていたのは、あの昔にあった方法。
ラストは違っても“受け渡し先を移動しながら指示を出して”と言うものは結構多い。
意外と予期せぬ事態が起こりそうな気もするが。
これは警察の人出が少ないから出来た方法とある。
確かにそうかも知れない。
しかし、事件後警察がどんな捜査をしたかなどは一切書かれていない。
警察だってその後は総力を挙げて事件に取り組む筈。
まったく捕まらない事を前提にしているのが少し不思議。

ネタばれになってしまうから、あまり書けないが。

責任の取り方は色々ある。もう少し事件がどう進展するか見極めてからでも良かったのでは。
死んでしまったら、その後に何かあってもどうしようもないだろう。

賢剛が何度か「自分は刑事に向いていないのでは」と思う場面がある。
まさにその通りで、どうしてその事をもっと気にしないのだろうとか、防犯カメラを見る意味とか、こちらでも分かる事が幾つか。
きっと向いていないのだろうな。
そして心情的にも。
身内を庇って、正義が行われない社会になる。
現に今がそうで、忖度し庇い合って権力者が得をする社会になっている。
誘拐計画も、社長の子どもを誘拐するのかと思ったら、社員の子どもとは。
この頃ならオートロックのマンションもそれほど珍しくはない気もするが。
映画『天国と地獄』の高台に建つお屋敷を見上げるイメージとは違う気がする。

ラストの2人の語らいも何だかモヤモヤ。
これで終わるのか。
しかし、「罪と祈り」と言うタイトルから、最後の2人のこの会話が伝えたかった事なのかも知れない。
この2人の気持ちのどちらを指示するか。

これを計画した人達の性格からしたら、子どもの誘拐を計画したことが納得できない。
安易に他者を傷つける犯罪なのに。子どもを誘拐なんてもっとも卑劣だろう。
そして、アレルギーも。
まったく知識のない職業ではないのだから。
食べ物を与える前に「嫌いな物ない?食べられない物ない?」と聞けば小学生なら自分のアレルギーは知っているはずだから。
死ぬもの安易。
もっと大きな何かがあるのかと思ったが。
心情重視で、それにまつわる事件や動機が薄い。
感情移入が誰にも出来ない。
謎があり、それを解き明かして行く過程は面白く、何があったか期待してのだが。
色々突っ込みところがあるが、先が気になって一気読みした。

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