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嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え (岸見 一郎)

2016-05-21 23:41:23 | 本と雑誌

 ここ数年で急激に書店での露出が多くなった「アドラー心理学」の入門書です。
 私自身、まとまった書き物としての「アドラー心理学」をたどったことがなかったので、初歩的なところから覚えとして書き留めておきます。

 まずは、「アドラー心理学」が拠って立つ基本的立場である「目的論」について説明している部分です。


(p36より引用) 「人は感情に支配されない」という意味において、さらには「過去にも支配されない」という意味において、アドラー心理学はニヒリズムの対極にある思想であり、哲学なのです。


 過去に起こった事実は客観的なものであっても、重要なのは、「主観的に」今それをどう意味づけているかです。その意味づけにより“現在のあり方”が規定されるのです。


(p37より引用) 問題は「なにがあったか」ではなく、「どう解釈したか」である


 過去との因果関係に拠る論はフロイト的な「原因論」であり「決定論」ですが、アドラーはこれと対立する考え方に立っています。アドラーは、過去の事柄を以て“できない言い訳”“なれない言い訳”にする考えを「見かけの因果律」と呼んで否定します。


(p82より引用) 本来はなんの因果関係もないところに、あたかも重大な因果関係があるかのように自らを説明し、納得させてしまう


 そういった考え方は、自らライフスタイルを変えたくない、変える「勇気」を持ち合わせていないという姿勢に過ぎないというのです。

 もうひとつ、著者がアドラー心理学における人間関係の型について。「縦の関係」と「横の関係」です。


(p198より引用) アドラー心理学ではあらゆる「縦の関係」を否定し、すべての対人関係を「横の関係」とすることを提唱しています。


  「同じではないけれど対等」という形です。「優越感」や「劣等感」も縦関係で生まれる感覚ですし、「操作」や「介入」も縦関係の中での行動です。アドラー心理学は、「横の対人関係」において「課題の分離」(自分のタスクと他人のタスクの責任の峻別)をスタートに「共同体感覚」に達することを目指していると著者は説いています。そして、それに至るプロセスとして、「叱る」でも「褒める」でもない“勇気づけ”という横の関係に基づく援助の重要性を指摘しているのです。


(p205より引用) どうすれば人は“勇気”を持つことができるのか?アドラーの見解はこうです。「人は、自分には価値があると思えたときにだけ、勇気を持てる」


 さらに、こう続きます。


(p206より引用) 他者から「よい」と評価されるのではなく、自らの主観によって「わたしは他者に貢献できている」と思えること。そこではじめて、われわれは自らの価値を実感することができるのです。


 さて、本書を読み通しての感想ですが、著者の主張には「6割納得、4割モヤモヤ」といった感じですね。
 大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うかである」とか「あなたはあなたのライフスタイルを、自ら選んだのです」といった主張については理解できるのですが、本書において「青年」が「哲人」から何度も何度も否定される「原因論的思考」については、(私も)完全に捨て去ることはできていません・・・。
 やはり、どうやらこれは、もう少しアドラーによる「原典(に近い著作)」を読んでみなくてはならないようです。

 

嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見 一郎,古賀 史健
ダイヤモンド社
コメント (1)
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