Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.500:終わりに・・・eラーニングは破壊的イノベーションとなるか

2014年03月17日 | 小ネタ



最後に、ちょっとまじめな話で、本メルマガを締めたいと思います。

実は最近8年ぶりぐらいにeラーニングの仕事に関わっています。メルマガが
終わるタイミングにこういう仕事が回ってくるというのも何かの縁かと思い、
(本人的には)粛々と任務をこなしています。その仕事の中で「今後のe
ラーニングはどうなっていくのだろう」みたいな話題が出まして、「それっ
て20世紀の終わりにコガがeラーニングの事業を検討していた時と同じQuest
ionじゃないの?」という気持ちになりつつ、本当にどうなるのだろうと結
構マジに考える日々を過ごしております。

そんな中、手に取ったのは『イノベーションのジレンマ』(C.クリステンセ
ン 翔泳社 2001)という本です。クリステンセンの著書は、本メルマガでも
以前『教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する』を紹介
しております(http://goo.gl/GGJjle)。しかし、今回経営戦略の古典とも
呼ばれる『イノベーションのジレンマ』を読み、改めてeラーニングが教育
ビジネスにとって「破壊的技術」になりつつあるという確信を得ました。

クリステンセンによると、破壊的技術を用いた製品は市場投入時以下のよう
な特徴を持っているそうです。
・既存市場の持続的技術を用いて作られた製品に比べて性能が低い。
・技術といっても新しく革新的な技術は使われていない。
・ありものの技術を組み合わせて、安く作られるのが一般的。
・だから安く低利益で経営的なうま味はあまりない。
・でも、シンプルで使い勝手がよく、信頼性が高い。

そのような特徴から
・既存の顧客(特に上客)からは「安かろう悪かろう」と見向きもされない。
・規模が小さく今まで顧客と考えていなかった層から歓迎される。
・そのため賢明な大企業は、破壊的技術を用いた製品の取り扱いをためらう。
・一方で新興の企業にとっては、大企業との競合のないおいしい市場となる。

しかし、時間が経過すると破壊的技術を用いた製品の性能は、既存の顧客の
ニーズを満たすまで向上します。その時既存市場で持続的技術を用いて作ら
れた製品は、一気に市場を奪われてしまいます。

ここ10年のeラーニングにおけるOCWからMOOCの動向を見ていると、まさに破
壊的技術の性能向上の理論があてはまります。特に登場したての頃のOCWは
破壊的技術の特徴にピタリと合致しています。

OCWは講義映像や教材を配信するだけのeラーニングでした。講義映像の流し
っぱなしのケースが多く、IDの視点でみると性能的には劣った内容でした。
また単なる動画配信なので革新的な技術を用いていたとは言えません。さら
に対象も自国の大学に通う学生でなく、優秀だけれども高等教育を受ける機
会に恵まれない世界の人々を対象としていました。そして価格は無料のため、
そこから得られる直接的な利益はゼロでした。

しかしMOOCになり、単なる映像配信から進化し「コースウェア」としての機
能が付加されるようになりました。そして価格は無料のままです。

昨今の教育業界は、既存市場で持続的技術を用いられて作られた製品(この
場合は面接授業や集合研修や通信教育?)が破壊的技術によって駆逐される
寸前の状況といったら言い過ぎでしょうか?

コガの個人的意見としては、MOOCがこのまま既存の教育ビジネスを駆逐する
とは思っていません。しかし近い将来、もっと凄い破壊的技術が教育の世界
で生まれ、それがMOOC等のeラーニングと連携をとりながら、大きな変革が
起きるのではないかと考えています。

そうしたらまた本メルマガは復活するかも知れません。
その時の復活の第一声は
「だから俺がいった通りになったろ!」
となるでしょう。もちろんドヤ顔で。

では、皆さん長い間購読ありがとうございました。
またいつか、どこかでお会いしましょう。
(文責:コガ)

「それにしても、ネットは広大だわ。もうすでに、私たちの知らない次の社会が、生まれ始めている」
(攻殻機動隊 S.A.C. Solid State Society より)

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