マツモトの研究生活。

研究生活を綴ります。
近況報告が多いです。
コメント頂くと狂喜乱舞します。

論文が出ました!

2017-03-24 00:04:55 | 研究。
【論文タイトルと著者】
表題:Developmental changes in feeding behaviors of infant chimpanzees at Mahale, Tanzania: implications for nutritional independence long before cessation of nipple contact
(タンザニア・マハレのチンパンジーの採食行動の発達変化:乳首接触の終了よりも早い栄養的自立の示唆)
著者:Takuya Matsumoto1, 2
(松本卓也1, 2)
所属:1 Research Institute for Humanity and Nature, 2 Graduate School of Science, Kyoto University
(1 総合地球環境学研究所、2 京都大学理学研究科)
(※1は現所属、2は論文執筆時の所属です)
掲載誌:American Journal of Physical Anthropology (DOI: 10.1002/ajpa.23212)


【まとめ】
予想より早かったチンパンジーの離乳
行動研究からわかったチンパンジーの栄養的自立の時期

【要約】
赤ちゃんが母乳を必要としなくなる時期はいつなのか。この問いは、子育て中の家庭にとってだけでなく、人類の進化の過程を考える上でも重要な問題です。ヒトに最も遺伝的に近いチンパンジーは、お乳をくわえるのをやめる時期や、母親が次の子を妊娠する時期を基準に、およそ4−5歳で離乳するとされていました。一方、近年の長期調査の成果では、3歳近くのチンパンジーの赤ちゃんは、母親が失踪し孤児になっても生き残る可能性があることがわかってきました。つまり、チンパンジーの赤ちゃんは、3歳近くで栄養的に母乳に頼らなくなり、自立している可能性があります。
そこで、総合地球環境学研究所の松本卓也(日本学術振興会特別研究員)は、タンザニアのマハレ山塊国立公園でフィールドワークを行い、野生チンパンジーの赤ちゃんの食生活を調べました。その結果、3歳以上の赤ちゃんは、より長い時間を食事にあてるようになることがわかりました。また、消化が難しい植物の葉をより長い時間食べるようになることや、堅い殻に覆われた実などの食べ難い食物を、自力で食べるようになることがわかりました。こうした食生活の大きな変化は、チンパンジーの赤ちゃんが母乳に頼らずに生きていくための基礎になっていると考えられます。本研究成果は、赤ちゃんの食生活の変化が人類の進化にどのような影響を与えたかについて考える上での、重要な足がかりになると考えられます。
本研究成果は、国際学術誌『American Journal of Physical Anthropology』誌(電子版)に2017年3月20日付けにて掲載されました。
URL: http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ajpa.23212/full


【背景】
人類の進化の過程を考える上で、ヒトとその他の霊長類の生活史(性成熟する年齢、初産の年齢、寿命など)を比較することは重要な方法です。生活史に関するこれまでの先行研究で明らかになった、ヒトに特徴的な生活史のパターンとして、「離乳時期の早期化」が挙げられます。nonindustrialなヒトの集団を網羅的に調査した研究によれば、赤ちゃんがおよそ2.5-3歳になった時期に、母親は授乳をやめるとされています。ヒトに遺伝的に最も近いチンパンジーの離乳時期は、お乳をくわえるのをやめる時期や、母親が次の子を妊娠する時期を基準に4−5歳とされてきました。
赤ちゃんが早く離乳すると、母親はより短い間隔で次の子を妊娠することができます。つまり、「離乳時期の早期化」は、ヒトが多産になったことと関連付けられます。ヒトの祖先は、森で暮らし続けた類人猿の祖先とは対照的に、捕食者による危険が大きい開けた環境で暮らしていたと考えられており、ヒトの「離乳時期の早期化」は、こうした環境への適応と関係していると考えられています。
一方、ヒトとチンパンジーでは、離乳時期を調べる方法が両者で異なっていることが問題点として挙げられます。ヒトは「母親からの聞き取り」のデータに基づいているのに対し、チンパンジーは「お乳をくわえなくなる時期」や「母親が次の子を妊娠する時期」など、主にフィールドでの観察から得られたデータに基づいてきました。こうしたデータでは、乳首をくわえているだけで実際にお乳を飲んでいない「甘え吸い」や、夜間に授乳している可能性を確かめることができず、赤ちゃんにとっての離乳時期、つまり「母乳への依存度を下げ、他の食物で栄養をまかなうことができる時期」を調べることができません。
近年の研究では、長期にわたるフィールド調査の結果から、孤児が生き残ることができる境界の年齢が3歳前後であることや、多くの霊長類で離乳時期との一致がみられる第一大臼歯の萌出年齢が、野生チンパンジーでは3歳前後であることなどが明らかになり、これまで野生チンパンジーの行動観察の結果から考えられてきた「4−5歳」より早期に離乳している可能性が示唆されています。


【研究手法・成果】
そこで私は、タンザニアのマハレ山塊国立公園(以下、マハレ)でフィールドワークを行い、野生チンパンジーの赤ちゃんの食生活の発達変化を調べました。マハレは、京都大学を中心とした研究チームが、50年近くにわたって野生チンパンジーの観察を続けているフィールドです。野生のチンパンジーはオスが比較的人に慣れやすいのに対し、メスは人に慣れにくいため、観察が難しいとされてきました。マハレは長期調査のおかげでチンパンジーが人によく慣れており、特に赤ちゃんの詳細な観察が可能であるという点で、世界でも有数のフィールドであると言えます(図1)。マハレでの2年近い観察の結果、チンパンジーの赤ちゃんは3歳前後において以下の傾向を示すことがわかりました(図2)。
 ・より長い時間を採食に費やす
 ・消化の難しい「葉」をより長い時間採食する
 ・他個体からの分配なしに、自力で「物理的に処理の難しい食べ物」を採食する割合が高くなる
 赤ちゃんは消化器官や身体機能が未発達なので、赤ちゃんならではの食べ難さがあると言えます。植物の葉は一般的にタンパク質含有量が高く、野生チンパンジーにとって重要な食物です。しかし、葉はタンニンなど2次代謝物を多く含むため、消化器官が未発達な赤ちゃんにとっては多く食べられないものであると言えます。本研究結果から、3歳前後のチンパンジーの赤ちゃんは、葉を長時間食べることができるようになる、ということがわかりました。また、赤ちゃんは咀嚼器官などが未発達のため、例えば堅い殻に覆われた果実など、自力で採食が困難な食物が存在します。本研究結果から、3歳前後の赤ちゃんは、そういった「物理的に処理の難しい食物」を、他個体からの食物分配を受けずに、自力で採食する時間割合が高くなる、ということがわかりました。これらの結果をまとめると、チンパンジーの赤ちゃんは3歳前後において、赤ちゃんならではの食べ難さが緩和し、大人と同様の食べ方ができるようになる、と言えます。つまり、本研究は、「野生チンパンジーの赤ちゃんが、これまで考えられていた離乳時期よりもかなり早い段階で、母乳への依存度を大きく下げている」という予想を、行動学的見地から初めて支持したものと言えます。


【考察】
本研究結果を踏まえて、霊長類学における先行研究を、「お乳をくわえなくなる時期は栄養的自立とは無関係である」という観点から調べ直し、考察しました。離乳時期について調べられている類人猿(チンンパンジー・ゴリラ・オランウータン)以外の霊長類では、「お乳をくわえなくなる時期」「赤ちゃんが栄養的に自立する時期」「母親が次の子を妊娠する時期」が概ね一致していました。しかし、類人猿においては、「お乳をくわえなくなる時期」と「母親が次の子を妊娠する時期」は一致するものの、「赤ちゃんが栄養的に自立する時期」がかなり前である可能性があります。本研究は、これまで「離乳」という言葉でひとくくりにされてきた、これらの時期のずれの存在を、行動から初めて示唆した研究といえます。
翻ってヒトの特徴を考えると、ヒトは「赤ちゃんが栄養的に自立する時期」よりも前に、「母親が次の子を妊娠する時期」がくることが可能です。この特徴は、類人猿と比較すると、より特殊なものであるということがわかります。このヒトの特徴的な離乳方法について重要な役割を果たしているのは、やわらかく調理され、なおかつ母親以外の誰かが赤ちゃんに与えることができる「離乳食」の存在かもしれません。本研究成果は、赤ちゃんの食生活の変化が人類の進化にどのような影響を与えたかについて考える上での、重要な足がかりになると考えられます。

ジェルインク革命

2009-12-03 22:14:42 | 研究。


我がデスク周りに、新たな仲間を雇いました。



向かって左側がuniの「JETSTREAM」0.5ミリ
向かって右側がPILOTの「Dr.Grip G-SPEC」0.5ミリ
です。

右側のシャープペンシルは、
屋久島の森で迷子になってしまった前妻の面影を追って
俺がLoftから連れて帰ってきたペンです。
前妻とは受験戦争をともに戦ってきた間柄なので、
やっぱり手になじみます。実になじむぞ!フハハハ(DIOっぽく)

左側のはジェルインクボールペンなのですが、
これは久々なかなかのヒットです!
数ヶ月前のヤクザル調査の時に泊っていた屋久島ステーションで、
研究員の人たちと「どんなペン使ってる?」という話になったことがありまして。
そこで関係者各位絶賛だったのがこの「JETSTREAM」だったのです。

Loftでこの「JETSTREAM」を探して歩いていたら、
なんと、文房具売り場の一角に「JETSTREAM」コーナーが設置されてました。
さすがはLoft!常に時代の一歩先を行っている!時々踏み外すけど!

油性ボールペンの書き出しの悪さをこよなく嫌っている俺は、
ジェルインクなんてどうせ油性とおんなじだろうと思っていたわけですが、
いざ「JETSTREAM」を使っていて驚いた。
水性ペンほどの安心感はないものの、こやつ、できておる!

ジェルインクボールペンを少しググってみると、
インク溶剤に水性顔料を使ったボールペンだそうで。
なるほど、油性と水性の中間的存在なのか。
ただしインクの消費量は猛烈とのこと。
まぁ、これは残量に気を付ければ大丈夫か。

この「JETSTREAM」は関係者各位によれば、
天井に書くような姿勢でもちゃんとインクが出る点がgoodらしいです。
もう黒い三連星もびっくりの書き筋ですよ。(え?)
というわけで、水性ペンに代わって
こいつをフィールド用ペンに採用することにしました。
もう雨の日も怖くない!


なんか、こういう装備品にこだわるのって、
やっぱりロールプレイングゲームの影響なのかなぁ(汗)

嵐山ライトアップ!

2009-11-29 23:59:59 | 研究。
紹介するのが遅れてしまって、
読者の方にも関係者の方にも申し訳ない気持ちでいっぱいですが、
俺が卒業研究のフィールドとして利用させてもらってる嵐山モンキーパークは
11月20日から30日まで、紅葉の夜間ライトアップをしています。
いや、限りなく「していました(過去形)」に近いのですが。

残すは明日、30日の(月)だけ。夜になるとサルは山へと帰ってしまいますが、
夕方4時ごろに来てゆっくり過ごせば、サルも紅葉も夜景も見られてお得です。
ぜひお越しを!



このライトアップの時期に合わせて、私マツモトが何を考えていたかと言いますと、
もみじに酔わせて女をオトすだとか、そんなオシャレなことではなくてですね
サルです。サルの夜間観察です!またサル…

昼間にくらべて、ニホンザルの夜間の研究は非常に少ないです。
・親しい集団で集まって寝る。
・基本的には樹上で寝るが、外敵がいない地域では地上で寝ることも。
・夜中でも喧嘩をしたりする。(目は見えるよう)
といったことがわかっていますが、
じゃあ親しい集団って親子?オスメス?同世代?といった疑問はつきませんし、
オスは夜中でも積極的に交尾しているんじゃないか?という話もあります。

以前から夜中のサルの動きには興味があったので、
これを機にちょっくらサルにくっついて森に入ってみようと。
やつらは餌をくれるから広場に留まっているだけで、ほとんど野生です。
寝るときは森の奥まで行ってしまうのです。



数ヶ月前、2度ほど山の中で一晩明かしたことがあるのです。
1回目は1人で岩田山に入ったんですが、頂上付近でひと休みしているときに
5m先のイノシシと目が合いまして。
数秒間見つめあった結果、向こうがこちらを「ヤバそうなやつ」と認識して逃げて行きました。

途中から雨が降ってきて、ジャージの下はグショグショ。懐中電燈の電池は切れ。
鳴き声を頼りにサルを追いつつ、京都の夜景を見ながら夜を過ごしました。
ちょー怖かったです。夜景が綺麗☆とか微塵も感じませんでした。
結局サルを観察できたのは、木の上を4つの影が通って行くのを見ただけでした。

2回目は研究室の先輩と行ったんですが、このときはサルの気配さえ感じず。
懐中電燈の光を嫌ったからなのか、明け方近くまで歩きまわったんですが、
全く観察できませんでした。鳴き声さえほとんど聞こえず。
先輩と二人でトボトボ帰りました。



このライトアップの時期なら!
一晩明かす必要もなく、寝ているサルを観察してその日じゅうに帰れる!
と意気込んで、夕方5時ごろ森に入っていくサルの群れを追いながら
これならイケる!と思っていたのですが、
あいつら、森の中だと人間を異常に避けるんです。
いつもなら俺にケンカを売ってくるような場面でも、
ささーっとどっか行っちゃう。完全に野生に戻ったみたいになるんです。

俺は群れの中心にいるーっと思っていた次の瞬間、
やつらは高順位の猿に追いかけられてるくらいの速さで頂上へ走って行きました。
俺も慌てて追いかけるんですが、それがまたやつらの焦りを誘って(?)
5分後には山の中で一人ぼっちに。
後ろでとろとろ歩いているやつもいたはずなのに、同じコースでは上がってこず。

結局、前回同様、頂上でサルを待ち伏せるかたちになりました。
一度5、6mまでサルが近寄ってきたんですが、
俺をみるなり一目散に逃げて行きました。
こんなこと昼間では考えられません。
昼間との距離感の差、みたいなものを感じました。
群れ本体とは出会えずじまい…。



何の成果も出せぬまま、
ライトアップを見にやってきたカップルさんたちとすれ違いつつ、
もう下山するカップルさんたちの列に紛れて、独りで帰りました。
ライトの陰に隠れて、泣いた。


食うべきか、食わざるべきか

2009-11-25 21:52:47 | 研究。
サルが食うものは俺も食う、というのをモットーにしています。

彼らがその食べ物をうまいと思っているのか、
まずいながら嫌々食ってるのかまではわかりませんが、
ヒトとサルを比較してあれこれ言おうとしている以上、
俺(ヒト)が食わんことには始まらんと思っているのです。
何が始まるんだ

味覚は毒性の物質を感知する以外に、
栄養価の高いものを積極的に食べるためにあるとも言われています。
おいしく感じるモノの方がたくさん食べたくなるじゃないですか。

嵐山のニホンザルのうち、
低順位のサルはそれこそピーナッツの殻の部分まで食べたりするんですが、
高順位のサルは好き嫌いが激しかったりします。
大豆を投げても無視、でも林檎なら反応する、みたいな。

さらに、食べ方も違ってたりします。
バナナをぽんと1本与えてやると、
人間みたいに皮を剥いて中身を食べて、
その後持ってた皮を食べたりします。
じゃあ一緒に食べろよ!と傍から見てて思うのですが、
彼らなりに何か思うところがあるのでしょう。
おいしさを追及しているはずだとニラんでいるのですが、真相はわかりません。



ニホンザルが食べてたものを真似して食べて、失敗したことは実はあんまりありません。
強烈に青臭いものとか、ばかみたいに苦いものはあったんですが、
まぁ、サルなら食うか…くらいの感じでした。

でもサルのまねをせずある植物を食べて、ひどいめにあったことがあります。
屋久島の西部林道で調査をしているときに、
道の脇にとうもろこしみたいな植物がなってたんですよ。

今思えば、道の脇に堂々と生えてた時点で危ないもんだと考えるべきでした。
何かの実っぽいし、サルも食うだろうと思って
とうもろこしみたいにバリバリ食って次の瞬間
舌が壊死したと思った。

死ぬほど後悔しましたよ。
舌の先から痺れて感覚がなくなっていくあの感じは、二度と味わいたくないです。
車のミラーで確認したらちょっと白っぽくなっているようにも見えるし、
しゃべるだけで痛いし、飯はマズく感じるし、
俺の人生はこれから灰色だ…と本気で思いました。

屋久島ステーションに帰ってその植物の名前を調べてみたら、
納得の「マムシソウ」。
調査隊の隊長曰く、シュウ酸カルシウムという分子の針が
舌の細胞に突き刺さるらしいです。なんという物理的攻撃!(泣)

弱酸の遊離でなんとかならんかとコーラを飲んだり、
なるべく舌を使わずに生活してたら3日くらいで治りました。危なかった…。



サルの食うものは俺も食うと思って、
動物園に生えてた草をもさもさ食ったり
土食ったり焼却炉をなめたりしてきたんですが、

…あいつら精子も食うんですよ。
交尾が終わった後、オスの精子がオス自身の股あたりにつくことがあるんですが、
毛づくろいついでに食っているのを目撃してしまったのです。
さすがに、即決で食う勇気はありませんでした。

噂によると、うちの研究室の教授は
ゴリラの精子を(みそ汁に入れて)食ったらしいです。
やはり、教授になる人は格が違う…ゴクリ

卒業研究の調査期間のうちに、精子を食うのが俺の今の目標です。
ヒトとして大事なものを置き去りにすれば、
もっとサルのこと、わかると思うんだ…。(死亡フラグ)

生ダラ

2009-11-22 23:14:49 | 研究。
生でダラダラいかせて!!と時々思ってしまいます。


一応、俺が今やっていることは卒業「研究」、ですので、
ニホンザルの行動を観察しながら、「データ」を取っておるわけですが、
これは言ってしまえばアナログな猿の行動をデジタルに変換する作業です。

例えば、どの猿とどの猿が親密な関係か?を調べるとします。
じゃあ実際に何をするかというと、まず
「ある個体の5m以内にいる個体を『一緒にいる』ってことにする」
みたいにある「定義」を与えて、
あとは定義にしたがって猿の行動をひょいひょい分類していくわけです。
あいつとあいつは8m離れているからノートには書かない、
あ、今5m以内に入ったから記録しよう、今何時何分何秒かな?といった具合です。

そりゃあ、すべてを観察してすべてを記述することができればいいのですが、
俺が記録をしている間に猿はどんどん新しい行動を始めるわけですから、
どうしたって取り出せる情報には限界があるのです。



この定義のしかたを工夫するところに、ひとつ研究者の腕が問われるわけです。
もしニホンザルが
「5mくらいなら仲悪い個体でも近づけるけど、3mは無理…」
と思っているのだとしたら、先ほどの5mという定義はあんまり意味がないわけです。
親密さ関係なしに5mまで近づけちゃうわけですから。

逆に言うと、定義が的外れだとまるで研究の意味がなくなっちゃうわけなんですよ。
…ゴクリ。(自分で言ってて冷や汗かく)



で、本題。(前置き長っ)
何か測定の基準を作らなくちゃいけない、という点はまぁいいんです。
「きっとこれが本質だし!」と思えるような基準にすればいいんですから。
このへんの自由さが魅力だったりしますし。

でもね、ニホンザルの行動は、っていうか、たぶんどの動物でもたいていそうなんでしょうけど、
予測不能な・定義とは別次元の・わけわかんない
三拍子そろった行動のオンパレードなんですよ。
しかもそれが、なんとか形に残したい行動だったりするんです。

今俺はオスとメスの関係性を見ているんですが、こんな例がありました。

おそらくオスが相手をしてくれないからでしょう、
メスがオスに向かってギャーギャー鳴き出したんです。(いわゆるエストラスコール)
ニホンザルでは、交尾の相手を選ぶ主導権がメスにある、とまで言われてるのに、
よくこういった状況を目にします。

ここまでだったらまだよくある行動なんですが、
オスが次の瞬間寝転がって毛づくろいの催促をしたんですよ。
メスはどう反応するんだろう、と思ってみていたら、
そのメスはオスの方に近づいていってちゃんと毛づくろいを始めたんです。
でもその毛づくろいというのが、
ポン!ポン!と音が聞こえるくらい、
叩き付けるような手つきで毛づくろいを始めたんですよ。
興奮して、いかにも不満げな感じで。

もう、ノートで口を押さえて爆笑ですよ。
こんなもん、どういう定義でデータを取ったらいいのかわかりません。
「エストラスコール後、オスのグルーミングの誘いに応じる」
以上のことが言えないんです。
「いかにも不満げな様子でグルーミング」なんて、
俺の主観が入りまくってしまいますから。


あと、右の前足を怪我して、
明らかにテンションが低いサルとかね。
ニホンザルは闘争を避けるために
あらかじめ明確な順位を決めておく、という社会を作ったんです。
なので、怪我を負うような喧嘩というのは滅多に起こらないんですよ。

ときどき傷をなめつつ、一人でぼーっとしてる様子は
いかにもテンション低そうでした。アテレコするなら
「噛みつくとか…ひくわぁ……」みたいなww

そこへモモという名前の、
俺が群れの中で唯一心を許すサルがやってきたんです。
ニホンザルに心を許すなよ
モモは傷を負ったサルに30㎝まで近づき、
少し立ち止まった後、また歩き去っていきました。
モモは順位が低く体も小さいながら、
今年生まれた子供を頑張って育てているお母さん。
俺を見つけると0歳の我が子を両手で抱えて必死に逃げるような
そんな慈愛に満ちた彼女のことですから、
何か慰めに似たコミュニケーションがあったのかもしれません。
しかしこれも「ra79-90にmo04が近接」以上には、
なかなかデータとしての価値を取り出すことは難しいと思います。
…まぁ、このへんまでいくと妄想だとは思いますが。



こういった規格外の行動を見ると、
ああ、生でダラダラいかせてくれよ…と思ってしまいます。
でも残念ながら、それでは科学になりません。
「話のネタ」以上の価値を見出せるような、何かいいアイデアがないものか…。
まぁ、これからぼちぼち考えていこうと思います。

そんなことより、やることはやらなきゃ(汗)
ここんとこ毎日言ってる気がしますが、卒業研究間に合わん!!(滝汗・涙目)

オスのこと

2009-11-21 02:41:41 | 研究。
卒業研究の話。
現在、オスとメスの友達関係(交尾期に限らず、近接時間が多い関係)における
オスの積極性を評価してやろうと、
リーダーオスから周辺にいるオスにいたるまでを鋭意ストーキング中です。

これまでメス視点の話はたくさんされてきました。
メスは、仲のいいオスの近くにいれば、喧嘩の時に守ってもらえるので
えさ場で優位に振る舞うことができます。
だから、オスとの友達関係を積極的につくったり維持したりする、というのは納得できます。
それでいてメスは、リーダーオスに交尾をしようと迫られても、
拒否する場合があります。
しかも交尾期以外の時期に仲良くしていたオスとメスは、
交尾しなくなるという研究結果が出ているのです。
(特にメスは若くて目新しいオスを好きになる傾向があると言われています。)

じゃあ、オスはなんでメスと友達になるのか、と。
せっかく仲良くなったメスとは必ずしも交尾できるとは限らない。
基本的にオスはメスより順位が高いように振る舞えるので、
別にえさ場でひとりでも構わない。

じゃあ何のためにオスはメスと友達(のような関係)でいるのか。
そもそもオスはメスと積極的に友達になろうとしているのか。
ここんとこを、観察を通して調べてみたいなと思っているわけです。

実際には、オスを個体追跡して、
メスにグルーミングをねだる、近づく、プレゼンティング(交尾の誘い)をする、
といった事例を集めています。



でも、なかなかうまくいかんもんで…。
リーダーは1匹のメスにゾッコンだし(近くで起きた喧嘩を無視するし…)、
2位のオスは時々ひとりで森に入っていくし(しかも木ゆすりはじめるし…)、
うまいこと理解できない行動ばかりします。まだまだデータが足りません。
何考えてんだこいつら?

そもそも「友達関係」というのは交尾期以外でもよくいっしょにいる、という意味ですから
今の交尾期だけでキッチリした話をすることはできないんですよ。
それでも、院での研究活動に繋がるような卒業研究になれば!と思ってやってます。
…でもちょっぴり泣きそうです(ぇ)

言いわけを聞いてカロリーヌ

2009-11-12 23:34:00 | 研究。
俺の卒業論文のテーマは
取り巻きのメスたちをオスが積極的に選択しているか(もしくはその至近的要因)です。
今はひたすらオスを追っかけまわして、どんな喧嘩に介入したか、誰のグルーミングを受けているか、
といったデータをとっています。

でもこの積極的ってのが難しくて!

喧嘩でどっちの味方するかとか、グルーミングの拒否とかならわかるんですが、
オスとメスの近接(単純に近くにいること)時間だけは、どっちが積極的かわからんのですよ。

今日はそんな俺にぴったりの親しさの尺度、
『Hinde's index(ハインドの式)』というものが存在するという噂を聞きつけまして、
附属図書館の地下深く眠っていた本の中から、
古い論文を見つけ出してそれを読んでました。
こう書くとなんかRPGみたい(笑)
魔術図書館にもぐって古文書を発見したみたいな。

でも現実はRPGほど甘くないんですよね。内容がまるでわからない(涙)

や、言いたいことはわかるんですよ!
近接する前と後、つまりどっちが接近したか離れたかをデータとしてとって、
数だけくらべたら問題がある、
割合だけをくらべても都合が悪い、
だから割合の差を調べよう!ってことなんですけど…
理解のほどがこれ以上でもこれ以下でもない。汗

とるデータに変わりはなかったので、
データを調理する時にもういちど読みなおそうと思います。
今日はこれだけで終わっちゃった…。もっと他にもやることあったのに…。


それもこれも、子ザルが俺の水性ペンのふたを取ったからだと思います!(最低の言いわけ)(そしてこの流れは3度目)

ある日俺が屋根の上のオスを観察していたらところ、
フィールドノートの死角からいたずら小僧の子ザルが近づいてきて、
ペンのふただけとってそのまま咥えて走り去って行ったんです。
気付いた時には遅かった。

俺の文房具への歪んだ愛を知っての狼藉か!と思って、
追いかけたのですが埒が明かず…。
そこで、木の陰でやつが休み始めたところを、後ろからおもいきりおどかしたら
振り返らずに逃げて行きましたw(ひどいとか言うな!)

見事取り返したのですが、哀れペンのふたは歯型だらけに…。

きっと次にこの論文と相対する時は新しいペンになってるはずです。次こそが決勝戦だし!
たぶん新しいペンになって、全然違う感じだし!とか言ってると思います(笑)


明日は教育実習の事後指導があるそうです。昨日友達から聞いて初めて知りました(汗)
久しぶりの授業だ!

社会人

2009-11-05 23:37:16 | 研究。
嵐山へ自転車こいで向っていたら、
前をある老夫婦が並んで歩いていました。
それがまた絶妙な広がり方で、自転車の通る幅がどこにもなかったんですよ。
急いでいたらツンデレだなぁと思うイライラするかもしれませんが、
さして急ぐこともないので、しょうがないか、と後ろをゆっくり進んでました。
そのときふと思ったんですよ、
この公道だって税金で整備されてんだよなぁ、と。
道路特定財源だとか、詳しい話はよく知らないんですが、
簡単に言ったらじいちゃんばあちゃんが頑張ったから今の日本になったんすよね。
公道といっても重みが違うなぁと。
これはむしろ、じいちゃんばあちゃんの道だよ!と思いました。
片や俺は税金使って勉強させてもらえる状況にあって、
あまつさえ税金から給料もらって食っていきたいと願っている。
まぁ、なんつか、自分の世間知らずさをさらす感じになりましたが、とにかく
頑張らんとなぁと、思いました。なめてちゃいかんなと。
我ながら幼稚な感想…。

さて、今日は群れ外オスを追っていたんですが、心境の変化が幸いしてか、
山の中で置いてけぼりにされずにすみました。
正確には置いてけぼりにされたけど懸命に見つけ出しました(汗)
やっとまぁ、三流くらいにはなれたかもしれません!芸能人格付けチェックみたいだネ!
あいつら森の奥で何してるのかと思っていたら、ムクノミ食ってたんですよ。
骨折覚悟で崖をくだった甲斐がありました。

この前なんか坂で一回転して落ちましたからね。前転してる猿を笑えない身分ですよ。
あのときは落ち葉がたくさんある坂だったので、かすり傷ですんだんですが、
今回のはシャレにならん感じでした。「ヘタこいたーじゃ済まん(ゴクリ)」みたいな。
や、でも、でっかい木にのぼって採食してる猿たちを見ていたら、
なんか屋久島を思い出して懐かしくなりました。
なんだかんだ言って、やっぱりこいつらも野生なんですね。


…ちょっと待てよと。後でノートを見返して思ったんですが、
あんだけひどい思いして、「やばいて!やばいて!」言いながら崖をくだってのぼって、
たった20分ぶんの働き!?(一頭最低10時間は必要)
時給換算にしたらいくらサラリーが出るんだろう、そんなことを少し考えてしまいました…。
ま、怪我だけはないようにがんばります。
もし追跡中に大けがしたら、後で絶対、
そいつが水飲んでるところを思い切り池に蹴落としてやる!(逆恨み…)

まずは現象から。

2009-10-30 16:16:26 | 研究。
中間報告も終わって、久々に嵐山モンキーパークへ行きました。
こんだけウジウジ考えたんだから何か掴めるだろうと思ったんですが、
やはり相変わらず猿はわけわからんです。

第4位のオス(ハチゴー)の個体追跡をしていて、
そいつが高台の原っぱで一休みし始めたんですよ。
そしたら原っぱの向こう側からカエルちゃんと呼ばれるメスがこっち寄ってきたんです。
発情もしているし、ああハチゴーをfollowするんかなぁと思ったら、
いきなりバッと後ろを振り返ったんです。
違うオスでもいるんかと思ったんですが、俺の見る限り誰もおらず…。
カエルちゃんはまた少しこちらへ寄って来て、
またいきなりバッと後ろを振り返ったんです。でまたちょっとこっちへ寄る。
いかにも「追われているの!助けて!」と言わんばかりに。…町娘か!
結局その日のほとんどの時間、カエルちゃんはハチゴーの後ろをついて回ってました。

ハチゴーがグルーミングの誘いをかけると寄っていって毛づくろいをしてやるんですが、
あんまりハチゴーが素っ気なさすぎると「ギャッギャッ」と癇癪起こしたみたいに鳴き始めます。
(エストラスコールと呼ばれるものです)
一般的にニホンザルの交尾の相手選択はメス主体と言われてるんですが、
オスの側にも何か事情があるみたいですね。その日は結局交尾しなかったし。
………何が何だかわからない…(Lっぽく)<参考>


まぁそんなすぐわかるようになったら逆に怖いですよね。
一歩一歩階段を上ってると思うことにします!
できれば2段飛ばしくらいで駆け上がりたいなぁ(涙)

最近心理の話やホルモンの話を聞く機会が多くて、
それがまた奥が深くておもしろくて、
じゃあ俺のやってる社会生態って何なんだろう…と少し悩んでたんですが、
教授の山極さんから「まずは現象からだよマツモトくん。」と言われてはっとしました。
やっぱり俺はどうも妄想が激しすぎる頭でっかちなとこがあるようです。
まずは現象から、なんすよね。

でも、「追加の話はdiscussionですればいいから」とも言われて、
妄想しちゃいけないってわけじゃないんだぁと思ってちょっとホッとしました。
早く現象を捉えたいなと思いました。

まぁ、その現象を捉えられる気がまるでしないんすけどね(泣)
卒研提出まであと3か月くらいかぁ…。

阿漕(違

2009-10-27 00:00:00 | 研究。
研究室の学部生用デスクへ行ったら、
近くのソファーの上にアコースティックギターが置いてありました。
おお、触ってみてー!と思ったんですが、誰のか分からないので、
とりあえず弾いてみました(ぇ)
なんていうか、アコギって、持ったら意外と軽いですね!(素人の感想)
こういうときパッと何か1曲弾けたら気持ちいいだろうなぁと思いました…。
誰かの勝手に弾いちゃだめすけどね汗

違う日に知ったんですが、そのアコギはお隣のデスクの研究員さんのみたいです。
話の途中で「良かったらいつでも遊んでいいですよ」
と言ってもらいました。やた!これからはアコギも弾ける!
(「もうすでに遊んじゃいました、テヘ☆」とは言い出せず…。ごめんなさい。)



今日は第5回卒業研究中間報告がありました。
前日に大阪大学の友達といろいろ話をして(というか愚痴を聞いてもらって汗)、
その後徹夜して頭グルグルのままプリントを作って発表しました。
てか、報告会の前日は毎回徹夜に近い状態な気がします。
このギリギリにならんと動けない性分はなんとかならんでしょうか…。

もう無理!これ以上は待てない!と無意識に思ってるところまでリミットが迫った時、
それまでにちゃんと準備して考えてないと「まとめ」に入れないんですが、
もししっかりできていれば、自分の中で「イケる!」と思える瞬間が訪れる、
それがたまらなく気持ちいいんです。
リミット前に「まとめ」をやろうとすると、
頭ん中でまだパーツが揃ってないんじゃないか、熟成期間が足りないんじゃないか、
という思いに囚われてしまうんです。

以上、ギリギリマイペース野郎の言い訳でした。
や、わかってるんすよ!優柔不断じゃだめだって!
まず動いて作って、そっから叩き上げた方がいいものできる場合もあるって知ってます!
むしろこれからはそんな場合の方が多くなる気がしています。

でもなかなか変われないんだよな…。
まったく、阿漕な人間です。(意味違