笑顔

　笑顔に接するのは快いことだ。とりわけ幼い子どもの邪気のない天真爛漫な笑顔を見ると心がとろけるような思いがする。このところ西安の謝俊麗や李真、上海の孫璇が子どもの写真を送ってくれるので楽しい。

ナオナオ（マイトウ）：謝俊麗
　　

チェンチェン：李真
　　　

チョンチョン：孫璇


　幼子の表情はたとえ笑っていなくても、その純な心が表れているようでとても好い。街でベビーカーに乗せられた幼児を見かけ、思わず微笑みかけることがよくあるが、何だろうというようにつぶらな目で見返すその表情が、何とも言えないくらい可愛いし、時には笑い返してくる子もいて、そんなときには「可愛いねえ」と声をかけてしまう。

　　　

　幼子だけではない。年老いた農民の長年の労苦を刻みつけたような顔を撮った写真集を見たことがあるが、老爺、老婆ともにその表情はとても好いものだった。とりわけ屈託のない笑顔は、人間というものは社会的地位や身分、職業に関係なく、年をとるとその人柄が、その顔、とりわけ笑顔に表れてくるものだと思う。

　笑いというものはすべてが快いものではなく、卑しい笑いや酷薄な笑いもあるし、傍若無人な笑い、皮肉な笑い、冷笑、作り笑いもある。人間の笑いは複雑だが、その人間の心の状態を映し出していることは共通している。

　笑いを作るのは顔の表情筋だが、人間の表情筋はかなり複雑で30種類以上の筋肉があり、この顔の筋肉は身体の筋肉が骨と骨とをつないでいるのとは違って、骨と皮膚につながっているので細かい表情を作り出す。この顔の筋肉は通常の生活では30％しか使っていないそうで、年をとるにつれ衰え、顔にハリがなくなって表情が乏しくなる。

　　　　　　　　　　　

　人間以外の動物ではサルが笑うと言われているが、チンパンジーのものを見ても歯をむき出して、怒っているのか分からない。少なくとも微笑むということはないようだ。微笑は微妙な心的状態を表情筋が複雑に動いて表出するもので、これは人間独特のものだろう。サルの笑いと言われるものを見ると、人間ともっとも違うのは目が笑っていないことだ。「目は口ほどに物を言い」と言うが、眼が優しい人はそれだけで他の者の心を和ませ安心させる。人によっては口元には笑いを浮かべ、優しい口調で話していても、目が笑っていない場合がある。私が知っているある女性は恋人の母親に引き合わされたことがあるが、「可愛い方ね」と優しい声で言ったその母親の目はまったく笑っていなかったそうだ。

　最近はとかく、ほのぼのとした気持ちになって笑うことが少なくなったように思えるが、半面テレビでは騒がしいほどの笑いが溢れている。わざとらしく大口を開いて叫ぶような笑いは好きではない。もっと洗練された笑いに出会いたいと思う。