中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

女性差別漢字?

2010-01-28 10:33:51 | 中国のこと
 女偏の漢字は手元にある中国語辞典を見るとざっと130字余りある。大きな漢和辞典などではもっと多いだろう。女偏だから女性に関したものはもちろん多いが、中には『委』『要』『妥』『始』などは私の貧弱な知識では、なぜ女偏なのか分からない。

 このほど中国のある弁護士が16の女偏の漢字、たとえば『妖』『嫌』『奴』などは女性差別の意味があるので改めて、行人偏にするべきだと政府に求めたと言う。この弁護士はフェミニストとして知られている人物らしく、メディアの取材に対して「私たちが今日使っている漢字には、男性優位の封建社会の名残りがあり、マイナスイメージを持つ女偏の漢字が多く、女性の社会的評価を下げている」と言い、1例として『嫉妬』を挙げて「男女共通の感情なのに、女偏をつけるのは女性に対し不公平だ」と指摘したそうだ。「娯楽」の『娯』も、女性が男性を楽しませるという意味が込められており、学校で子どもに教えると、男尊女卑の意識を助長する恐れがあるとも言ったそうだ。

 そう言われてみるとそのようにも思えるが、この提案が国家言語文字委員会に対してインタネット上で提案されると、さすがは漢字の国、大きな話題になって賛否両論が寄せられたようだが、反対意見が圧倒的に多いという。例えば、「『好』『妙』『嬌』などプラスイメージの女偏の漢字も多く、それなりにバランスがとれており、変える必要はない」とか、「男という字は『田』に『力』と書く。男性だけが田んぼで力仕事をしなければならないということになり、漢字は別に男性優位にはなっていない」とか言う意見が殺到しているそうでなかなか面白く、もっと知りたいと思い、亡くなった漢文学者で古代漢字学者の白川静先生ならどう言われるだろうかとも考えた。

 北京師範大学の女性教授で漢字学者の王寧氏は「漢字は伝統文化が積み重ねられる中で形成されており、それ自身は差別の意味はなく符号に過ぎない。このように言葉狩りをするなら、現代社会に合わない古代の人々の意識や社会制度を反映する漢字を全部変えなければならないので、きりがない」とコメントしたそうだがもっともだと思った。日本でもかつて差別問題が議論される中で、古くから使われてきた言葉が「差別語」と指摘され、マスコミなどでは過剰なほどの自己規制も行われ、一部では「言葉狩り」という批判もあった。私もかつて教育委員会にいた頃、ある女性市会議員と話をしている時に「それは片手落ちですね」と言ったら「それは差別語よ」と言われたことがあった。「片手が落ちている」すなわち身体障害者に対する差別語ということらしかったが、それでは「手落ち」もいけないのかと、いまだに釈然としていない。

 それはともかくとして、弁護士の提案に従って、試みに『妖』『嫌』『奴』『嫉妬』などの女偏を行人偏に置き換えて書いてみたが、見慣れないせいもあって字形の座りも悪く、どうにも違和感が強かった。長い歴史の中での文化的産物をあまり弄り回すのはどうかと、私も反対論に傾いた。


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