年をとったし独居生活だから、日常生活には注意しなければならないことも多くなっている。私は喫煙はしないから、たばこを火が付いたまま置き忘れることはないから、失火の心配はないが、それでもガスをつけたまま忘れて出ないように注意はする。酒も飲まないから、酔って間違いを起こす心配もない。
家の中で毎日注意しているのは階段の昇り降りで、手すりを付けていないので、とくに上がる時には姿勢を真っ直ぐにすると後ろによろめいて転落することも無きにしも非ずだから、みっともないようだが、体を前にかがめて、上に行くほど階段に手をついたりする。降りるときは、側壁を手で支える。何か手に持って降りるときには特に注意する。
寒くなってきて一番気を付けるのは入浴の時だ。どこの家でそうだろうが、私の家の浴室は北側にあって、冬にはことのほか浴室内は冷え込む。暖かい居間を出て、衣服を脱いで浴室に入るのはよくない。それで下着のシャツは脱がないで、下半身に掛け湯をし、湯船の縁に腰を下ろし、脚を湯につけてしばらくそのままでいる。体が温まってきたらシャツを脱ぎ体をゆっくり沈める。私は湯が熱いのも長湯も苦手だ。出る時には浴室内でできるだけ手早く体を拭き、浴室から出ると衣服を着る。誰でもやっていることだろうが、独り住まいだから浴室内で倒れでもしたら、後が大変だ。
「ヒートショックに注意を」と、この冬、警察や医師が耳慣れない言葉でお年寄りに注意を呼びかけているという記事を読んだ。「熱の衝撃」を意味する現象が引き金となって命を落とす老人が後を絶たないためだそうだ。暖房が効いた居間から、冷えた脱衣場で服を脱ぐと、血管が収縮して血圧が上がる。そのまま熱い湯につかると今度は血管が広がり、血圧が下がる。こうした体に強い負担がかかる温度変化が「ヒートショック」と言われる。暖房が効いた居間と冷えた脱衣場の温度差は10度以上ある場合もあるということで、急激な血圧の上下で意識がもうろうとしたり、意識を失って浴槽で溺れてしまう老人がいるのだそうだ。
厚生労働省によると、昨年1年間で浴槽で水死した人は全国で4433人。このうち約9割は65歳以上の高齢者だった。馬鹿にならない数字だ。安全な入浴法は、湯は38~41度のぬるめに設定し、かけ湯や半身浴で体への負担を軽減させる。半身浴も長湯では脱水症状になることもあり、入浴前の水分補給も大切という。食事直後の入浴や入浴前の飲酒は避ける。私のかっての同僚はひどい酒飲みだったが、独りでいる時に湯船につかったまま死んだ。おそらく入浴前に酒を飲み、浴槽の中で眠ってしまい、その内に湯が熱くなって心臓麻痺か何かで死んだのだろう。死後も湯は沸き続け、見つかった時には悲惨な状態だったそうだ。
このような記事を読むと、私がしている入浴上の注意はまあまあ間違いがないようだが、これから寒さが厳しくなる。いっそう注意しよう。それにしても独居生活というものは侘しいものだ。