競馬場で、いつも同じような場所で、見たお馬さんはほぼ全て最低1カットは撮ることにしている理由。
未勝利でも重賞でも、担当さんと一緒に競馬場に来て、
他の馬たちと走った「競走馬」として生きた証を残しておこうと思うからです。
かつてセリで出会ったあるお馬さんがいました。
落札されて、ちょっと面白い名前をつけられて、無事にデビュー。
ディープインパクトの引退の日。
その後、2戦目で初勝利。
嬉しかったですねぇ…。お顔の特徴って、当歳の頃と変わらないんだなぁ…としみじみ。
（このお馬さんのお顔をきっかけに、セリでは馬体よりもお顔を中心に撮るようになりました）
コツコツ頑張って26戦目、ようやく福島で2勝目をあげて
「ここを使った後、放牧」
というレースで競走中止、予後不良になりました。
私が初めてダービーの中継を担当した日。
馬名が決まった瞬間から
「いつか作ろう」
と思っていた、その馬の横断幕をようやく、初めて出した日でした。
放送席で、馬運車に乗り込むそのお馬さんを見送ってから、
人目をはばからず涙が止まりませんでした。
オンエアで鼻声にならないように喋ったつもりでしたが…どうだったかなぁ…。
もっとたくさん応援に行けばよかった、たくさん画像を撮っておけばよかった。
幕を出せればよかった。
後悔しかありませんでした。放牧明け、またレースを見られる、応援できると思っていました。
ジョイザラス。
担当さんのお話では、名前を呼ぶと「ぶひひーん」とお返事をするお馬さんだったそうです。
そんな話も後から知りました。
思い起こせば、私はアズマイーストの子供の実況ができるようになりたいと思って、
ラジオNIKKEIのアナウンサー養成講座に通い始めました。
大好きでずっと応援していたその馬も、久しぶりの勝利をあげたあとのレースで、
ゴール後に予後不良となりました。
その後も競馬を見続けて、いろんな出会いがあって、
縁あってMBSラジオの関東G1のアシスタントをさせていただくことになって。
レースを見る場所が少し変わっても、
パドックに行って、お馬さんを観て、撮れる画像は撮る。ここは変わっていません。
競走馬を応援していると、時々辛いことがあります。
でも、お馬さんだけではないのです。
今日会ったなかよしの友達と、明日も必ず会える保証などどこにもない。
私は、仮に今一緒にいる大好きな人とでも、
明日も明後日も、来年もその先も、ずっと一緒にいられるなんてコトは無いと思って生きています。
だから、なるべくその時は大事にしたいし、伝えたいことは伝えたほうがいいと思います、難しいけど。
ありがとうも、ごめんなさいも、ちゃんと言わないと伝わらない。
人なら言葉があるじゃないですか。
ちょっと話はずれましたが…
あるお馬さんの関係者の方に「うちの馬の画像、撮っていてくれたんですね」と言っていただけたことがありました。
どの馬にも、生産者さん、オーナーさん、調教師、担当さんの思いがあります。
ささやかですが、下手くそですが、競馬場に私が行ける間は、
未勝利でもG1でも、できるだけたくさんのお馬さんの姿をデータに残していこうと思います。
今日、あらためてこんなことを考えたのは、このお馬さんのことがあったから。
競馬場で障害に挑むメイクアップさんの姿を見たかった。
無理しても行くべきだったのかな…でも…結論は出ません。
R.I.P.
ジョイザラスのことを書くのに、9年かかりました。ようやく、ここに残しておけます。
もう一つ、死ぬ前に書かなきゃいけないことがあります。
その時が来たら、必ず。
