六月の風景
01 雨や霧汗や涙になり変えて私を満たす水の領分
02 嵩たかく川をまるごとひた奔る龍の五月雨水の軍団
03 不可思議な水というもの不可思議な私に満ちて受容器あふれ
04 まんまるき月思わせてビョウヤナギの滴は顔を写して落ちる
05 玉の面の鏡は写すうつし身の流れる時のその一瞬を
06 雨滴をば浴びてアジサイ群れ咲けり瑞々しきも水無し月は
07 曇り空六十三度目の夏至きたる父四回忌時飛びゆけり
08 在りし日の父の身体を包む服今は我が身に夏空の下
09 梅雨時のあやかし色の夕空をたたずみ見おりみやげにせむと
10 夏秋を分かつ夏越しの茅の輪あり穢れや罪過預けてくぐる