衣通姫
01 いつよりか朝な朝なのまどろみに衣通姫を焦れつつ待つ
02 何事か求むる心脱ぎ捨てて海に戻すや海人族の裔
03 廃校となりし学び舎訪ね行く象嵌久しき子が立ちもどる
04 一人逝きまた一人逝く故郷に遊ぶ子ら無く過疎の風吹く
05 積さん文や福さんみななべて喉のたるみに齢にじんで
06 還暦を過ぎてなおかつ乞い願う飢えたる我に荒き風吹け
07 眼の底の深みに巣食う鬼共と獣なる身で斬り結びおり
08 五指をもて鷲掴みする頭蓋の焼き上げられた白き幻影
09 脇侍なる普賢と文殊現れぬ独り立ち往く我がことに非ず
10 永劫を姫は来たらず冬至来てイルミの道をうつむき進む