
朝日新聞で航空写真を見た。
学生時代の北海道旅行を思い出した。
女子3人の旅である。
幻想的なトドワラにはぜひ行きたいと計画した。
明け方尾岱沼から木の葉のように小さな船でトドワラへ。
時間制限があり、写真を撮ったら引き返すという。
我々は20㎞程度なら歩けるだろうと野付半島踏破に挑んだ。
船が離れていくのを見送ったときに少しばかりの寂寥感に襲われたが
感傷に浸ってはいられない。
どんどん歩かねば夕方までに宿に着けなくなる。
若いというのは無謀なものである。
親に告げたら震え上がるような行動なのに
どの写真も笑っている。
両側に迫る海に挟まれるだけの何もない未舗装の道をひたすら歩いた。
ガラスの浮き球を譲ってほしいと番屋に立ち寄ったとき
若者が「すぐに戻るから絶対待ってて」と言って漁に出かけた。
待っていようとしたけれど
予定があるので再び歩かねばならなかった。
漁から戻って私たちがいないのを知ったらがっかりしただろう。
漁師の若者さん、ゴメンナサイ!
これまで申し訳ないと思い続けてきたので許してね!
浮き球は、お断りしていちばん小さいのをいただいた。
親切にしてくださったおじいさん、アリガトウゴザイマス!
やがて半島の付け根に至って気がつくと、
トドワラからついてきたワンコがいなくなっていた。
もしかして私たちをガードしてくれた神様だったのかなと、
今もって不思議な気がする。
風はあったが晴天で、オホーツクの海はどこまでも青かった。
トドワラはいま水没の危機にあるそうだ。
それに番屋以外何もなかった半島には半世紀の間にどんどん開発整備されて
施設や遊歩道が設けられているようだ。
おそらく3人でいてもわびしくなるようなあの手つかずの環境はもう味わえないのだろう。
野付半島を1日かけて30キロ歩いた…とこれまで豪語してきたが
正確?には26キロだった。
それにしてもこれがあったからこそ
北海道旅行が最大級の思い出になったことはいうまでもない。