2019年のブログです
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村上春樹さんの『遠い太鼓』(1993・講談社文庫)を再読しました。
村上さんの1986年から1989年にかけてのギリシャとイタリア滞在記です(村上さんはこの間に『ノルウェイの森』と『ダンス・ダンス・ダンス』を書いています)。
この本はかなり前から再読をしたかったのですが、やはり本棚の脇の文庫本の山の中に埋もれていて、背表紙は見えているのになかなか出せず、今回ようやくなんとか引っ張り出して読めました。
面白かったです。
30歳後半の若い村上さんと奥さんの姿を見ることができて、とても楽しいです。
先日、ご紹介をした村上さんのアメリカ・プリンストンの滞在記である『やがて哀しき外国語』の少し前の外国滞在記になりますが、村上さんの行動や考え方がやはりかなり若い感じがして、これはこれで好ましいです。
ギリシャやイタリアでのできごともとてもおもしろいのですが、じーじが印象に残ったのは、むしろその間の日本のできごととの落差の大きさで、日本の特殊性やある種の危なさを村上さんは鋭く感じています。
一種の時代評論、社会評論としても読めるかもしれません。
一つ発見をしたのは、村上さんも人混みが嫌いということ。
ここの共通点でじーじは村上さんの書くものが好きなんだなと今回、わかりました。
人混みが嫌いで、人の少ないところでのんびりすること、そして、ゆったりとビールを呑むこと、ここに幸せを感じるようです(?)。
小さな幸せを大切にすること、その幸せを守ること、そこに村上さんの小説の大切なことがあるような気がします。 (2019.3 記)
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2021年夏の追記です
2年半ぶりに再読をしました。
堀田善衛さんの『オリーブの樹の蔭に-スペイン430日』(1084・集英社文庫)を読んでいたら、村上さんの『遠い太鼓』も読みたくなって、読みました。
スペイン、ギリシャ、イタリア。
どちらの本もヨーロッパでの作家さんの生活を描きますが、思うのはやはり日本の異常さ。
日本にいるとわかりにくいですが、日本の社会もマスコミもかなり異常なように感じられます(その無責任さ、集団性、金権傾向、などなど)。
その歪みの一部が、いじめや虐待などとして現われてしまっているのでしょう。
いじめや虐待などの渦中にいると絶望しかないかもしれませんが、日本が特殊なだけで、世界は違うようですよ。
もう少し多様性があるようです。
世界の多様性を知ることはやはり大切なことのようです。 (2021.8 記)