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村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』2002・新潮文庫-喪失、希望、再生を描く

2024年06月09日 | 村上春樹を読む

 2022年初夏のブログです

     *

 昨日のブログにかえるくんのことを書いたので、かえるくんが出てくる(!)村上春樹さんの短編集『神の子どもたちはみな踊る』(2002・新潮文庫)をかなり久しぶりに、おそらく15年ぶりくらいに読む。

 年のせいか、小説を読むスピードが遅くなってきた最近のじーじにはめずらしく、六つの短編を一日で読んでしまった。

 もったいない。

 再読が遅くなってしまったのは、この短編集の中で、じーじが一番好きな「かえるくん、東京を救う」のあらすじをなんとなく覚えていたせいだが、他の短編はまったく中身を忘れていた。

 昔、飲み会で、この本の話が偶然出て、同僚の若い女の子が、わたしは「蜂蜜パイ」が好きです、といい、じーじは、「蜂蜜パイ」はたしか淋しいくまさんのお話だったよな、そういうお話が好きなんだ、ふーん、という程度に聞いていたが、今回読み返してみると、すごい恋愛小説でびっくりした。

 あの子はこんなすごい恋愛小説が好きだったんだ、と今さらながらに見直したが(?)、じーじの記憶がまったく当てにならないことを改めて想い知らされてしまった。

 他の「UFОが釧路に降りる」「アイロンのある風景」「神の子どもたちはみな踊る」「タイランド」の四作もすばらしい。

 いずれも、例によって、あらすじは書かないが、生きるうえでの偽善、喪失、断念、希望、再生、などなどが、一見軽妙な文章の中で深く描かれている印象を受ける。

 読み手の人生と相まって、いくらでも広がりと深まりを感じさせてくれるのではなかろうか。

 今ごろ褒めるのもなんだが、いい短編集だ。

 今度はもっと早めに再読をしたい。     (2022.6 記)

     *

 2023年5月の追記です

 本書の「蜂蜜パイ」が好きだという女の子が神田橋條治さんの大フアンで、神田橋さんの研究会で自分のケースのスーパーヴィジョンをしてもらったことがあるという。 

 勇気があるというか、うらやましいというか、すごいお話で、優秀な後輩の成長が楽しみだ。     (2023.5 記)

 


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