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村上春樹・柴田元幸『本当の翻訳の話をしよう』2019・スイッチパブリッシング-翻訳について語り合う

2024年06月17日 | 村上春樹を読む

 2019年のブログです

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 村上春樹さんと柴田元幸さんの『本当の翻訳の話をしよう』(2019・スイッチパブリッシング)を読みました。

 柴田さんは東大の英文学の教授を長くされて(その割にラフなかたです)、村上さんの翻訳を手助けされてきたという関係にあって、このお二人の肩のこらない、しかし、結構、研究っぽいところもある真摯な本です。

 英文学のお話だけでなく、明治時代の翻訳、二葉亭四迷などから今の翻訳に至るまでが語られたりしていて、興味深いです。

 また、二葉亭四迷が明治時代に文語体でなく口語体の小説を書こうとしてうまく書けずに、まずはロシア語で書いてみたというお話と、村上さんがデビュー作を書こうとしたもののうまく書けずに、まずは英語で書いてみたというお話が紹介されていて、新しい日本語の小説を書くことのたいへんさが少しだけわかったような気がしました。

 村上さんの、一見ポップだけれども、しかし、骨格のしっかりとした日本語が、じつは英語経由だったと知って、なんとなくうなづけました。

 さらに、本書の圧巻は、英文学の有名なところを、村上さんと柴田さんが訳し、それをお二人で詳細に比較、検討している箇所。

 取り上げられた英文学の作者は、チャンドラー、フィッツジェラルド、カポーティ、などなど。

 英語が大の苦手なじーじでも、お二人の訳の違いやそこの込められた考え、思想、などがわかります。

 お二人がご自分の訳にこだわらずに、自由に検討をされる様子は、まるで極上のケース研究を見ているようで、とても魅了されました。

 やはり一流の人たちというのは、本当に自由にデスカッションができるのだな、と思いました。

 じーじもお二人を少しでも見習って、こころと頭を自由に保って、人間や社会を深く、冷静に視ていきたい、と思います。    (2019.7 記)

     *

 2021年夏の追記です

 増補版が文庫で出ましたので(2021・新潮文庫)、読んでみました。

 元の本の8本の対話などに、新しく8本の対話などが加えられて、倍の分量、それが文庫本で読めるのですから、お得です。

 しかも、分量が増えたことで、中身がさらに充実をして、深まった感じがあって、さらにいい本となりました。

 翻訳家の柴田さんと、小説家で翻訳家の村上さんの違いも少し出てきて、参考になりました。

 一番のびっくりは、村上さんが文章がうまい小説家として藤沢周平さんを挙げていらっしゃるところ。

 じーじはどちらも大好きな小説家さんですが、こんなところにつながりがあるとは思いませんでした。

 もっともっと読み込んでいきたいと思いました。      (2021.7 記)

 


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