たぶん2014年ころのブログです
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精神科医の中井久夫さんの『最終講義-分裂病私見』(1998・みすず書房)を久しぶりに読みました(統合失調症と名称変更がされる前に書かれた本です)。
購入したのが2003年で、その後、何回かは読んでいるはずですが、それにしても久しぶりです。
ところどころにアンダーラインがあるのですが、やはりかなり新鮮な感じで(?)読んでしまいました。
精神科デイケアのボランティアでの経験をふまえて読むと、うなずけるところが多々あり、勉強になりました。
エヴィデンスとケーススタディの関係、妄想のプラス面、妄想へのつきあい方、患者さんの提案を3週間待ってみること、などなど、ていねいで細やかな配慮が参考になります。
中でも、今回、もっとも、勉強になったこと、それは、現実の姿を大切にすることの重要性、ということです。
中井さんは、事象を区別したり、分類をせずに、事象そのものを素朴に見ることの大切さを説きます。
その理由は、事象を区別したり、分類をすると、事象は概念に近づくから、と言います。
エヴィデンス重視の中で、概念化が盛んで、それがあたかも科学的と誤解をされますが、臨床にあっては、概念より事象そのもの、現実そのものが重要だ、ということになるのではないかと思います。
いま、ここでの現象を、いかにありのままとらえ、感じ、考えていくのかが、より重要、ということではないかと思います。
信ずるに足る先輩がいることに感謝をして、さらに勉強を続けていきたいと思います。 (2014?記)
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2022年12月の追記です
今月のEテレ「100分 de 名著」は中井久夫さんの特集。
第一回目はこの『最終講義』でした。
講師は精神科医の斎藤環さん。中井さんのすごさをていねいに解説されています。
じーじも初心にかえって勉強させてもらっています。 (2022.12 記)