ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

中井久夫『最終講義-分裂病私見』1998・みすず書房-精神科臨床の深い理論と実践に学ぶ

2024年10月11日 | 精神科臨床に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

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 精神科医の中井久夫さんの『最終講義-分裂病私見』(1998・みすず書房)を久しぶりに読みました(統合失調症と名称変更がされる前に書かれた本です)。

 購入したのが2003年で、その後、何回かは読んでいるはずですが、それにしても久しぶりです。

 ところどころにアンダーラインがあるのですが、やはりかなり新鮮な感じで(?)読んでしまいました。

 精神科デイケアのボランティアでの経験をふまえて読むと、うなずけるところが多々あり、勉強になりました。

 エヴィデンスとケーススタディの関係、妄想のプラス面、妄想へのつきあい方、患者さんの提案を3週間待ってみること、などなど、ていねいで細やかな配慮が参考になります。

 中でも、今回、もっとも、勉強になったこと、それは、現実の姿を大切にすることの重要性、ということです。

 中井さんは、事象を区別したり、分類をせずに、事象そのものを素朴に見ることの大切さを説きます。

 その理由は、事象を区別したり、分類をすると、事象は概念に近づくから、と言います。

 エヴィデンス重視の中で、概念化が盛んで、それがあたかも科学的と誤解をされますが、臨床にあっては、概念より事象そのもの、現実そのものが重要だ、ということになるのではないかと思います。 

 いま、ここでの現象を、いかにありのままとらえ、感じ、考えていくのかが、より重要、ということではないかと思います。

 信ずるに足る先輩がいることに感謝をして、さらに勉強を続けていきたいと思います。       (2014?記)

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 2022年12月の追記です

 今月のEテレ「100分 de 名著」は中井久夫さんの特集。

 第一回目はこの『最終講義』でした。

 講師は精神科医の斎藤環さん。中井さんのすごさをていねいに解説されています。

 じーじも初心にかえって勉強させてもらっています。       (2022.12 記)

 

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南木佳士『落葉小僧』1996・文春文庫-おとなが味わう生きる痛みと哀しさの物語たち

2024年10月11日 | 小説を読む

 2020年10月のブログです

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 南木佳士さんの短編集『落葉小僧』(1996・文春文庫)を再読しました。

 この本も本棚を眺めていたら、読んで、読んで、という感じで並んでいて、つい読んでしまいました。

 おそらく20数年ぶりです。

 当然(?)、中身は忘れていて、またまた新鮮な気持ちで(?)、読めました。

 南木さんはじーじの大好きな作家さんのお一人で、芥川賞を受賞した『ダイヤモンドダスト』以来、ずっと追いかけてきている小説家です。

 『阿弥陀堂だより』『冬物語』『医学生』その他もろもろ、いい小説だね、うまいなあ、とうなる小説が多いです。

 本書もすてきな短編小説が並んでいますが、じーじが今回、気に入ったのが、表題にもなっている「落葉小僧」とその続編の「金印」。

 いずれも信州の田舎の村で開業医をしている男性が主人公ですが、なかなかいい味を出しています。

 こんないい小説を長く再読しなかったのは、若い時にはわからなかったところがあったのかもしれませんが、それにしてもおそまつな読者です(南木さん、ごめんなさい)。

 二作とも、あるいは、他の小説も、決して明るい小説ではなく、おとなの生きることの辛さや痛み、哀しみなどが描かれていますが、淡々とある種の諦観とともに書かれていて、後味は悪くありません。

 おとなの小説なので、若い人には少しわかりにくいところがあるかもしれませんが、中年以降の読者にはわかるのではないでしょうか。

 たぶん、長く生きるとは、そういうことなのかもしれません。

 しかし、何度読んでも色あせない深さがあります。

 今度は早めにまた再読をしたいと思います。       (2020. 10 記)

 

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