2020年10月のブログです
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木村敏さんの『臨床哲学講義』(2012・創元社)を再読しました。
なんと8年ぶり。ご無沙汰してしまいました。
木村さんは精神科医で精神病理学者。
このブログでも何冊かの本を紹介させてもらっていますが、人と人のあいだ、とか、自己論、とかで有名です。
じーじは、きっかけをよく記憶していないのですが、家裁調査官になって少しして、河合隼雄さんや土居健郎さんらに続いて、木村さんの本を読んだように思います。
難しい内容でしたが、わからないなりにも頷けるところがあり、調査官研修所の修了論文は大胆にもユングと木村さんのことを書きました(今考えると、若気の至りで恥ずかしいです)。
その後も木村さんの本を追いかけていますが、とにかく難しいので、どこまで理解できているか心もとありません。
今回の本は、連続講演の記録ですので、少しは読みやすいのですが、中身はレベルが高いので、やはりなかなか難解です。
それでも、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、精神の病いは、症状だけではなく、生き方や対人関係のあり方が大切だということ。
現代の精神医学は、症状をDSMなどのマニュアルによって判断し、薬を処方しますが、本当に治療をするためには、人間学的な理解が大事になるといいます。卓見だと思います。
二つめは、ちょっとびっくりしたのですが、フロイトさんの死の欲動への評価。
フロイトさんが晩年に唱えた死の欲動については、精神分析家の間では評判があまり良くありませんが、木村さんの生命論とかなり近いところがあるようです。
人が生まれ、死ぬということはどういうことなのか、かなり根源的なところを議論されていて、なかなか刺激的です。
難しい本ですが、さらに読み深めていこうと思います。 (2020. 10 記)
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同日の追記です
木村さんの自伝(『精神医学から臨床哲学へ』2010・ミネルヴァ書房)を読んでいると、小学校時代、運動が苦手でいじめられっ子だった、と書かれています。
そういえば、中井久夫さんもいじめられっ子だったとのこと。
こんな大学者さんたちでも、子どもの時には苦労をされたのですね。 (2020. 10 記)