臆病なビーズ刺繍

 臆病なビーズ刺繍にありにしも
 糸目ほつれて今朝の薔薇薔薇

今週の朝日俳壇から(10月20日掲載・其のⅠ)

2014年10月24日 | 今週の朝日俳壇から
[金子兜太選]

(さぬき市・野崎憲子)
〇  釣瓶落し盛り上がりゆくいのちかな

 寂滅寸前の命の輝き。


(東京都・たなべきよし)
〇  流木の一霧ごとの白さかな

 「一霧」は「ひときり」とよむのか?


(養父市・足立威宏)
〇  秋耕や八十一歳八ヶ月

 「秋耕」を無事に終えたら養老の瀧から流れ出る<有機蛇紋岩米純米吟醸酒・仙櫻>で乾杯しましょう。



(神戸市・豊原清明)
〇  太陽に家出の母や蟷螂や

(倉敷市・森川忠信)
〇  秋思故の愚行の果ての愚行なり

(福津市・松崎佐)
〇  稚(やや)のごと指咬む姉の十三夜

(京都市・山口秋野)
〇  蚯蚓鳴くところへ核の廃棄物

(筑紫野市・二宮正博)
〇  存在は吾と同じに昼の月

(大津市・西岡信夫)
〇  淡海は地球の雫花野かな

(小平市・久保奈緒世)
〇  水澄めり胎児赤子になる日待つ
[長谷川櫂選]

(岐阜市・阿部恭久)
〇  爽やかに天文学的ひとりかな

(上野原市・天野昭正)
〇  それぞれの仕事の匂ふ夜学生

(八王子市・徳永松雄)
〇  逃げ回る羊数ふる夜長かな

(徳島市・清水君平)
〇  落鷹を数へて一日岬の暮

(豊橋市・河合清)
〇  白桃や水よりビーナス生るるごと

(富士宮市・渡邉春生)
〇  桐一葉真直ぐに落ちて動かざる

(茂原市・鈴木ことぶき)
〇  鹿角を切られ鏡を見てをりし

(北九州市・真島暢子)
〇  生きがひは弁当作り鰯雲

(岡山市・三好泥子)
〇  蓑虫の大中小とぶら下がる

(川崎市・田中唯喜)
〇  粧ひの山一瞬に死に化粧
[大串章選]

(東京都・たなべきよし)
〇  曼珠沙華死者は生者とともに在り

(上尾市・宮本幸子)
〇  天の川流れ異国の海に落つ

(松戸市・青木静子)
〇  天高しノーベル平和賞を待つ

(大阪市・森田幸夫)
〇  万葉の小川に洗ふ障子かな

(向日市・松重幹雄)
〇  新米を拝むがごと掬ひ上ぐ

(松戸市・大谷昌弘)
〇  星月夜地球に風と炎かな

(金沢市・今村征一)
〇  鮎落ちて清流荒び行く如し

(東村山市・高橋喜和)
〇  棗熟れ届かぬ高さ仰ぎし日

(茂原市・鈴木ことぶき)
〇  夜学教師眠る生徒をそのままに

(松山市・福山みどり)
〇  人の手の入らぬ山々葛の花


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