世界的ピアニストのパデレフスキーがアメリカで公演していたころのある日、ボストンの
停車場で汽車をまち合わせていた。そこへ靴磨きの少年がやってきて、パデレフスキー
に靴を磨かせてくれ、という。
少年は目のくりくりした可愛らしい顔をしていたが、頬には靴墨がついてひどく
汚れていた。
「靴は磨かなくてもよいが、お前の顔をみがいてもらおう。きれいに顔を洗ってきなさい、
そうすれば、この銀貨をあげる。」
と、パデレフスキーは、言った。
少年は、意外なことばにとまどったが、うなずくと去り、やがて、見違えるような
きれいな顔になって現れた。そして、約束どおり、銀貨をもらった。
だが、少年は、すぐさまそれを返して、
「だんな、この銀貨はあげる、これでそのきたならしい髪を刈ってください。」
といって去った。
パデレフスキーは苦笑しながら、その帽子からはみ出た長髪をなで、少年の厚意を
無にしないよう床屋へいった。
人の好意を受けることを学ぶことです。そうすれば、誰でもずっと楽しくなれます。
「衆生」とは山川草木などのあらゆる自然物や人間関係のことで、そこには何一つ
それだけで生存できるものはない。たとえば、農家で米麦は作るが農機具は
買わねばならない、というように、生活物資のすべてから、職場のはたらきに至る
まで、自分だけの力でできるものは一つもない。まさしく、「衆生の恩の賜物」である。
この衆生の恩を意識できるとき自分自身が向上するのだろう。
注:好意=親切・親愛感・相手のためになるように考えるあたたかい心
厚意=思いやり{他人の行為}
─『一日一言 人生日記』古谷綱武編 光文書院 参照・参考
停車場で汽車をまち合わせていた。そこへ靴磨きの少年がやってきて、パデレフスキー
に靴を磨かせてくれ、という。
少年は目のくりくりした可愛らしい顔をしていたが、頬には靴墨がついてひどく
汚れていた。
「靴は磨かなくてもよいが、お前の顔をみがいてもらおう。きれいに顔を洗ってきなさい、
そうすれば、この銀貨をあげる。」
と、パデレフスキーは、言った。
少年は、意外なことばにとまどったが、うなずくと去り、やがて、見違えるような
きれいな顔になって現れた。そして、約束どおり、銀貨をもらった。
だが、少年は、すぐさまそれを返して、
「だんな、この銀貨はあげる、これでそのきたならしい髪を刈ってください。」
といって去った。
パデレフスキーは苦笑しながら、その帽子からはみ出た長髪をなで、少年の厚意を
無にしないよう床屋へいった。
人の好意を受けることを学ぶことです。そうすれば、誰でもずっと楽しくなれます。
「衆生」とは山川草木などのあらゆる自然物や人間関係のことで、そこには何一つ
それだけで生存できるものはない。たとえば、農家で米麦は作るが農機具は
買わねばならない、というように、生活物資のすべてから、職場のはたらきに至る
まで、自分だけの力でできるものは一つもない。まさしく、「衆生の恩の賜物」である。
この衆生の恩を意識できるとき自分自身が向上するのだろう。
注:好意=親切・親愛感・相手のためになるように考えるあたたかい心
厚意=思いやり{他人の行為}
─『一日一言 人生日記』古谷綱武編 光文書院 参照・参考
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