ただ生きるのではなく、よく生きる

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不安神経質症───神経質症③

2016-10-09 17:07:42 | 医療
Aさんは外交的で仕事もバリバリとこなし、体力にも自信がありました。仕事が
オーバーワーク気味で、睡眠時間が少ない日が続きます。部下も残業や休日
出勤をしてがんばってくれ、期日までに来年度の販売計画書を作成して間に合わす
ことができました。Aさんは、その後部下を連れて飲み歩きました。夜中に目が覚め
るとワイシャツを着たままで、布団の上に寝ていました。どこをどう帰ってきたのか、
記憶もはっきりしません。

Aさんはなんとも言いようのない不安感を覚え、心臓の激しい動悸を意識しまし
た。そして、死の恐怖に襲われました。すっかり動転して、呼吸するのも困難に
なったため、奥さんに救急車を呼んでもらって入院しました。ところが、検査の結果、
心臓にはなんの異常も認められませんでした。

この出来事を契機にして、Aさんは心臓の動悸が気になり始め、またあの晩の
ような発作が起こるのではないかという不安に襲われて、外出するのが怖くなり
ました。とくに電車に乗るのが怖く、各駅停車ならともかく、一人では急行や特急に
のれなくなってしまいました。症状について医師の話を聞いてからは、誰かいっしょに
いれば特急にも乗れるようになりましたが、仕事に支障が生じ、まじめなAさんは
困り果てています。

Aさんのような不安神質症の人は、心臓をはじめどこにも疾患はないと医師が
診断しても、心臓の動悸が激しくなったり、圧迫感、呼吸困難、めまいなどを意識
して、死の恐怖に襲われるのです。そのため、医師の言葉を信じることができず、
しだいに症状が固まって日常生活に支障をきたすようになります。

さて、神経質な人というと無口で陰うつなイメージを抱きますが、不安神経質症の
人はどちらかというと感情表現が豊かで、明るい外向的な人が多く、強迫神経質症
のタイプとは対照的です。強迫神経質症の人が理知的で感情を抑える傾向が強い
のと比べると、感覚的傾向が強いと言えます。一般的な神経質は、不安神経質症と
強迫神経質症の中間タイプというところでしょうか。

このように、ひとくちに神経質と言っても、タイプにより性格傾向が多少異なります。
神経質症で悩んでいる人は、誰もが自分の症状が一番重いと考え、自分ほど
不幸な人間はいないと強く思い込む傾向にあります。したがって、不安神経質症
の人の訴えを聞いた強迫神経質症の人は、なんでそんなことぐらいで悩んでいるのか
と思いがちです。逆の場合も同じことです。けれども、森田理論を学び、症状から
解放されていくと、症状の形態は違ってもそのメカニズムは同じであることがわかり、
共感や同情心が芽生えてくるのです。

─『現代に生きる森田正馬のことば Ⅱ新しい自分で生きる』生活の発見会編 白洋社より

神経質症について長く、紹介してみたが、自分の日ごろを内観してみると思い当たる
こともあるように思う。森田氏のアドバイスを参考にすることで自分の行動を考え
直すきっかけになるように思う。

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