ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

ひとり喜びながら仕事に打ち込む──北大路魯山人と木版画家・吉田博

2016-07-10 19:43:16 | 知恵の情報
なんでも楽しんで好きなことをやる。金を儲けようとか、やれこうやっては損だとか、
なんてケチな考えてことをやっては、決して儲かるものでなし、人に認められる
もんでもないね。

東京のある一流のすしやが新橋にあるが、あそこの主人が赤貝のひもなど
洗っている時、しゃあと手を動かし、「今日は市場にいいのがたった二十しか
なかったんだが、いいね、さすがに」なんてひとり喜びながら洗ってる。
ああでなくては、美味しいものひとつだって出来っこないんだし、あれでちゃんと
一流のすしやになりきるんだと思うね。

─『魯山人味道』北大路魯山人著 中公文庫


好きなことをやることがいちばんいい。自分の人生で、好きなことがいつ出てくるか
ということもある。小さい頃から、好きな道を見つけられてそれに打ち込めれば
幸せだが、人生を歩んでいくうちに見つけることもある。芸能人を見ていても
えっこんなことができるのと驚くことがある。日曜大工がプロなみだったり、
服をつくるのが簡単にできてしまったり。私は、表の芸能活動より、その好きな
自分で長くずっと人から言われなくてもやってきたその人の得意なものを知るのが
好きだ。

職人などもその製品をみると見事な仕上がりに驚く。最初に始めたときは
奉公などからかもしれないがいつしか自分の興味へ変わり、好きになっているという
ことが感じられる。昔の芸術も小さい頃から工房へ入りその中から、自分の興味を
培っていつしか、これが好きだというものをみつけたのだろう。そうでなくては、
ミケランジェロやラファエロ、ダ・ヴィンチなどの作品は生まれないように思う。

今日の日曜美術館(NHKEテレ)で吉田博の木版画の特集を見た。彼は、油絵画家
で、ちょうど黒田清輝の画風になっているころの人だ。彼の作風が黒田のように
印象派のようでなく、全然評判にならずだったが、ある時期から人に進められて
木版画をやるようになると、その興味と自分の表現がぴったりあって、見事なものに
なっていく。日本人は美の柔軟さがないのだろう、彼の木版画も認められない。
しかし、戦前から海外では認められていて、戦後になり、GHQの外国人が彼の
もとに集まってきてたちまち、彼の作品はアメリカなどに流れた。彼は、日本で
話題にならずとも世界を歩き自分の興味のあるものを題材にした。
「自然の美しさをそれを見たことのない人のために自分が表現してその美しさを
伝えたい」という彼の哲学が好きなものとあいまって成功している。油絵の色の具合
いより、鮮やかになり、彼の色彩の表現が生きている。日本では後に知ら
れるようになったが好きなものを見つけられたことは幸せだったに違いない。
彼の木版画の作品は何十にも刷り重ね微妙な色彩の陰影をだしている。陰影をだすため
ねずみ版というのがあるそうだがそのつかい方の妙味はすばらしいものだ。
浮世絵版画の技術が進んで彼に結実しているような思いかふと、した。
ネットで見れば彼の作品はすぐ見れる。興味のある方は、見てください。

 
 富士山の影のつかみ方と雲の漂う空気が見事に表現されている 

 
 建物の写実力や水面に映る建物の表現には思わず見入ってしまう
 

 木版画なのにこの水の写実のすごさには驚いてしまう・・・

 
 これは、ダイアナ妃が気に入って
 作品を持っていたらしい

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