ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

人心をつかむコツ

2016-10-10 18:03:04 | 知恵の情報
いくら名優といったって、しょせんは作り事の芝居を演じているのではないか?
その作り事なのに、観客は感動の涙を流し喝采の拍手を送っている。それに
引きかえ、自分は神の道や真理を説くのに信者は上の空で聞いているようだ、
一体これはどうしたことだろうか──牧師はそう考えるとわけがわからなくなった。
この上は、その名優某に会って、客を感動させる秘訣を聞き出そう、と決意すると、
牧師は、名優某を訪ねた。

「いや別に客を感動さす秘訣だなんて、ございません」とその名優は一応断った
があまり牧師が熱心なので、つい「そんなに仰いますと伺いますが、あなたは
お説教をなさるとき、あなたの仰ることを心から信じておいでになりますか?
おそらく伝道用の教本のままを機械的に仰っておられるのではありませんか。
しかし、私は、なるほど演っていることはいずれも作り事ですが、それに全身
を打ち込んでやっています。私自身が芝居の中の人物になりきろうと努力し、
工夫もつねにかさねてやっています。」とその気持ちを述べた。牧師は、この
言葉に深く反省した。
「自ら疑えば人に信ぜられず、自ら信じれば人に疑われず(素書)」という
兵法上の言葉がある。

夜店の植木屋が枝ぶりのよい花木の盆栽をしきりにすすめる。値段もそう
高くはない。しかし、なんだか不安だ。すぐ枯れるのではなかろうか、とも
思われるが、もともとこの盆栽には根がないのである。つまり、「自ら
疑う」どころではない不正の事実があるから、どうしても人に不安を与えず
にはおかない。植木屋はこの不安を除こうとしてうんと安値にまける、
これで客の不安は欲に変わってこのインチキ盆栽を買うことになる。

─『一日一言 人生日記』古谷綱武編 光文書院より

『素書』
原書は六章に分かれており、その内容は道・徳・仁・義・礼の五つは一体で
あるという黄老の学説を宣伝しており、あわせてこの思想によって国を治め
兵を用いるための指針を示しています。その論述は空虚なものとはいえ、
この思想の歴代の軍隊の管理と将軍の任用に対する影響はとても深く、
封建社会の軍事思想を研究するのにもゆるがせにできない内容の一つです。


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