ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

根性の全く変わらない現代の人々───イソップ

2016-05-31 20:26:34 | 知恵の情報
★家のなかにいる子山羊が、オオカミが外を通るのを見て、その悪口を言った。
オオカミが答えて言った。
「哀れなやつめ、わしの悪口を言っているのは、おまえではなく、おまえのいる
その場所だ。」


★飢えたキツネが、ブドウ棚からブドウの房がさがっているのを見て、取ろうと
思った。しかし、取ることができなかったので、つぎのようにひとりごとを
言いながら立ち去った。
「あれはまだ酸っぱくて食えない」。


★いつもいっしょに草を食べている三匹の牛がいた。ライオンが彼らを食おうと
狙っていたが、その結びつきが固いので襲うことはできなかった。そこで、
ライオンは巧言を用いて彼らのあいだに不和の種を蒔き、彼らが互いに
背きあうようにした。その後、ライオンは彼らがそれぞれひとりでいるのを
見てつぎつぎに食ってしまった。


★オオカミが羊の群れを襲う機会をうかがっていたが、犬が見張っていて
手を出すことができないので、目的を達するために策略を用いることに
した。オオカミは羊に使者を遣って犬を引き渡すよう求めた。自分と
羊とのあいだの反目の原因は犬であり、犬を引き渡しさえすれば、
羊とのあいだに平和が永遠に続くだろうとオオカミは言った。何が
起こるのかを予見できない羊は犬を引き渡した。いまや、絶対的
優位に立ったオオカミは、もはや守る者のいなくなった群れをほしい
ままに食い荒らした。


★マグロがイルカに追われ、つかまりそうになって跳ねたとき、勢い
あまって海岸に落ちた。イルカも同じようにとびあがって同じところに
投げ出された。マグロは振り返ってイルカが息を引き取るのを見て
言った。
「自分は死ぬのがもう悲しくない、。わたしの死の原因となった
あいつもいっしょに死ぬのが解ったから」。敵が不幸であれば
死んでも満足したのである。

─『新訳イソップ寓話集』塚崎幹夫訳 中公文庫
 『人間通になる読書術』谷沢永一著PHP新書より


これら光っている名品(上記)は、人間性そのものを照らし出す、と
谷沢氏は、語る・・・そして、紀元前六世紀の古代人と現代人と、人間の
根性は全く変わらない、ヒト種族の情念が、どういう風に発して
動くか、その航跡が余すところなく描きつくされていると
評している。

「哀れなやつめ、わしの悪口を言っているのは、おまえではなく、おまえのいる
その場所だ。」の話は、官僚の立場を利用して自分が偉くなって
話している者のへの痛烈な批判に当てはまる。

オオカミと羊と犬の関係は、大衆操作の謀略に当てはまる。
判断の甘い大衆、マスコミを巻き込んで洗脳して、自分にとって
不都合な相手を追い落とす方法だ。
昔、社会党が非武装中立論を唱えていたことを思い出す。
このイソップの寓話だけで、非武装中立という言葉のなかに
守りなくして平和は守れないのに、犬がいなければ永久の
平和がつづくと誘いかけるまぬけな非現実を語っていたとわかる。