PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

PSWの養成課程見直し

2010年08月27日 19時27分17秒 | 精神保健福祉情報

精神保健福祉士法の改正に向けた動きが、着実に進んでいます。
改正法案の内容は、既に公表されている通りです。
先の国会で障害者自立支援法改正案とともに、廃案になってしまいましたが。
養成課程における教育内容等の見直しが焦点となっています。

趣旨としては、
1.従来の、医療機関等での治療チームの一員として退院促進等をおこなう役割に加え、2.就労支援等を含めて、地域における生活の維持・継続、質の向上を図り、
3.精神保健福祉の多様な課題に対応する、行政や司法、教育、労働分野への拡大、
4.対象疾患も統合失調症を主とするものから、気分障害、発達障害、認知症へと拡大し、
精神保健福祉士の役割が、時代の変化とともに見直しが必要になっている、と。

新カリキュラムの詳細は、以前このブログでも取り上げていますが、
時間数、科目数ともに大幅に増えていて、学校や学生の負担は増加しています。
パソコンを使用した相談援助技術を学べる態勢も、学校側は考えねばなりません。

大きく課題になってくるのは、「実習」の質の向上を求められている点です。
1.実習指導者の比率は学生の5倍以上
2.実習指導者は資格取得後経験年数+講習受講を要する(経過措置あり)
3.担当教員が毎週巡回指導を原則とする
4.医療機関(病院・クリニック)での実習を90時間以上必須
5.受験資格の実務経験と実習施設の範囲見直し
等々、学校側だけでなく現場側も今後どうするか多々考えなければなりません。

新カリキュラムの開始は、2012年4月1日です。
この間、新しいカリキュラムへのパブリックコメントが公募されていました。
各学校、教員、現場から、多数の意見が厚生労働省に寄せられています。
負担増への現実的対応の困難を訴える意見や危惧が、多く寄せられていると聞きます。

PSWの活動領域は、近年本当に大きく拡大しており、対応が必要です。
社会福祉士のカリキュラム変更もあり、科目の再編も、今どうしても必要です。
実習をはじめとした「質の向上」も、前向きに検討される必要があるでしょう。
他の国家資格専門職のカリキュラムに比較すると、まだ時間数も少なくゆるいですし。
理念としては、よりクォリティの高い養成教育レベルを求めるべきだと思います。

でも、一方で、現実的対応を求められる学校側や実習受け入れ側は、やはり大変です。
限られたスタッフ数で、あれもこれもやってる現状で、現実的な負担増は見過ごせません。
各学校は、既に対応の準備に入っていますが、通信教育は壊滅的な打撃を受けます。
フルタイムで現に働いている人にとっては、実習時間の確保が難しくなりますし。

ハードルが上がる分、学生の応募は少なくなり、募集停止に至る学校も出てくるでしょう。
ただでさえ、3Kイメージから、若者の福祉離れが顕著になっており学生が集まりません。
精神保健福祉士の待遇が、今後格段に上がり、若者に魅力的な職種になれば別ですが…。

これまでが供給過剰で、現場は既に充足しているという評価もあるでしょう。
むしろ、養成教育機関の自然淘汰が進んで然るべきという意見もあるでしょう。
でも、学校に学生が集まらないということは、現場への人材供給がやせ細るということです。
量の減少が、質の低下に転化しては、カリキュラム改正の趣旨が崩れます。

改正の理念を大事にしながら、現実的な落としどころを、どう探っていくのか?
まだまだ、いろんな綱引きが行われるのかも知れませんね。
パブリックコメントを受けての、今後の対応が注目されます。

参考までに、日本精神保健福祉士協会が提出した意見を、載せておきます。
養成教育側とはまた異なる、職能団体側の意見として、お読み下さい。


※画像は、東京都庁第2庁舎。記事本文とは関係ありません。


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                              2010年8月10日
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部
精神・障害保健課 御中
                         社団法人日本精神保健福祉士協会
                              会 長 竹 中 秀 彦

          精神保健福祉士法関連法令の改正について

標記の件について、下記のとおり本協会としての意見を述べますのでお取り計らいのほどよろしくお願い申しあげます。

                  記

1.精神保健福祉士法関連法令・通知の改正について(案)のⅢ.改正概要における「養成施設の教育課程の充実等について」の「演習・実習の拡充等について」および「その他」の「実習施設の範囲の拡大」について

「精神保健福祉士短期養成施設等及び精神保健福祉士一般養成施設等指定規則第五条第一号カの規定に基づき厚生労働大臣が別に定める施設(平成10年厚生省告示第10号)」の改正にあたっては、職域の拡大や求められる支援の多様化により精神保健福祉士の役割が拡がっている現状に鑑み、現行の施設に準ずる施設又は事業として、精神保健福祉士養成課程における実習指導者の資格要件を満たす者が従事しており、かつ精神障害者が支援の対象に含まれる以下の施設または事業も加えてください。

1)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に規定する社会復帰調整官を配置している保護観察所
2)児童福祉法に規定する児童相談所、母子自立支援施設及び児童家庭支援センター
3)生活保護法に規定する救護施設、更生施設
4)都道府県及び市町村の事業運営要綱等に基づき運営される障害者小規模作業所
5)市町村における障害福祉担当課
6)社会福祉法に規定する福祉に関する事務所及び市町村の区域を単位とする社会福祉協議会
7)障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する広域障害者職業センター、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センター
8)職業安定法に規定する公共職業安定所
9)売春防止法に規定する婦人相談所及び婦人保護施設
10)介護保険法(平成九年法律第百二十三号)に規定する介護老人保健施設及び地域包括支援センター並びに居宅サービス事業のうち通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護又は特定施設入居者生活介護を行う事業、地域密着型サービス事業のうち認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護又は地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護を行う事業、居宅介護支援事業、介護予防サービス事業のうち介護予防通所介護、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所生活介護又は介護予防短期入所療養介護を行う事業、地域密着型介護予防サービス事業のうち介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護又は介護予防認知症対応型共同生活介護を行う事業並びに介護予防支援事業
11)老人福祉法に規定する老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センター及び有料老人ホーム並びに老人デイサービス事業
12)更生保護事業法に規定する更生保護施設
13)発達障害者支援法に規定する発達障害者支援センター
14)文部科学省が主管する学校・家庭・地域の連携協力事業として位置づけられているスクールソーシャルワーカー活用事業を行う教育委員会等
15)企業等に対していわゆるEAP(従業員支援プログラム、Employees AssistanceProgram)を行う事業所等
16)刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に規定する刑事施設及び構造改革特別区域法施行令の規定により委託を受けて運営される社会復帰促進センター

2.改正概要の「その他」の「実務経験施設」の範囲の拡大について

教育内容等の見直しについて(案)には、「実務経験施設の範囲について実習施設の範囲との整合性を図りつつ見直しをする、もしくは検討する」とあります。
今回の新カリキュラム案において医療機関における90時間以上の実習の必須化を図ることに鑑み、医療機関以外の実務経験者においては、90時間以上の医療機関の実習を必須としてください。
また、実務経験施設の範囲拡大に伴い、実務と認定できる業務内容の明示を求めます。

3.その他

(1) 実習については、時間数の拡充と医療機関と医療機関以外の両方の実習が必須とされることに鑑み、実習受け入れ機関の円滑な確保が重要となることから、本制度改正に関する周知と合わせ、特に行政機関等における実習受入れの協力要請に係る通知等が行き届くようにお願いいたします。

(2) 「精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直しについて」(別添)(以下「別添資料」という)には、「今後の精神保健福祉士の役割」として、「医療機関等におけるチームの一員として、治療中の精神障害者に対する相談援助を行う役割」が示されていることに関連して、教育内容の見直しによる資質向上を前提として、精神保健福祉士が医療機関等においてチームの一員として配置される環境や条件に関する改善を図っていただきたく要望いたします。

(3) 別添資料には、「今後の精神保健福祉士に必要とされる知識及び技術」として、「今後の精神保健福祉士の養成課程においては、精神障害者の人権を尊重し、利用者の立場に立って、これらの役割を適切に果たすことができるような知識及び技術が身に付けられるようにすることが求められており、‥‥」とあります。
実践力の高い精神保健福祉士の養成に必要とされる知識及び技術の習得は、ソーシャルワーク実践における価値や理念の習得を前提としていることを明示してください。

                                     以上



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