「ケアマネジャー」は、日本では「介護支援専門員」の呼び名として定着しています。
介護保険制度の中で、高齢者への様々な支援メニューを進捗管理する人をさします。
ケアマネ資格保有者は、現在54万6千に達しています。
(実際に現場に従事しているのは、14~15万人と言われています)
毎年10月に試験は実施され、第1回は合格率50%弱でした。
(僕は、1997年に、石原慎太郎都知事名の登録証明書を受け取りました)
2007年度からは、5年毎に所定の研修を受けての登録更新制度が導入されました。
(僕は、この受講ができなかったので、2009年に失効しています)
ケアマネの供給過剰もあり年々減り、直近では15%まで合格率は低下しています。
(今だったら、受かりませんかね?)
その「ケアマネさん」をめぐって、今、物議を醸す動きが出てきています。
ことの発端は、3月28日から始まった「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会」での発言です。
5月31日、日本介護支援専門員協会の木村隆次会長が、大きな花火をぶち上げました。
「ケアマネ資格を国家資格化するべき」との提起です。
詳しくは、ネット上のニュースで検索かけると出てくると思いますが。
木村さんの主張(協会の主張?)を要約すると、こんな感じでしょうか?
介護保険制度だけでなく、日本の社会保障の中できちんとケアマネジメントをできるケアマネジャーを作るべき。
ケアマネジャーが介護・医療・保健・障害領域を横断的に担当できるよう、ケアマネを国家資格化するべき。
現在の任用資格を国家資格とし、ケアマネジャーを大学で養成する「大学養成コース」を取り入れるべき。
ケアマネジメントの評価指標の確立が必要であり、54万人のケアマネ合格者に有効期限を設けるべき。
そして、国家資格取得に向けてのイメージまで提示しています。
ケアマネの質を担保していくために、現在の「医療・介護・福祉の国家資格者&5年以上の現場経験者」というハードルではなく、国家試験というハードルを設ける。
1)新ケアマネジャー、2)移行期の新ケアマネジャー、3)現任ケアマネジャー、の3つに国家試験を受けさせ、ふるいにかけて標準化を図る。
1)新ケアマネジャーは…
4年間(約1800時間)の大学養成課程の卒業者のみに受験資格を絞る。
その後、国家試験を経て、資格取得後1年間の実習(インターン)を課す。
その上で、初めて保険適用の仕事ができるようにする。
2)移行期間のケアマネジャーは…
受験資格を法定資格者に限定する。
受講試験も現行の60問から200問に見直した試験を実施する。
その後、130時間の研修に加え、認知症や医療に関する研修などを課す。
1年間のインターンを実施した後、保険適用の仕事ができるようにする。
3)現任のケアマネジャーは…
国家試験を課し、受験資格として「一定期間・程度の実務経験等」を要件とする。
3年の実務経験とスーパーバイザーとして30件の実績を持つことを例とする。
受験要件の細部については、検討会で議論して結論を得る。
木村さんは、その他にも会員へのアンケート調査を踏まえ、独立事業所の定義や、地域事業所との連携義務付け、施設ケアマネの人員基準見直し等の課題を提起しています。
この検討会は、文字通り「今後のケアマネをどうするか?」を討議する場です。
厚生労働省の検討会ですから、この場での結論は、今後の制度見直しに反映されます。
「質にピンキリあるケアマネの、キリの部分をどうするか?」が課題になっています。
木村会長さんの提起も、なんとかケアマネの質を担保したいという思いからでしょう。
でも、検討会の場での、他の委員からの反応は冷ややかでした。
「どうして国家資格化しなければいけないのか、その根拠がわからない」
「これ以上、国家資格を増やして、どうするの?」という発言もありました。
「ケアマネの能力を評価する方法を確立するべき」
「能力の評価、成果の評価がポイントになる」
「ケアマネジメント能力、連携能力、自立生活支援能力が必要」
「マネジメントかコーディネートか、責任と権限が不明確」
検討会で既に出ている他委員の意見と、かなり異なる相での提起であったことは確かです。
「ケアマネの質の担保」を図るために「国家資格化」するというのは、確かに唐突です。
資格は、職種を制度に位置づけるためにありますが、ケアマネは既に制度化されています。
最低限の知識を有していること位しか、国家試験を行っても担保できません。
「国家資格」というものに、過剰な幻想を煽ることは避けたいものです。
精神保健福祉士の国家資格化運動に一応かかわって来た立場から、そう思います。
そもそもケアマネジメントは、精神障害者の脱施設化を推し進める中で開発されました。
多様なニーズを有する方へ、多様な資源を投下して、在宅生活を支援する手法です。
本来はソーシャルワークの一手法として位置づけられています。
日本では、すっかり高齢者の介護プランを立てる人というイメージになってしまいましたが。
もし、今後「ケアマネ国家資格化」運動が展開されるとしたら…。
ソーシャルワーカーの福祉専門職団体が「反対」にまわる可能性はあるでしょうね。
ソーシャルワークの一手法であるケアマネジメントが、独立国家資格になるとなったら…。
「軒先を貸して母屋を取られた」ような感覚になるのではないでしょうか?
(そういった古い元祖・本家意識で反対というのも、困ったものですが)
目くじらを立てて反対するほどのことはないと、現状では僕は思っています。
しばらくは、ウォッチング(様子見)で良いのでしょうけど。
どれだけ周知されているのか、いささか気になるので、ちょこっと記事にしてみました。
皆さんもどうぞご一緒に、今後の動きをモニターしておいてください。
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■「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する検討会」構成員メンバー
池端幸彦 日本慢性期医療協会常任理事
加藤昌之 さわやか福祉財団政策提言プロジェクトリーダー
木村隆次 日本介護支援専門員協会会長・日本薬剤師会常務理事
小山秀夫 兵庫県立大学教授
齊藤訓子 日本看護協会常任理事
佐藤 保 日本歯科医師会常務理事
高杉敬久 日本医師会常任理事
田中 滋 慶応義塾大学大学院教授:座長
筒井孝子 国立保健医療科学院統括研究官
東内京一 埼玉県和光市長寿あんしん課長
中村春基 日本作業療法士協会会長
野中 猛 日本福祉大学教授
橋下泰子 大正大学名誉教授
畠山仁美 日本介護福祉士会常任理事
藤井賢一郎 日本社会事業大学専門職大学院准教授
堀田聡子 労働政策研究・研修機構研究員
桝田和平 全国老人福祉施設協議会介護保険事業経営委員会委員長
水村美穂子 東京都青梅市地域包括支援センターすえひろセンター長
山際 淳 民間介護事業推進委員会代表委員
山田和彦 全国老人保健施設協会会長
山村 睦 日本社会福祉士会会長
■現行「ケアマネ」資格の概要
介護支援専門員として登録・任用されるには都道府県の実施する「介護支援専門員実務研修」を受講する必要があります。
研修を受講するためには「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格することが必要です。
受験資格を得るには、三つのルートがあります。
1)下記の法定資格などで5年以上の実務経験がある者。
社会福祉士
精神保健福祉士
介護福祉士
医師
歯科医師
薬剤師
保健師
助産師
看護師
准看護師
理学療法士
作業療法士
視能訓練士
義肢装具士
歯科衛生士
言語聴覚士
あん摩マッサージ指圧師
はり師
きゅう師
柔道整復師
栄養士(管理栄養士を含む。)
2)相談援助業務に従事する者で社会福祉主事任用資格、訪問介護員養成研修2級課程に相当する研修を修了した者
3)上記の資格または研修修了の資格がない場合は、所定の福祉施設での介護等に従事した期間が10年以上の者
※画像は、東京ドームシティの観覧車。
もちろん、本文の内容には一切関係ありません。
私は社会人1回生のものです。
少しお伺いしたいことがあり、コメントをさせて頂きました。
いま、国家資格にするしないとやっと騒がれ出した「臨床心理士」という資格はご存知でしょうか?
精神保険福祉士と臨床心理士との相違点について
知りたいのですが...
いきなりで申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
知らなかったー。
ケアマネ・・・。不思議すぎる。
ネットで探したらこの記事にたどり着きました。
私は基礎資格が准看護師のケアマネです。国家資格ではありません。友人の話ならケアマネ継続不可です。
しかし、この記事を読むとケアマネの国家資格化ですよね。でも当然再度合格なんて考えられません。
ケアマネがどうして国家資格化しなかったかと言う理由の一つとして、私は各都道府県で必要人数を調整できるからだと思っています。准看護師の資格のように合格点基準を市町村に任せれば人数調整出来ますよね。これは私の持論です。本当にそうかは知りません。
でも、提唱者がおっしゃる通り能力を向上させる必要性は感じています。でも、国家資格化は反対です。
なんだか、提唱者が「ケアマネ取ったけど国家資格じゃないんだよね。介護福祉士は簡単なのに国家資格なんだよね。国家資格の方が偉いでしょ、介護福祉士よりケアマネの方が格が下なんて信じられない」みたいな?感覚ですよね?
なんだか頑張って利用者さんと向き合った日々が資格の内容いかんで否定されるようで腹立たしいです。