240505 付審判の請求 刑事訴訟法二六二条第1項の解釈についての質問です
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<< ・・告訴・・をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。 >>とあります。
〇 質問 「 付審判の請求 」ができるのは、告訴状の内容が限定されているのでしょうか。
限定されている場合は、限定されている内容にについて、教えて下さい。
刑事訴訟法二六二条
第1項 刑法第百九十三条から第百九十六条まで又は破壊活動防止法(昭和二十七年法律第二百四十号)第四十五条若しくは無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第四十二条若しくは第四十三条の罪について告訴又は告発をした者は、検察官の公訴を提起しない処分に不服があるときは、その検察官所属の検察庁の所在地を管轄する地方裁判所に事件を裁判所の審判に付することを請求することができる。
第2 前項の請求は、第二百六十条の通知を受けた日から七日以内に、請求書を公訴を提起しない処分をした検察官に差し出してこれをしなければならない。
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Ⓢ 付審判請求( 準起訴手続ともいう。)
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〇 対象犯罪
下記の犯罪が対象となる。
刑法第2編 罪 第25章 汚職の罪
193条(公務員職権濫用)
194条(特別公務員職権濫用)
195条(特別公務員暴行陵虐)
196条(特別公務員職権濫用等致死傷)
破壊活動防止法45条(公安調査官の職権濫用の罪)
無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律
42条(公安調査官の職権濫用の罪)
43条(警察職員の職権濫用の罪)
〇 付審判制度の位置付け
不起訴処分に対する不服申立制度は、3つある。
1検察審査会制度 、2不審判制度 、3上級検察庁の長(検事総長で良いか)に対する不服申立て、である。
付審判請求は、検察審査会制度と並んで、起訴便宜主義の例外として位置付けられている。
使い勝手としては、検事総長に対して、不服申立てをする方法が、よさそうだ。
〇 告訴状不受理決定と付審判請求との関係
告訴とは、1犯罪事実と2それに対する処罰意思 との2点を併せて意思表示をいうものである。
たとえ警察や検察などの捜査機関が、これを独自に「 不受理 」としたとしても、法律上、意思表示が適切になされていれば、告訴として取り扱われる。
したがって、付審判請求の要件である①についても満たされているものと認定されることがある。
〇 下記の付審判請求認容決定3例は、それぞれの場合の判例である。
1 不受理( 検察官が告訴を返戻した )事例でも告訴が有効であるとした裁判例、
2 告訴後の捜査により告訴時点とは異なる事実が発覚した場合でも発覚した単一の事実についても告訴が有効であるとした裁判例、
3 告訴事実と単一の事実を電話で追加告訴した場合でも電話による追加告訴も有効であるとした裁判例である。
1 東京高決平成25年2月18日 付審判請求認容決定 不受理事例
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%98%E5%AF%A9%E5%88%A4%E5%88%B6%E5%BA%A6#%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E7%8A%AF%E7%BD%AA
被疑者公務員から犯罪の被害を受けたと主張する被害者が、東京地方検察庁に対し、公務員職権濫用罪により告訴する旨の告訴状を提出したところ(いわゆる「直告」の事案)、検察官が「告訴状の返戻について(通知)」とした書面により、「被告訴人の刑事責任を問うことは困難である」旨を伝達するとともに、同告訴状を返戻した事例。
被害者が付審判請求をしたものの、東京地方裁判所は、検察官が告訴を受理しておらず、したがって付審判請求の要件である①告訴も、②それに対する不起訴処分も、いずれも満たしていないとし、被疑事実に関する判断に立ち入るまでもなく棄却決定をした。
これに対し、請求人が東京高等裁判所に抗告した。東京高等裁判所は、原審の棄却決定を破棄し、本件を東京地方裁判所に差し戻した。
その理由は、次のようなものであった。
すなわち、本件告訴状には、犯罪事実が特定されていて、その処罰意思も記載されていることから、告訴として有効であったのであり、かつ、検察官は「告訴状の返戻について(通知)」によって「 被告訴人の刑事責任を問うことは困難である 」旨を伝達することで、実質的に不起訴処分をしている。
したがって、告訴と,それに対する不起訴処分がなされており、本件は要件を満たした付審判請求であるのに、原審は審理をすることなく棄却していることから、改めて被疑事実について審理を尽くさせるために原決定を取消し、本件を東京地方裁判所に差し戻す、というものである。
2 東京高決令和5年7月18日 付審判請求認容決定
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%98%E5%AF%A9%E5%88%A4%E5%88%B6%E5%BA%A6#%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E7%8A%AF%E7%BD%AA
事案の内容は、警視庁警察官(B)が、同僚警察官ら(Cら)に嫌疑がかかっている刑事事件に関する書類(本件書面)について、その嫌疑が発覚する前の時点で被害者から情報公開請求をされていた際に「不存在」として開示しなかったというものである。
告訴人は、情報公開請求をした際に警視庁から「不存在」と回答されたことから、BがCらを庇うために本件書類を廃棄したものとして、隠滅行為が証拠隠滅罪と公務員職権濫用罪の観点的競合に該当するとして、告訴・告発した。
しかし、捜査が進むにつれ、本件書面はまだ廃棄されておらず、Bの上席である生活安全課長のAが、本件書類を「私物として個人保管」していたことが発覚した。
そこで告訴人は、被疑事実を隠滅行為から隠匿行為に変更し、東京地方裁判所に証拠隠滅罪及び公務員職権濫用罪の観点的競合であるとして、付審判請求したものである。
東京地方裁判所は、先行する告訴は隠滅行為に対するものであるところ、本件書面は未だ廃棄されておらず警視庁内に保管されていることから嫌疑が認められず、また、隠匿行為については、告訴の効果が及んでおらず、したがって検察官による不起訴処分もなされているとはいえないことから、付審判請求の要件を欠くとして審理しない、として棄却した。
これに対して、請求人が東京高等裁判所に抗告した。東京高等裁判所は、原審の棄却決定を破棄し、本件を東京地方裁判所に差し戻した。
その理由は、次のようなものであった。
すなわち、本件では、請求人の処罰意思は、隠滅行為そのものに対する処罰意思というよりも、要するに被疑者警察官らが本件書面が顕出することを妨げた行為にたいする処罰意思であるということが、告訴・告発状の記載から明らかであり、当初の告訴・告発状に被疑事実として隠滅行為が摘示されてしまった経緯は、請求人の情報公開請求に対し、警視庁が「不存在」との虚偽の回答をしたことがきっかけである。
しかも、証拠隠滅罪の構成要件である「隠滅」には、隠滅行為のみならず、一定の場合に隠匿行為も含まれるところ、本件において、本件書面が隠滅されたとする告訴・告発状記載の被疑事実と、隠匿されたとする付審判請求書記載の被疑事実は、単一事実と評価することができる。そうすると、告訴の処罰意思は、同一・単一の事実にも当然及ぶと解されていることから、本件では隠匿行為に対しても告訴が及んでいたものということができる。
しかも検察官は、不起訴裁定書および検察官作成意見書の中で「請求人は、『仮に本件書面が未だ存在していたのだとしても、隠匿行為に他ならない』などと主張してくるおそれがあるが」等と記載しているのであり、隠匿行為に対して告訴の処罰意思が及んでいる可能性を認識した上で不起訴処分としているのだから、隠匿行為に対する不起訴処分もなされたものと言うことができる。
したがって、本件では隠匿行為についても適法に付審判請求がなされていたものと解さなければならないのに、原審は審理をすることなく棄却していることから、改めて被疑事実について審理を尽くさせるために原決定を取消し、本件を東京地方裁判所に差し戻す、というものである。
3 東京高決令和6年2月15日 付審判請求認容決定
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%98%E5%AF%A9%E5%88%A4%E5%88%B6%E5%BA%A6#%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E7%8A%AF%E7%BD%AA
事案の内容は、警視庁警察官が、約4年間に渡って、その間繰り返し告訴の意思を表明する犯罪被害者の告訴を受理しなかったこと(不作為行為であるX事実)が、公務員職権濫用罪に該当するとして、告訴したという事案である。
X事案については、警視庁内の組織的犯罪について専従している警視庁刑事総務課刑事特別捜査係(通称、警特隊)により捜査が行われ、その結果、警視庁警察官が、単に告訴を受理しなかっただけでなく、告訴不受理を確実ならしべるべく、犯罪被害者から電話がかかってきた際には署員全員で無視することにする取り決めや、犯罪被害者から聴取した相談簿の内容を「告訴したい」から「被害届を出したい」等と改竄していたことが発覚する(作為行為であるY事実)。
そのことを警特隊からの電話で知らされた被害者は、Y事実もX事実を確実ならしめるべく行われた単一の事実であるから、Y事実についても告訴意思がある旨を、警特隊に対して電話で伝えた。
これに対し,東京地方検察庁は、X事実とY事実を分割して事件裁定し(後述の「検察官による対抗措置」を参照)、いずれも同日に不起訴処分をした。
なお、不起訴裁定書の中で、X事実については告訴事件として取り扱う一方、Y事実については、「捜査機関として電話による告訴は一切受け付けていないことから、警特隊に対して電話で告訴意思を述べたというだけのY事実には、適法な告訴がなされていない」として、非告訴事件の区分で決済をした。そこで告訴人が、X事実とY事実を同じ付審判請求書で、東京地方裁判所に付審判請求したという事案である。
東京地方裁判所は、X事実については、「犯罪被害者が繰り返し告訴の意思を表明しているのにも関わらず、長年に渡って受理していなかったことは、公務の遂行として適切なものであったとは言えない」としながら、(Y事実について認定せず、その結果)警視庁警察官が悪質な態様で不受理としていた訳ではないとして棄却した。
加えて、Y事実については、検察官の意見を前提に、判断しなかった。
これに対して、請求人が東京高等裁判所に抗告した。東京高等裁判所は、原審の棄却決定を破棄し、本件を東京地方裁判所に差し戻した。
その理由は、次のようなものであった。
すなわち、電話による告訴であるから受理しないとする捜査機関の主張には理由がなく、犯罪事実とその処罰の意思が明確になされている以上、それが電話によるものであるとしても告訴は有効になされているのだから、本件は、①X事実単体、②Y事実単体、③X事実とY事実を包括して一つの事実と評価した場合、の3つについて付審判請求の対象であると解すべきであり、原審は②と③について審理をすることなく棄却していることから、改めて被疑事実について審理を尽くさせるために原決定を取消し、本件を東京地方裁判所に差し戻す、というものである。
また、なお書きとして、検察官は上記主張に基づき、最初からY事実は付審判請求審の対象外であるとして、検察官作成意見書を作成していないが、このことを理由に本件対象がX事実のみに限定されたり、検察官の裁判所への送付手続に不備があったとしてY事実に対する付審判請求の効力そのものが否定されたりすることはない、と付言している。
〇 検察官による対抗措置
〇 請求人による対抗措置
〇 手続等の詳細は、刑事訴訟法262 - 269条及び刑事訴訟規則169 - 175条が規定する。
〇 不服審査申立てと付審判請求とは、並立請求できか
〇 付審判請求書の書式