和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

大和の伝統野菜 その二 片平あかねと今市かぶ

2010年12月09日 | 野菜大全
 
                     片平あかねと今市カブ(未熟)
 以前に大和野菜の「大和真菜」を紹介して以来、随分間が空いてしまいましたが今回は「片平あかね」です。山添村の片平地区に受け継がれてきた片平あかねはカブの一種で、根が染まったように、いや葉っぱも含めて全体が真っ赤に色づくためにそう呼ばれています。
 名張川に沿って所在する片平集落は百戸に満たない無いような集落で、田畑は限られた河岸段丘上や傾斜地に張りつくようにあるに過ぎません。近年においては基盤整備の手も加えられているのかも知れませんが、いずれにせよ一集落でのみ受け継がれてきた種というのはかなり珍しく貴重なものなのでしょう。
 ただ、片平あかねというのは奈良県が主体となって行った大和野菜の発掘と認定作業の結果生まれたとでも言いましょうか、つい最近までは単に「日野菜」として市場に出荷していたに過ぎなかったのです。日野菜を名乗るには姿は似ていても色の付き具合からすればかなり無理が有る気もしますが、全国的に名の通った日野菜のほうが荷がさばき易かったのでしょう。野菜の系統や見た目からしても日野菜の流れを汲んでいるのは確かで、片平から日野への道筋は上野を経て現在でも容易にたどれます。その道を通って種がもたらされ、片平の地で変異したものが代々受け継がれて固定化したのだと思います。
 
日野菜と片平あかね(未熟)

 地野菜に良く言われることに、その土地でなければ上手く育たないというのが有ります。片平あかねも片平地区でしか真っ赤にならないと言われましたが、流石にそれは無いだろうと思っていました。地元の人としては、種が外部に流失するのを防ぎたいという思いがあり、地元ブランドを守りたいが為の発言しょうが、アントシアニンによる発色が主な要因なので気温が関係していると考ていました。ところが、いざつくってみると明らかに本場片平のものに比べて赤色が薄い。特に葉っぱがもっと燃える様な赤色をしているはずなのに明らかに色が薄いと言わざるを得ない、まだ寒さが本番ではないので結論は出せませんが、ほんとうに土質が関係しているのかも知れません。もし仮にそうだとすると、数ある在来種の野菜の中でもかなり特殊な部類に入ると思われ、そう言えば焼畑で作る温海カブも根が赤いタイプなので、それと同じ原因で根が赤いならば片平地区はアルカリ性の土壌なのかでしょうか?
 うちで育てたカブは片平地区ではないので、正確に言うと片平あかねを名乗らない方が良いのだとは思います。が、まあ恐らく来年辺りには「飛鳥あかね」の名前で一般に種子が販売されていることだろうと思いますので、それまではこのままにしておきます。

 このカブは肉部より葉茎部が大きいのも特徴で、現在のカブのトレンドである葉茎部がコンパクトなものとは対照的と言えそうです。甘酢漬けなど肉部と茎部を一緒に漬ける場合はやはり葉茎部のボリュームがあるほうが良いのですが、大根と同じくカブの葉は水分の蒸散が激しくて著しく品質を落としかねない為に、新しい品種ほど葉軸部は背丈が低くなっています。
 今市カブも最近の白カブ品種と比べればかなり葉軸部が高く、葉も薄く破れ易いのですが、片平あかねの葉茎部は更にその上を行くと言った感じの大きさです。品種改良が進んだ日野菜と比べてみると如何に片平あかねの背丈が高いかが良く分かると思います。と言っても下の写真は一ヶ月ほど生育に差が有る為、正確とは言い難いものですので
 


 
 こちらが今市カブ(中カブ)です。葉がかなり大きく、それにしても写りが良かったのか暖緑色で美味しそうな葉っぱじゃないですか?目にまぶしいほど白い肉部と共に調理し甲斐があるってものです。

以前の大和真菜について

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。