platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

Let us hear the play

2005-12-31 | グランドホテル ザ ミュージカル
 『グランドホテル』公式ブログや菅野こうめいさんのブログを読んでいると、演出のグレン・ウォルフォードさんがじっくりと芝居を作り上げている、ということが色々な形で伝わってきます。グレンさんの経歴を読んでいると、早くからのシェークスピア作品への取り組みと、言語の異なる香港、韓国、日本での演出活動に二分されているような感じがして、どういった方なのかよくわからない、というのが最初にいだいた正直な印象でした。
 テレビで初めてBBC制作のイギリス人俳優によるシェークスピア劇を見たとき、弾丸のように発される台詞に日本語に翻訳されたものとは違う迫力がみなぎり、たじたじとなってしまった覚えがあります。シェークスピアは全37作品で88万語書いた、といわれているそうですが、殆ど無背景であった当時の劇場を言葉で埋め尽くすような感じだったのでしょうか。そのためか、その後も翻訳劇にはどうしても薄めたような、あるいは「訳された」たどたどしいような感じを、偏見とは知りながら持ってしまい、もともと日本語で書かれたものや、言語によらないダンスに魅かれていったように思います。  
 「解釈する」という言葉と「通訳する」という言葉は英語では同じinterpretを用いるのが一般的なようですが、稽古場の様子を読む限りでは、グレンさんは演者と作品の対話をずっとinterpretして距離を縮めていっておられるような気がします。言葉の洪水のようなシェークスピア劇とずっと向き合い、母国語である英語をinterpretしている人だからこそ、何語であっても通訳interpreterのように、「演出」することが可能なのでしょうね。「演じる」という言葉も、フランス語、イタリア語ではinterpretに相当する言葉が用いられていることを、『グランドホテル』の稽古ブログを読むと思い出します。
 Let us hear the play. これは『ハムレット』の劇中劇で観客の一人としてハムレットが言う台詞ですが、いつもは目ばかり見開いているこのダンスファンも全身耳にして、グレンさんと出演者の方が積み上げて、あと一週間で舞台の上に響く台詞をじっと聞きたいと思っています。今年の夏6月24日から7月8日までイギリスのLudlow Festivalで『夏の夜の夢』Midsummer Night's Dreamを演出されるとのこと、季節もぴったり、会場がまた古城をそのまま使うようで素敵です~。