platea/プラテア

『ゲキxシネ五右衛門ロック』『The Musical AIDA』など、ミュージカルの話題作に出演の青山航士さんについて。

「劇団演技者。」やっと見ました

2005-06-01 | ボーイ・フロム・オズ
 製作発表から、スタッフと出演者の顔合わせ、リハーサル風景、メインキャストのインタビューに加えて、ピーター・アレンの生涯も駆け足ながら紹介され、盛りだくさんな30分でした。青山さんの踊る姿も、ライザ・ミネリ役の紫吹淳さんを中心としたダンスシーンでちらっと映りましたが、舞台ではもう少しゆっくりボブ・フォッシー調な青山さんがみられるかも、ですね。楽しみがまた増えました~。ファンとしては演出のフィリップ・マッキンリー氏が紫吹さんにアドバイスしている傍らの、「こーじくん」モードではない青山さんの表情、民放ならではのお宝映像で嬉しかったです。

 この番組の放映予定日を間違えてお知らせしてしまい、自分だけに感じられる程度(意味ない・・・)に謹慎中、この「ボーイ フロム オズ」という作品に関連して書かれた事をいろいろと読んだのですが、知れば知るほど奥の深い世界のようです。もちろん何でも調べてみればさまざまな事が関わっているものですが、例えば今回鳳蘭さんが演じられるジュディ・ガーランドの死はあまりに痛ましく、「銀幕のスター」という言葉があった時代の奈落を見たような思いがします。

 ボードビリアンの両親の間に生まれ、わずか2才からエンターテインメントの世界にはいった彼女は、MGMのミュージカル黄金期の真っ只中にあって、ハードスケジュールをこなすために、1日18時間働いたとさえいわれています。そして眠りにつくために睡眠薬を、目が醒めれば効率よく撮影するために中枢神経刺激剤を服用することをスタッフから要請され、まだ10代であった彼女は拒む術も知らなかったようです。この薬物依存は生涯続き、彼女の健康もキャリアも損ない、最後にはオーバードーズという形で彼女の命を絶ってしまうのです。以前コメントにアメリカのミュージックシーンに「ファウスト的」なものを感じる云々書きましたが、悪魔に魂を売ってこの世のすべての「満足」を手に入れる、というのは、富と名声にきらびやかに翻弄され、ファウストのように救いに至らないままに、天寿を全うすることなく若くして逝く、彼女のような生涯を暗示しているのだと思えてなりません。

 娘ライザ・ミネリの父親であるビンセント・ミネリとは19才年が離れているのですが、恋多き女であったガーランドはしばしば自分よりもずっと年上の男性と恋に落ちたということです。自分を保護する「父性」というものに憧れた部分があったのかもしれません。ガーランドが見出したピーターも父親との関係に苦しんだ人だというし、義理の親子となったこの二人にはやはりどこか共有する感覚があったのだろうな、と思います。「よき母」は今陽子さんがピーターの母親として演じられる一方で、ビンセント・ミネリはもちろん、この物語には「よき父」というのは一人も登場しないようです。

 鳳蘭さんは女優さんとしての舞台も、客席におられるのも拝見した事がありますが、オフでもあの華やかさはそのままで、大スターの輝きを感じました。骨の髄までスターだったガーランド役、ぴったりだと思います。

 ・・・うう、また長くなってきたので今日はこのへんで。ミュージカル初心者の迷走はまだまだ続きそうです。

 ジュディ・ガーランドの死については、ケネス・アンガーの著書「ハリウッド・バビロン」(’75)では浴室に鍵をかけ手首を切って、とあります。事実がどうであれ、その直前に撮影された彼女の写真には次のような文章が添えられています。「年齢が精神的な尺度で数えられるなら、ジュディはまさに、並みの人間の十倍も年を取った何百歳もの老婆ということになる」(上掲書、明石三世氏訳)―彼女が疲れ果てていたことは確かなようです。