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ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】相対論対量子論 徹底討論・根本的な世界観の違い

2007年09月05日 22時14分25秒 | 読書記録2007
相対論対量子論 徹底討論・根本的な世界観の違い, メンデル・サックス (訳)原田稔, 講談社 ブルーバックス B-1268, 1999年
(Dialogues on Modern Physics by Mendel Sachs 1998)

・まずは本書よりこちらの一節を。「君のいまの話では、別に量子力学の基本構造を変えることにはならないよ、マニー。君の話は、依然として線形空間に基づくものだけど、これは観測理論としての量子論で出てくるタイプの確率論にうまくフィットする構造をもつものだからね。いま言った非線形演算子を採り入れると、量子論の波動を表す解の中味は変わってくると思うけど、いまの話は依然として従来のヒルベルト空間に基づいている。つまり、ミクロな物質の基本法則を表す確率論の話になっているんだよ。」p.148 この会話をすんなり理解できる人間が、果たしてこの世に一体どれだけいることか。易しい内容を想像して手に取った本ですが、ブルーバックスにあってはこれまで読んだ中でも屈指の難易度でした。興味をひかれる話題がないこともないが、これはしんどかった。
・過去、プラトンやガリレオが用いた『対話』形式にならい、マニーとモーとジャッキー、三人の物理学者が論を交える。
・議論が白熱するとこんな内容でもつかみ合いの喧嘩になるのでしょうね。周りの一般人は喧嘩の内容が理解できず、( ゜д゜)ポカーン 想像するとちょっと可笑しい。
・「二〇世紀において科学史上特記すべき出来事は、量子論と相対性理論という科学思想における二つの大発見が同時になされたことである。というのも、過去において、科学的革命は一時期に一つしか起きてこなかったからである。」p.5
・「科学するということは、実験事実に基づいて合理的思考を進め、自然の背後に潜む真理を発見することだわ。これは、プラトンの洞窟の隠喩と同じ考え方よ。」p.29
・「ねえ、君たち、学生になんて話したらいいのか、教えてくれよ。  マニーとジャッキー(声を合わせて) 両論併記のかたちで、議論のすべてをありのままに教えて、どちらをとるかは、自分たちで考えるように言ったらいいよ。」p.31
・「マニー、君は本当に光の正体がわかったと思っているのかい? アインシュタインは生涯をかけて研究した後で、「光については、目に映る以上のものがある」と言ってるけど。」p.34
・「宇宙は完全な秩序に支配されているという考えも説得力をもっているし、無秩序が宇宙の真の特徴として基本的なものだという考えもまた説得力がある。」p.47
・「必然的真理というのは、述べられていること以外の主張が成立する可能性が完全にゼロであるような言明のことなんだ。つまり、最初から正しさが保証されている自明な言明だ。たとえば、2+3=5というとき、整数の定義と「足し算」という定義に基づけば、これ以外には起きようのない結論を述べていることになる。この和の結論に関しては、反駁の余地はまったくない。しかし、科学的真理は、このような約束事の上に成立するものではなく自然との照合によって成否が判定されるものだから、常に反駁の余地を残しているんだよ。」p.66
・「いま言ったような解釈をすれば、相対運動している基準系間の時間と空間の変換は、任意の基準系に準拠した物理法則がすべて一対一の対応関係を維持するために必要な目盛りの変更にすぎないということになって、相対論にはなんの論理的パラドクスも現れないことになるわ。」p.70
・「いずれにしても、私たちは信念に基づいて行動すべきよ。誰であろうとも、信念に基づかない認識を主張するのは完全に間違っているわ。」p.73
・「そのとおりだ、モー。ジャッキーと僕とでは、「科学」という言葉の定義が違っているようだね。この違いは、科学の研究が自然認識をどこまで深めることができるか、という点に関係しているように、僕には思えるな。科学は、自然現象をできるだけ簡潔に記述するのが役目であってそれがすべてである、というのが僕の主張だよ。ところが、ジャッキーの考えでは、このような自然界のデータの簡潔な表現は、このデータの背後にあるものを理解するための単なる一ステップにすぎないというわけだ。」p.77
・「『新科学対話』に出てくる「自然界のどんなにささいな現象を見ても、最高に優れた理論家でさえ完全に理解することは不可能だ」というガリレオの言葉を読んだことがあるけど、これは自然界のいかなる現象の場合でも、それに対する認識は無限の奥行きをもつものだということだろう。」p.136
・「数学の公理の設定は、完全に私たち人間の勝手に任されているものよ。数学的真理は、発見されるものではなく、私たち人間がつくるものなのよ。これに対して、科学的真理は、発見される性質のものだけど、いつまで経っても確定的に証明されることはないわ。実際、いかなる物理現象の背後に潜む真理も、決して確定的に理解しうるものじゃないと思うの。」p.144
・「結局、僕たちはまた「科学とは何か」という問題に戻ったことになる。いったい、科学とは何なのだろうか。自然に対するもっとましな記述方法を探ることなのか、それとも自然を説明することなのか、どっちだろう。」p.151
・「僕たちは科学者として、学生はもちろん社会に対しても、基礎科学の唯一の真の目的が、宇宙のあらゆる分野の現象に対する理解を認識そのもののために――応用などを意識せずに――深めることを明らかにしていく必要があるんだよ。」p.155
・「私の考えでは、重要な科学者というのは、重要な問題を提起することができ、その解答を自ら探っていくことができる人のことよ。ここで一番難しいのは、何が重要な問題であるかを見極めるということなの。つまり、その問題を解決することにより、物理現象に対する理解が深まるようなものでないとだめなのよ。」p.163
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