映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『ゴーン・ガール ~Gone Girl~』

2015年04月25日 | 映画~か~
2014年 アメリカ映画


毎度の事ならが、というか以前に増して更新スピードが遅くなっているこのブログ。あまりに更新しないからなのか、知らないうちにブログのテンプレートが変わってました。

さて、『ゴーン・ガール』です。
一言で言うと、「なんじゃこりゃーっ!?」でした。良くも悪くも、予想を裏切られました。


一番の驚きは、物語が想像の斜め上を行っていたこと。話の内容はいつものことながらできるだけ耳に入れないようにしていたので、どんな物語かは知りませんでしたが、「どうせありふれた家族愛(夫婦愛)を描いたアメリカお得意のお涙頂戴ものでしょ?」と思っていたのです。予想を裏切られてよかったかどうか…ありがちなベタベタの夫婦愛の物語でなかったのは確かに良かったです。そうでなければ最後までこの映画を見れたかどうかわかりません。ただ、この物語がワタシ好みだったかどうかはまた別の話でして。ショッキングだし、見るものを惹きつけるのは確かなのですが、気持ちのよい話でもなく…。いや、まぁ、観てよかったんですけどね。


どうして観てよかったかというと、一番の理由は主演のロザムンド・パイク。私が住んでいるイギリスでは、この映画結構な注目度でした。彼女がイギリス人であることも理由の一つかもしれません。イギリス映画では結構よく出ていて、しかしいつも優等生的な役柄だったのです。だからこそ、この映画での彼女の役柄、そしてこれまでとのギャップ、はっちゃけぶりは本当に驚きました。私の中で特に印象が強かったのが、好きな映画の一つである『Made in Dagenham(本題:メイド・イン・ダグナム)』で、自動車会社フォードの重役の妻で、オックスフォード大学出身の才女なのに男女平等ではない時代背景から専業主婦をしているという役柄でした。しかもロザムンド・パイク自身も本当にオックスフォードの英文科出身で、映画の中で「私は世界最高峰と言われる大学で、世界の成功者たちの話をいつも読んでいたの(意訳)」という台詞もあり、もう完全に「インテリ」「上流階級」的なイメージが私の中で出来上がってしまったのです。その彼女が、完全にキレまくっている女性(中身が)を演じていて、それが本当に見事で。彼女の演じることのできる役柄の幅広さと演技力の高さを楽しめただけでも、この映画を観た甲斐があったというものです!



そしてもう一つ、観てよかった理由があります。それは、ベン・アフレックの役柄が彼にぴったりだったこと!


個人的には、気になるには気になるのだけど、映画館に行くほどは興味をそそられない…という映画でした。恐らく、というか8割型、どうして興味をそそられなかったのか、というか特に観たいとも思わなかった理由には気づいているのです。それが彼、ベン・アフレックだったのです。


わかってます。彼が才能あふれる業界人であるということは。わかっていますとも。あえて業界人と書いたのは、彼が監督業、脚本家としてものすごく成功しているから。でも俳優としては正直うまいと思ったことがなく、個人的には彼の役柄はいつも彼自身というか彼の通常時のイメージよりも「格好良すぎる」と思っていたのです。やたらできる男だったり、ヒーローだったり、2枚目役だったり…。そこでものすごく演技力が高ければそのギャップも埋められるでしょうし、逆に言えばそのギャップによりより格好良く見えるという相乗効果だって期待できたのでしょうが、私にはそうは映らず(あくまで私個人の感想です!)。彼の俳優としての最高傑作は、いまだに『グッド・ウィル・ハンティング』だと思っています。普通の若者。それ以上でも以下でもない普通の人具合が良かった。

説明が長くなりましたが、この『ゴーンガール』でのニックという役柄は、彼にピッタリ!!!
もうね、全然完璧じゃないんですよ、このニックという男が。若い学生と浮気していたり、失踪した妻を探すためにテレビでアピールするも写真撮影で笑顔を見せてしまったり。ドラッグ容疑で逮捕された後、報道陣の前で思わず癖でアイドルスマイルを見せてしまったのりピーを思い出してしまったほど。なんというかものすごく人間的で不完全で。その洗練されてなさがある意味すごくリアルで、ベンにぴったりだったのです!彼は絶対にダメ男役が合うと思っていたのですが、やっと彼の本領が発揮されたと思っています(褒めてます!)。


ここ10年位でよく思うのが、アメリカ映画のトレンドというか視点が変わってきたなということ。以前は、「アメリカ最高!家族愛、友情は(上辺だけでも)美しい!」と言うのが根底にあって、何がどうしたって私達が正解!という話が多かったと思うのです。それが、アメリカ社会の中の矛盾とか、口には出せないけど心の何処かで感じている上辺だけの美しさや正義への違和感とかを物語の軸にしている作品が多いように感じます。『ゴーンガール』でも、本当に意図してそうしているのか、勝手に私がそう受け取っているのかはわかりませんが、そういうシーンが見受けられたり。例えば行方不明になった娘を探すためにテレビで協力を訴えている両親の姿やその中の彼らの態度だったり言動だったり。これからのアメリカ映画の方向性にはものすごく興味があります。



それでも、映画館で高いお金を払わなくてよかったとの気持ちは変わらず。DVDで十分です。そして、スッキリ、気分爽快映画ではありませんが、ロザムンド・パイクの突き抜けぶりは見る価値があると思います。(ベンのだめ男ぶりも!)




おすすめ度:☆☆☆★


画像はこちらより。
http://www.indiewire.com/article/nyff-made-david-fincher-want-to-puke-and-9-more-things-we-learned-at-gone-girl-event-20141010

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