いつも必死な翻訳者日記

フリーの実務翻訳者が綴る日常

廃業かもしれない

2010-05-23 23:28:05 | お仕事日記


先日、私が講師をつとめている(=2ヶ月ほど前に復帰)翻訳講座にて。
翌週までの課題を伝える際のこと。
「皆さんは今、お仕事忙しいですか?」

「すっごく暇です」と答えた受講生が一人。
「そうなんですかー」
その場では、なんとなく聞き流したが、
家に帰って、不意に(なぜか冷蔵庫を開けている時に)気が付いた。

“そういえば、彼女が勤めているのは、特許事務所だったはず!”

ひょっとして…?
心当たりがあった。
翌週、尋ねてみた。

案の定、私が肌で感じていた通りの現実があった。

今年度に入って、仕事が激減したとのこと。
リーマンショックの直後は、別に大丈夫じゃん?、と思っていたが、
じわじわと影響が現れ、ここに来て打撃的なものに。
事務所始まって以来の非常事態だそうである。

確かに、リーマンショックの頃からか、
各社から、軒並み、翻訳単価引き下げのお願いが来ていたものの、
仕事の打診は、とぎれることはなかった。

でも、ここ1ヶ月、仕事が来ない。どこからも来ない。

仕事を始めてから、初めてのことである。

私が感じていたことと全く同じことを、彼女は話していた。


               


実は私、この1ヶ月の間、
“質の悪い訳文を出してしまったから、干されているんだ…”
そうも思っていた。勝手に。

確固たる根拠も無いのに、密かに自信を無くし、
・特許の専門家でもなく
・技術者でもなく
・英語が堪能なわけでもない 自分には、
これ以上の伸びしろはない。
半年間の学習ぐらいで、8年間も稼がせてもらったのだから、
もうやめてもいいや。(←あっさりやめてしまおうとする私らしい思考)
そう思った。

この仕事をやめたなら、どうしよう。(←すぐに次のことを考え始める私)
他の働き方…例えば、何かのアルバイト?
ただ、そうやって考えてみると、
私には、取り立てて他にできることは無い。
ある意味、とても効率良く、
特許明細書の翻訳に特化してやって来られた類の人間だ。

考え直してみると、
“やめる”のは得策ではないよなあ。
他の道を考えなければいけない可能性はあるにしろ、
待つ価値はある。(←やっぱり粘る私)
廃業を宣言する必要だってないのだし。(結果的に廃業に至ったとしても)

仕事がゼロになることは無いと考えれば、
今はふんばり時に違いない、とも思う。


               


ただ、先日の受講生の話により、
分野によっては仕事が激減しているらしい、という
事実が裏付けられたわけで・・・。

このことによって、私の小さなプライドが保たれた一方で、
ひょっとすると、少なくとも今年度いっぱい(まだ約1年あるんだけど…)
このまま、仕事が来ないかもしれない、という
致命的な事実に直面したのである。

あぁ、今振り返れば、
仕事に追われていた時代や(←ほんの数ヶ月前のことなんだけど…)
数年前までの、
仕事を断るのに苦労する程だった時代は、
なんて良い時だったのだろう!!!
あぁ、失ってみて初めて実感できるありがたさ。


               


このような事態に備えておく必要性は感じていたけれど、
まさか、こんなに早く、その時が来ようとは。

それに、よりによって、このタイミング。〈with 1才になったばかりのはるたん

受講生の一人は、仕事自体が無くなるわけではないから、
今がそういう状態なら、今のうちに実力をつけておくんだ、と
前向きに言っていた。

私のこの1ヶ月は、
仕事が無いという空虚さが漂いつつ、
でも、その分の時間がプラスになるわけではないという、
はるたんとの毎日だった。

今の状況で、現状維持をする以上に
何かをすることはできるだろうか。
きっと、方向性を定めることが必要で、
決めてしまえば動けるかもしれない、とは思う。
でも、イマイチ先が見えない。

さあ、どうしよう。



★追記★

上の文を書いたのは1週間ほど前のこと。
その後、
1日1時間~1時間半位のまとまった時間を
母にもらって(=はるたんをお願いして)、
“今後につなげるための活動”を始めた。

とりあえず、営業活動と情報収集。
それに続いて、仕事が来た場合にスムーズに仕事ができるような準備、
それを終えたら、
フリーではない働き方の可能性や、
特許明細書の和訳以外の翻訳の可能性を
探ろうと思う。
フリーではない働き方の可能性に関して。
もしも、これから先も、特許明細書関連の翻訳を続けていくのならば、
私に一番必要なもの(今現在足りないもの)は、特許の現場での実地経験なのだ。
(ただ、これは、状況的に当分の間は難しい。痛い。)
同時に、翻訳業以外の可能性も探る。考えが進むにつれ、良い選択肢とは言えないことが分かってきたけど。

私自身が今後、どのように働いていくのか、
長期的視野で考え直す、良い機会でもあると思った。

今までは、常に潤沢に仕事が来るという状況に甘んじて
ブラッシュアップを怠ってきたことだし。

一度、廃業かな、と
あきらめたのが幸いしてか(?)
今回、すっかり、
ゼロからやり直し!という心境に。
気分すっきり。



★補足★

「○○さんは、丁寧に仕事をするし、質の高い翻訳文を納品してくれる。
それはどこでもわかっているから、これからも仕事は来るはずですよ。
今後ボリュームがあるものを進んで引き受けるようになれば、
さらに仕事はくるのだろうけど~」

“情報収集”中に、思いがけず、
このような とてもありがたい言葉をいただいた!!
お世話になっている方からの、
特許事務所の所長さんの言葉の伝聞なのだけれど。

特許明細書の翻訳という仕事に、自信を失いかけている私。
この言葉を励みに、努力しなければ、と思った。
次回、仕事を受けることがあるならば、期待に応えることができるように。

そうそう、そういえば…
この仕事は、完璧に仕上げることが当然、とされる仕事なので、
間違い箇所などがフィードバックされることはあっても、
できて褒められるということは全くないのだ。
…ということに初めて気が付いた。





□この記事の続きはこちら→「仕事が来た」□

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