2010年のノーベル化学賞に、鈴木章さん、根岸英一さんが受賞しました。私も一応化学系の出身ですので、やはりうれしいですね。
簡単に表現しますと、炭素と炭素を結びつける方法の開発ということだと思います。一般に、周期表の端に近い原子ほど、他の原子と結びつきやすい、つまりは反応しやすいことがいえると思います。もちろん、ヘリウムとかネオンのような希ガス元素は除いてですがね。炭素は左端から4番目ですから、それほど反応性が高いとはいえないと思います。
従来の方法としての一例を出しますと、C-Brのように端に臭素がくっついた炭素は、臭素が電気的に引っ張られることによって+に帯電します。(C+)-(Br-)というイメージです。
ここに(-CN)のような-に帯電した炭素を挿入してあげると、+に帯電した炭素と結びついて、臭素が脱離します。結果としてC-CNとなり、炭素と炭素が結びつくことになります。
ちなみにCNの原料ですけど、KCNが一般的でしょうか。化合物名はシアン化カリウムとか、青酸カリウムとかいいまして、推理小説やサスペンスドラマに登場するあれです。有機合成に使用されるのが本来の使い方だと思いますが。
話を戻しまして、炭素と炭素を結びつける方法として、金属触媒を使用する方法が開発されました。+に帯電した金属触媒が、比較的-に帯電した炭素を多く引き寄せることで、炭素-炭素間の結合が起こるというもので、クロスカップリング反応と言われています。これは日本の研究が世界をリードしている分野です。日本人の名前が付けられたカップリング反応が多くあります。ただ、有機金属試薬の反応性の高さのために、不安定で有毒な副産物を生み出してしまうこともありました。
鈴木氏の研究では、パラジウムという金属の触媒を使用し、エタノール水溶液などの塩基を加えることによって目的となる反応物のみが得られることを発見しました。鈴木カップリングと言われているものです。
根岸氏の研究では、あらかじめ塩化亜鉛と反応して有機亜鉛試薬にしてからクロスカップリングを行うと、温和な条件で反応が進行することを発見しました。根岸クロスカップリングと言われているものです。
世の中のほとんどの物が有機物ですから、炭素と炭素を結びつける反応というのは、医薬品の開発や、液晶のような工業製品の開発に大きく寄与したといえると思います。
というわけで、なんとなく内容を理解していただけましたでしょうか。
日本人がノーベル賞を受賞するのはうれしいですね。