ぺんぺんぐいん

ぺんぎん歩きは卒業したよ。

ドラゴンボール

2006-01-20 23:36:30 | パフォ・エンタメ
読んじゃった。髪切った帰りにふと寄った古本屋。
21巻~24巻あたりかな?地球でのベジータとの戦いの最後らへん~、ナメック星でギニュー特戦隊と悟空が到着して戦ったあたり。

++++++

ところでこのブログ、何かにつけ褒めすぎですか??

正月の堺正章の芸、「あれが『面白い』という感覚はわからない」と先輩に指摘されてしまった。

たしかに最初のハットジャグリングは体のキレとかそういうこと以前に技をボロボロ失敗してたし、
その後のコメディー部分は目の焦点定まってないキャラだったのはいいけど
テンションのメリハリがなくてただふらふらしてるだけの人に見えなくもないし、
結局最後は脈絡もなく大技のテーブルクロスを引き抜く芸(+それをまた敷き戻す芸)で締めちゃったり・・

とか、まあ人の欠点をあげつらうのは簡単なんだけど笑
それよりもなによりも、コメディー部分のシナリオに感嘆したんです。

ああいう系統のコメディーはクラウニングと共通していて、
「何か不都合が生じる」→「解決しようとして滑稽に悪戦苦闘する」
「何か不都合が生じる」→「解決しようとしてますますヒドイ目に遭う」
なんてパターンの連なりになってます。

詳しい解説(笑)は省くけど、そのシナリオの構成の出来がすっごく凄くて、
「うわぁここでそうきたかー」とか「あぁこんな不都合な状況の作り方があるんだー」とか、
延々、驚きと感心のため息交じりに見てたんですね。

で、その部分だけ書いたんです。
ちなみにらがぁさんの指摘で知ったんですが、まさか完パクリだとは思いませんでした。w

++++

というわけで。
ドラゴンボールも、まあ種々の批判はあるかと思いますが すごいと思った部分を褒めさせてください。笑

++++

いや、改めて読んでみると、すごい。
何がすごいかって、パフォーマンスにも共通するんだけど、エンターテイメントの技術が散りばめられてる。

観客(この場合は読者)をハラハラドキドキさせる手法が、丁寧に丁寧に織り込まれてる。
いきなりストレートで一刀両断を狙うんじゃなくて、丁寧にジャブ的な手法を積み重ねてる感じ?

++++

典型的な部分をいくつか。

ベジータvs孫悟空@地球。

最後、孫悟空は動けなくなって、その手に集めた元気玉の気をクリリンに受け渡す。
どう狙いを定めていいのか迷うクリリンに、
『突然』界王が「目で追うな!心で悪の気を感じて放て!」と心の声で伝える。
(ここで読者の心理は一種の励起状態に入って、緊張が高まってくる。)
孫悟飯に気を取られているベジータ。それを狙うクリリン。狙って、狙って、狙って・・ いまだ!!!とエネルギー弾を放とうとする瞬間。
(高まりに高まった緊張が、一気に解放されようとして・・)
『突然』、ヤジロベーの「バッキャローなにやってんだ!!早くそれ打っちまえ!!」の叫びが入る。
(読者は緊張&解放のプロセスから一旦離れて、動揺する。揺さぶられる。)
エネルギー弾の存在に気付くベジータ。なりふり構わずエネルギー弾をブン投げるクリリン。
ベジータ、かわせるか?!「うぉぉぉぉぉ」の叫びとともに、か、かわ、かわし・・た?!?!
(再度、緊張&解放のプロセス。)
すんでのところでかわしたベジータ。すり抜けたエネルギー弾は・・ 孫悟飯の方へ!!
(悟飯が危ない!!→動揺、そして緊張へ。)
すると『突然』、悟飯に悟空の心の声が届く。
「はね返せ、悟飯!!悪の気がないヤツならはねかえせるはずだ!!」
悟飯、はね返したーーーーーー
(再々度、緊張&解放のプロセスが繰り返される。)
ベジータに向かって・・ 大爆発!!
(クライマックス。筋書きに解決が与えられ、そのまま次の展開へ。)

・・と、案外、こんなにたくさんのプロセスを踏んでいる。
緊張を高めて高めて、しかしイカせない。
意外性のある展開を盛り込むことで、
読者の緊張は最後のクライマックス部分へ向かってコツコツと高まっていく。

しかもこの間わずか数ページなのに、これだけ豊富な構造を成立させるために、
各々の行為にはしっかりと合理性が保たせられている。

つまり、
「短気なヤジロベー」の「痺れを切らした叫び」、
「界王の、師としての立場」からの「助言」、
「悟空と悟飯の親子の絆」による「心の声」、
「『悪の気』という言葉のリフレイン」による「一貫性」、
どれもがキャラ設定に合致する行為、状況設定に合致するものとして位置づけられている。

全てが設定にマッチしているからこそ、
読者はこれだけの構造が組み込まれた展開を、自然に受け入れられる。
そして知らず知らずのうちに、物語へ引き込まれる。

++++++

戦いの場面以外からも一つ。

ベジータが宇宙へ帰って、亀仙人たちが合流してヤムチャらの死体を集めたりとかして、
クリリンが呟くようにナメック星の話を話し始める。

・・あ、細かい辻褄まで忘れちゃった。。すいません。じゃあもう一つ、戦いの場面。
今度は筋書きのみならず、マンガ的な手法も絡めて。

+++++

話は飛んで、クリリン&悟飯がグルドと戦う場面@ナメック星。

戦闘力に劣るグルドは超能力で時間を止めながら戦うも、能力に勝るクリリン悟飯コンビに追い詰められる。
グルド「も・・もうだめだ!!」
グルド「きえぇぇぇぇぇぇぇ!!」
か 金縛りの術?! クリリンと悟飯、空中で動けなくなる。
必死に動こうとしても動けない。
(←筋肉の緊張&表情でそれを表現。)


そこらに生えてる木を引き抜いて、太い串の形を作る。
(←危ない、どうなるんだろう、と緊張が高まる。)
金縛りが解けなくて苦悶するクリリンと悟飯。
(再度アングルを彼らに移すことで、緊張の引き伸ばし&金縛りの事実の強調)
太くて刺さったら痛そうな串。
グルド「ヒヒヒ、焼いて食ったら、うまいかもな。」
(「残忍さ」というキャラクターを表現することで、「金縛りに遭った二人が殺されそうになっている」じゃなくて
「正義の二人組が金縛りに遭って、残忍な悪者に殺されそうになっている」というより立体的な状況に仕立てる。

(しかもそれが「緊張の引き伸ばし」と兼ねられている。)

そして、いざ、投げられた!!!!
(これが左側のページの最後のコマ。)

ズシャッッ!?!?(ベジータが手刀で、グルドの首をはね落とした!!!!)
(めくったばかりの1ページの2/3を占める大画面、セリフはなし。
ここまでずっと描かれていなかったベジータの『突然』の出現。
ベジータの全身は躍動感バッチリに、グルドの首は「吹き飛んだ」ことがはっきり視覚的に見て取れるように。)

(ここまでさんざんに引っ張って緊張感を高めた分、
その解放には「大きなインパクト」(=視覚的にも、筋書き的にも)が叩き込まれている。)


++++

前者も後者も、『突然』というのが出てきますが 「突然意味のわからないことが起きた」のでは
読者は混乱して物語世界に入れなかったり、矛盾を感じてシラけてしまったりしてしまいますね。

そうならないためには伏線を張ったりキャラ設定を作りこむなどして、
「自然な」「合理的判断の下に」「矛盾のない範囲で」一つ一つの行為が積み重ねられる必要があるってことですね。

その上で読者の予想を超える『突然』の展開に持ち込めば、
それは読者を強く引き付ける強い効果を放ってくれます。

++++++

まあなんていうか 
ドラゴンボールを改めて読んでみると、こういった緻密な手法が随所に使われていることがわかって・・
こりゃ売れるわぁ、と思った。

もちろんドラゴンボールの良さはここだけじゃないんだけど、
あるいは昔高校の先輩がPTA会報誌で分析していたように
「ストーリー自体には汗臭さも泥臭さもなくそっけない」ものなんだけど、
ミクロに見た話の展開に、エンターテイメントの
「観客をドキドキ・ハラハラさせる手法」が丁寧に丁寧に積み込まれていて、
こりゃすごいわぁ、と思った。

マンガを読みなれてる人や、実際に描いてる人、
あるいは演劇やってる人や芸人の人から見たら当たり前なのかもしれないけど・・
僕にとってはとってもとっても新鮮だったんです。

改めて、全部読み直してみようかなぁ。

++++

ちなみに蛇足だけれど、ベジータvsザーボンの2回戦にて。
ただの殴り合いに見せかけて、リズムもしっかり考えられてる。

「ドッ」(ベジータ殴る)
「ガッ」(ザーボンも殴る)
「ダダダダダダダダ」(乱打戦)
「バシュゥゥゥーーーーーーー」(両者一気に上空へ飛び上がる)

殴り合いのシーンはセリフがないからテンポよく読み進められるわけだけど、
さらにテンポ良く&エキサイティングにするため、殴り合いのリズム展開まで作り込まれてた。
(これは、ジャグリングの技の並べ方にも大いに関係のあるところですね。)

1巻から30何巻まで全体を通して見た時に色々と難があるのかもしれないけど、
こんな感じでミクロに見ていくと、いろんな技術が見て取れる気が。

++++

ところで、学問の世界ではどうも芸能を扱うに際して、エンターテイメント的なものが排除されてる気がする。
どちらかというと、アートなもの、芸術的なものを扱ってる人が多いような。。

こういうことを分析してる人もいるのかな?だったら、こういうのも勉強したい。笑

それにしてもまあドラゴンボールなんぞについて延々と書いてしまって
全部読んでくださった方はありがとうございました・・

あと細かいセリフは間違ってるかもしれませんが、
流れとしては正確なはずなのでそこらへんはご勘弁くださいませ~。


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