1月30日、雪も舞った寒い午後、無事に第129回2台のピアノの午後「ジョン・トンプソンの世界」を開催しました。
プログラムより
第 一 部
1. ジョン・トンプソン JOHN THOMPSON [1889-1963]
現代ピアノ教本 第1巻 (全50曲)(作曲者編曲 2台ピアノ版)
MODERN COURSE FOR THE PIANO, THE FIRST GRADE BOOK (COMPLETE)
(ARRANGED FOR TWO PIANOS BY THE COMPOSER)
トンプソンの「現代ピアノ教本」は,ピアノ教育の現場で圧倒的な支持を集め,全世界で最も広く利用される入門教材となっています.日本版(全音楽譜出版社刊)も,目にもあざやかな赤色の表紙で親しまれており,2010年現在で,実に188刷を重ねるまでのロングセラーとなっています.「現代ピアノ教本」全5巻の中で特に重要とされる第1巻に,トンプソン自身の作曲した第二ピアノパートが存在することをご存知でしょうか.入門,初歩の段階からの合奏の意義を説くトンプソンは,魅力的な2台ピアノ版により自説の実践と立証を図ることに成功しています.このコンサートでは,「現代ピアノ教本」第1巻をはじめとするトンプソンの2台ピアノ作品を幅広くご紹介致します.2台ピアノによって,トンプソンの豊かな音楽性があらためて明らかとなることでしょう.今後,日々のレッスン,おさらい会,本格的なコンサートなどさまざまの場で,トンプソンをいっそう有機的に活用いただく契機となれば幸いです。
第 二 部
2. ジョン・トンプソン
JOHN THOMPSON
一年生の2台ピアノアルバム(ジョン・トンプソン編曲)
TWO–PIANO ALBUM FOR THE FIRST YEAR(ARRANGED FOR TWO PIANOS BY JOHN THOMPSON)
I. 小さな木馬 (アームズ) THE LITTLE ROCKING HORSE (J. J. AMES)
II. 樺の木を揺らして (チャールズ・レスリー)SWAYING SILVER BIRCHES (CHARLES LESLIE)
III. ホー・ケーク・シャッフル (チャールズ・レスリー)HOE CAKE SHUFFLE (CHARLES LESLIE)
IV. おもちゃのふね (モーティマー・マニング) TOY SHIPS (MORTIMER MANNING)
V. 七人のこびとの行進 (ロイス・ロング)PROCESSION OF THE SEVEN DWARFS (LOIS LONG)
VI. 森の夜明け (ジョン・トンプソン)FOREST DAWN (JOHN THOMPSON)
VII. 鹿皮靴のおどり (ロイス・ロング) MOCCASIN DANCE (LOIS LONG)
VIII. スイングしながら (ジューン・ワルド)IN THE SWING (JUNE WALDO)
IX. ブラウニーたちの謝肉祭 (ジョン・トンプソン)THE BROWNIES’ CARNIVAL (JOHN THOMPSON)
X. 海神の洞窟 (ロイス・ロング) NEPTUNE’S CAVE (LOIS LONG)
XI. 物語の時間 (ウィリアム・ブルークTHE STORY HOUR (WILLIAM BROOKE)
XII. タンブラン (ジャン=フィリップ・ラモー)LE TAMBOURIN (JEAN–PHILIPPE RAMEAU)
【トンプソンによる序文】 「本書は,ジョン・トンプソンによる第一課程用12の独奏曲集に第二ピアノをつけたアルバムです.例えば,最初の<小さな木馬>で,通常のレッスンで独奏曲として教えてから,教師やより進んだ生徒が第二ピアノをつけて演奏します.初期からの合奏の訓練の効用は明らかです.簡素な第一課程の独奏曲が,二重奏になるとずっと立派に響き,まるで第三課程や第四課程のような色彩感と音量が得られます.これは若いピアニストにとって魅惑的でやりがいのある経験であり,聴き手にも大いに喜ばしいことです.(中略)このアルバムは,一年目の発表会に音楽的興味と魔法のような魅力をも加えることにおいて,ことのほか有用であることがわかるでしょう.これらの楽曲を弾けば,初級者であっても上級の生徒のライバルになることができます.お客さまが喜ぶことはまちがいありません.初めて公開の場で演奏するとき,これ以上に理想的な手段を見つけることは困難です」
3. ジョン・トンプソン JOHN THOMPSON
コンチェルト・アメリカーナ(作曲者編曲 2台ピアノ版)
CONCERTO AMERICANA(ARRANGED FOR TWO PIANOS BY THE COMPOSER)
I. 南部に DOWN SOUTH
II. 西部へ OUT WEST
III. 東部で BACK EAST
「コンチェルト・アメリカーナ」は,アメリカでは,レッスンや発表会の場で長年にわたり広く用いられている名曲です.親しみやすいアメリカ民謡にふれながら,コンチェルトの様式を学ぶことができるように作られている点に特色があります.スピーディーな展開,ユーモアとウィットに富む洗練されたアレンジが魅力的で,ピアノを学ぶ子供たちはもちろんのこと,おとなたちをも楽しませてくれます.
4. ジョン・トンプソン JOHN THOMPSON
序奏とボレロ INTRODUCTION AND BOLERO FOR TWO PIANOS
最後に,トンプソンの作風の幅広さと力量を証する名品をご紹介しましょう.「序奏とボレロ」は,トンプソンのオリジナルの2台ピアノ作品です.第一ピアノ独奏による即興的な味わいの「序奏」に引き続いて,2台のピアノの合奏により,野趣に富むきびきびとした「ボレロ」が華やかに繰り広げられます.
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第1部では小品を50曲演奏しました。
演奏の途中で月島にあるピアノアートサロンに素敵なお客様がいらしてくださいました。
ピアソラ五重奏団のピアニストで作曲家でもいらっしゃるパブロ・シーグレル氏です。
西原昌樹、パブロ・シーグレル氏、益子徹。
これまでに私たちはシーグレル氏作曲の2台ピアノ作品、氏が編曲されたピアソラの2台ピアノ作品を何曲か演奏してきました。
今年1月10日のバンコクのコンサートでもシーグレル氏の「サンドゥンガ」を演奏しました。それらの情報をお知りになった氏が私たちの演奏活動に興味を持って下さり、お忙しい中時間を作ってコンサート会場にいらしてくださったのです。会場にいらしていた他のお客様もアルゼンチンからの著名なお客様の突然のご来場にしばらく興奮がおさまりませんでした。バンコクでの映像を編集したDVDを直接お渡しすることができたのは幸運でした。
こうして、今年最初のコンサートは企画の内容と共に忘れられない時間となりました。
トンプソンの2台ピアノ作品はまだまだ存在しています。今回だけでなく、アメリカの優れたピアノ教育者でピアニストであるジョン・トンプソンの作品を皆様にお届けする機会を持ちたいと思っています。
私たちのHPです。
http://www16.ocn.ne.jp/~pccpiano/