チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「数字1へのこだわり(短編小説『競馬』)/織田作之助生誕100年」

2013年10月26日 23時41分42秒 | 事実は小説より日記なりや?
昨今は夜更かしする者は多くなったが、私は
ガキの頃から宵っ張りだった。だから、
小学生のときには金曜の夜は
宇津井健主演の「ザ・ガードマン」を21時半から観たあと
そのまま22時半からは大阪の朝日放送が制作してた
「蝶々・雄二の夫婦善哉(めおとぜんざい)」
という番組も観てた。その番組の最後にミヤコ蝶々女史が、
武者小路実篤が小皿に茄子や胡瓜を描いて記した
「仲良きことは美しき哉」という言葉をもじった
「夫婦なかよきことは善きこと哉」と言って番組を締めてた。

餅もしくは白玉入りアンコ汁のこと、あるいはその一部を「善哉」という。
それは、今年、60年ぶりの遷宮を行った出雲では、
神在月(かみありづき)の神在祭(じんざいさい)に出される
神在餅(じんざいもち)から「じんざい」→「ぜんざい」になった、
という説がある。いっぽうで、
サンスクリットの"sadhu(サドゥフ、苦行者)"を
中国ではその苦行の結果の功徳の意味ととって
「善」と捉えた。そのことから、修行を達成したことへの
「すばらしい!」という表現を
「善哉(シャン・ツァイ)!」とした。いっぽう、
一説に一休さんが餅入りの汁粉を初めて食ったとき、
「慌てない、あわてない。一休み、ひとやすみ」
とはつぶやかず、上記の意味をモジって
「善哉!」
と叫んだということから、そうしたスイーツを
「ぜんざい」というようになった、というものがある。

包丁一本、晒に巻いて……たかどうかは、
海原千里万里の上沼恵美子女史とアジアンの馬場園梓女史の声を
聞き分けれない拙脳なる私は知らないが、明治16年、
大阪ミナミの法善寺の境内に人形浄瑠璃の太夫だった
竹本琴太夫(木文字重兵衛)が「福」という甘味店を開いた。
阪急阪神ホウルディングズが経営母体ではないが、そこでは
一人前の善哉をさも量が多いように思わせる効果を狙って
二つの椀に分けて出した。そしてそれを、
「めおと」と称したという。が、
この商法が大阪人にはウケて店は繁盛し、店名も
「夫婦善哉」になったのだそうである。

本日、2013年10月26日は、
「夫婦善哉」で知られる作家、
織田作之助(おだ・さくのすけ、1913-1947年)の
生誕100年にあたる日だった。
「夫婦善哉」はその「善哉屋」から採ったタイトルである。ちなみに、
主人公夫婦は人形浄瑠璃に凝る。また、
奥さんの名は蝶々ではないが、蝶子である。
蝶子は芸者あがりで結婚後も"カフェー"を経営した。
織田作之助の実際の妻は宮田一枝という、
作之助が通ってた三高の近くのカフェーで女給をしてた女性である。
作之助も当時としては長身(172cm)でイケメンの類だったが、
一枝夫人も美系だった。まさしく、
「美男美女」の夫婦善哉! だったのである。昭和14年に結婚するが、
一枝夫人は昭和19年に子宮癌で死んでしまう。が、
モテモテ男で女なしにはいれない作之助は2年後に、
宝塚の病院の娘、つまり上流階級の家に生まれた声楽家の
笹田和子と再婚をする。が、
天王寺の下層階級出の作之助は笹田家の家風に合わず、
離婚されてしまう。それでも、
イケメンの作之助はホレられる女には事欠かずだった。が、
10代から患ってた結核が悪化して、
昭和22年が明けてすぐに死んでしまったのである。

死の前年、作之助は相次いで作品を発表した。その中のひとつ、
「競馬」は舞台が京都競馬場と小倉競馬場である。主人公の男寺田は、
三高・京都帝大を出て母校の中学の歴史教師をしてた。
ブサイクな男である。それが、カフェーの女給で美人の
「一代(かずよ)」を細君に娶ることができた。が、
乳癌を患ってしまう。切除手術をしたが、すでに
子宮に転移してた。いわゆる手遅れである。
その間、妻宛に速達葉書が送られてきた。そこには、
「明日午前十一時、淀競馬場一等館入口、去年と同じ場所で待っている。来い」
と書かれてた。寺田の脳裡に嫉妬心が沸きあがったが、
それはそのままで時は過ぎ、妻は死んだ。その2年後、
中学教師はとっくにクビになってた寺田は、
アルバイトの美術雑誌編集者からその編集長となってた。
原稿受け渡しの場所を作家から淀の競馬場(京都競馬場のこと)と
指定された寺田は、馬券購入に付き合わされた。
ビギナーズ・ラックで当たり、そこから競馬にのめり込むようになった。
そうして、寺田は妻の名「一代」から、
1番の馬の単勝ばかりを張ってたのである。実際、
作之助もかように小説のネタにするほど
「一枝」夫人を偏愛してたのである。

明日、府中の競馬場(東京競馬場)で行われる
秋の天皇賞の優勝表彰プレゼンターは、
"作家"の伊集院静が予定されてる。その"代表作"は、
「乳房」だそうである。妻が乳癌になる話らしい。
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