1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

5/12・クリシュナムルティの目

2013-05-12 | 思想
5月12日は、伝説の看護士、フローレンス・ナイチンゲールが生まれた日(1820年)だが、インド生まれの思想家、クリシュナムルティの誕生日でもある(異説あり)。
自分がクリシュナムルティをはじめて知ったのは学生時代で、米国作家のヘンリー・ミラーがエッセイ『わが読書』のなかで、彼について書いていたからだった。それからずいぶんたって、意外なところで「クリシュナムルティ」に再会した。
もう亡くなった友人だが、あるとき、米国ヴァージニア州で米国人の男と知り合い、意気投合した。彼と夜、話し込んでいる折、ふと思い当たって、自分は彼にこう言った。
「きみの言うことは、クリシュナムルティが言っているのに、すこし似ているね」
すると、彼はにっこり笑って立ち上がり、本棚から一冊の本をとりだしてきて見せた。クリシュナムルティの『生と覚醒のコメンタリー』だった。

ジッドゥ・クリシュナムルティは、1895年、南インドのチェンナイに近い町に生まれた。父親は宗主国、英国の下で働く徴税局の役人だった。
さて、1875年にニューヨークで創立された「神智学協会」という組織がある。これは、宗教や科学、哲学の研究を通して、人種、信条、性別、階級のちがいにとらわれない、人類愛の中核とならんとする神秘主義の結社だった。この「神智学協会」が、来るべき、世界の教師となる存在がこの世に降臨する際に備えて、その存在を受け入れる「器」として、適任者を世にさがし求め、吟味して一人の少年を選んだ。それが14歳のクリシュナムルティだった。彼は協会による英才教育を受け、彼が16歳のとき、クリシュナムルティを指導者とする「星の教団」が設立された。
1929年、34歳のとき、クリシュナムルティは団員が3000人あまりいた「星の教団」の解散を、みずから宣言した。
「真理の追求は組織によってはあり得ない。人は、何者にも追従しない、すべてから解放された自由な人間であるべきだ」
というのである。解散後、彼は、信奉者から差しだされた莫大な財産贈与をすべて断り、著述活動をしてすごした。
1986年2月、すい臓ガンのため、米国カリフォルニア州で没。90歳だった。

若いころのクリシュナムルティは、その昔、SMAPの一員だったころの森且行くんにちょっと似ている。ただし、クリシュナムルティは、年老いてからのほうがもっと美しい。彼の写真を見るたびに、
「なんて美しい目をした人だろう」
と、うっとりとしてしまう。
クリシュナムルティの言うことは、すべて真実である。ことばだけでなく、彼の人生も言行が一致していて美しい。
実際には、その言うところはもっともだとは思いつつ、彼の言う通りにはなかなか生きられないのが、またつらいところなのだけれど、それはおいても、クリシュナムルティには、大切なことをたくさん教わった。そのうちで、いちばんよく覚えているのは、正確ではないけれど、おおよそこういう意味のことばである。
「一瞬一瞬を死ぬべきだ。人は過去の記憶を思い出すから、気分が暗くなるのだ。一瞬一瞬に死んで、過去などきれいさっぱり忘れて、明るい気持ちで行きていくべきだ」
まったくその通りだと思う。自分も、あんなきれいな目を手に入れたい。
(2013年5月12日)


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