いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

開高健の人生相談⑦~名コピー~

2019-03-21 13:14:33 | 人生


(問)

卒爾ながら借問す。
某は、1・5流の広告代理店に勤める
2流のコピーライターであります。
日頃クライアントのために、いろいろ
文章をひねりだしてはいるのですが、
あるときさるーテルで垂れ幕がかかり、
「ほんとの愛はここから始まる」とありました。
次いで、通りかかったパチンコ屋にやはり垂れ幕で
「当店の釘師は、とても助べえで、釘の股を
平きたがって困ってます」
とありました。
こういう無名の名コピーを目にすると、
私などはこのままコピーライターを続けていく勇気を失いそうになりますが、
先生、これまでにはたと膝を打って、ウーンと唸ったコピーを、
いくつかご開陳くだされたく、お願い申し奉る。

(答え)

何よりかより、善いコピーライターたる人は、
最低イマジネーションと第六感の鋭敏な持ち主であることを要求される。
そのイマジネーションというのは、仮にだよ、
ホーム・バーつき、クーラーつき、運転手付きの
ロールスロイス・シルバークラウドに
君が乗っていても、
梅雨時の,朝の、ラッシュアワーの、
東京の、山手線の満員通勤電車の苦痛と口臭とオナラの匂いが
まざまざと肌で、鼻で、知覚できなければならない。
その逆もまた真である。
梅雨時の、朝の、ラッシュアワーの、東京の、山手線の、満員通勤電車で
モミタクにされながら、
ロールスロイス・スーパークラウド、
その快適さを知覚できる君でなくてはならない。
それができないのならば、
コピーライターになるのは諦めて、
忍の一字で三等重役にでもなるんだナ。
コピーの過去の名作についての私の好みは、
君がロールスロイスか梅雨時の満員電車を
家にもってきてくれたら、
教えてあげる。
待ってるデ。

















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