た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

南木曽より妻籠まで

2017年06月02日 | essay

 JRの南木曽駅から妻籠宿までを歩く。妻籠から馬籠までのコースほど人気がないのか、単に平日のせいなのか、行けども行けども人とすれ違わない。風が心地よい。山肌に沿って石畳が連なる。街道脇の家々はつつましく庭木を剪定し、寂寞(じゃくまく)たる竹林が物思いを誘う。

 背に汗が滲み始める。だんだんと、忘れかけていた時間の流れを思い出す。

 

 一軒家の前で立ち止まった。

 妙な石膏像が窓からこちらを覗いている。思わず覗き返していたら、奥から人が出てきた。聞くと、芸術家の先生の実家とか。出てきたのは、先生のお母さんであった。なるほど、こういう場所で制作活動をしたら、せせこましい世の中を睥睨(へいげい)するような作品ができるかも知れない。

 家を辞して、さらに街道を行く。

 なだらかな坂をいくつか登り、沢を二つほど渡る。石段を下ったら、妻籠宿に辿り着いた。蕎麦屋がある。土産物屋がある。買い物袋を提げた観光客があちらこちらを指さしている。

 いつの間にか、いつもの時間に戻っていた。

 

 蕎麦屋で蕎麦を食い、朴葉(ほおば)巻きを買って、帰路に就いた。

 

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