夕日

2008年05月03日 17時44分00秒 | B地点 おかか

 

 

彼はいつもニャーと鳴きながら私に近寄って来るのだが、
この日はそうではなかった。
草の中にじっとうずくまっているのを私が見付けたのである。
いや、見付けたというより、偶然でくわしたのだ。
その顔を見て、私はいっそう驚いた。 

 

怪我をしたのかと思ってよく調べてみたが、外傷はない。
子供に悪戯されたのかとも思ったが、
インクの類いを付けられたわけでもないようだ。

  恐らく、炭が煤が付いただけなのだろう。 
  やがて彼は普段の彼に戻った。 
 

尻尾の付け根をぽんぽんと軽く叩いてやると、
ころころと転がって喜びを表現する。 

 

それにしても、
野良猫の身には、いつ何があっても不思議ではない。
彼は高齢である(と推定される)だけに、なおさらだ。

 

夕日の沈むことが確実であるように、
いつか別れが来ることも確実なのだ。
そんなことを考えて私の心は重くなった。 

 

やがて私が腰を上げると、
彼はいつものように私を見送ってくれた。 

  そして彼はいつもの階段を登り、 
  いつもの場所に陣取った。 
  川の反対側からその姿がよく見えた。 
  雨に洗われた空に夕日が照り映えていた。 

 

 

 

 

 


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