質素な贅沢

2009年07月27日 19時02分00秒 | B地点 おかか

 

 

「ちょっと日も出てきたな」
「雨上がりはいいなあ」
「草も綺麗に洗われたし」
「空気も澄んだし」
「最高だなあ」
「……が、何か足りない」
「そうだ。アレだ。アレが足りないんだ」
「お~い! ちょっと降りて来~い!」
「は~い」
「それっ」
「よいしょっと」
「先生、雨が止んで良かったですねえ」

「うむ」
「すがすがしい夕方になりましたねえ」

「うむ」
「……あれっ? 先生?」
「僕に何か用事があるんでしょ?」
「用はもう済んだ」
「えっ? どういうことですか?」
「……ふふ。まあ、いいじゃないか」
「?」
「……変な先生」
「ま、いいか」
おかか先生はただ、おむさんに会いたかっただけなのだ。
……いや、単に「会いたい」というのとは、ちょっと違う。
いつもの場所に、いつものように、おむさんが居る ―― その光景を、先生は望んだのだった。
雨上がりの爽やかなひとときを完璧なものにしたいという、おかか先生の贅沢だったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ボブテイル)
2009-08-03 09:44:17
この幸せがずっとつづきますように。
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Unknown (がんちゃん)
2009-08-04 00:05:59
ステキです。
おかか先生ってもしかして
ちょっと寂しがりかな?
でも、その場所に一緒にたたずむのは
なかなかの贅沢ですよ。ね?
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Unknown (kkk)
2009-08-04 00:10:47
谷川俊太郎の詩のようだ
すばらしい
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