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おむさんである。 |
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おむさんは、この日、あまり活動的ではなかった。 |
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人生について、何やら考えているらしいのだ。 |
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すたすた |
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ひょい |
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「……」 |
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「……ねえ、おかか先生」 |
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「僕は、大人でしょうか?」 |
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「……少なくとも、母親の乳を吸ってはいないな」 |
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「大人になるって、どういうことでしょう」 |
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「難しい問題だが……」 |
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「自立するってのが一つの条件かもな」
「う~ん、自立……」 |
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「そうか……自立か……」 |
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そんな二人の会話を、リュックが黙って聞いていた。 |
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そして、リュックは、自立してしまった。
「……あ、あれれっ?」 |
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「せ、先生、リュックさんは、大人になりたかったんでしょうか?」 |
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「む……。自立の意味を、はき違えているようだが」 |
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「ね、リュックさん! 無理して大人にならなくていいんだよ」 |
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リュックは再び、体を横たえた。
「む? お前の言うことが解ったらしいぞ」 |
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「こうやって僕が乗れば、リュックさんも暖かいでしょ?」
「そうだとも。乗ってやれ。互いに暖め合うんだ」 |
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「先生、自立はいいけど、孤立はまずいですよね?」
「うむ。自立した上で、助け合うことが大切だよ」 |
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「そんなことを言える先生は、やっぱり大人ですね」
「……どうかなあ」 |