うた

2008年11月07日 11時55分00秒 | B地点 おかか

 

うーむ。どうだ若造、いい日じゃないか。
日射しはぽかぽか暖かい。だが他方、空気はひんやりと涼しく引き締まっていて、寒く厳しい冬の訪れを予感させる……。秋の日の、この謂わば両義性が、なんともいえんな。
そうだ若造、今日はお前に、若山牧水の歌を幾つか教えてやろう。テーマは「秋の日射し」だ。

うつろなる秋のあめつち白日のうつろの光ひたあふれつつ

「うつろ」という語が二回繰り返され、やりきれない空虚さが強調されるが、末尾では、光が「ひたあふれつつ」と言われることにより、救いと希望も感じさせる。まさに秋の日射しの両義性ではないかね?

こうしてコロコロと転がると、気分最高だ。緑の草の葉が、いい香りだぞ。おや、枯葉もだいぶ落ちているな。

秋の葉の日に光るかなひそひそと急ぐははやも散りしきりつつ

「ひそひそと」が上手い。これがなければ、平板な描写に堕してしまいかねないところだ。春の陽光の中の若葉とも違う。夏の日射しに照らされる青葉とも異なる。秋の、柔らかくそして寂しい太陽に、木の葉がひっそりと静かに光っている。散り急ぐ葉もある。葉が擬人化されているようにも読めるかもしれん。なんなら、この秋の葉を、おのれ自身にオーバーラップさせてみてはどうかね?

最後にもう一つ。

心のうへ狭霧みな散れあきらかに秋の日光に親しましめよ

心を覆っている煩悶や苦悩はすっとんでしまえ、秋の明るい光と仲良くしたいぜ、そうさせてくれ~、ってな歌だな。私だって辛いことはあるが、こうしてお日様を浴びていれば、嫌なことも忘れるってもんだ。


どうだ若造、下手な写真ばかり撮っててもつまらんぞ。ゴロンと横になって、秋の日射しを享受するがいい……!

※引用はすべて、J-TEXTS 日本文学電子図書館から。

第一歌は、若山牧水『海の声』(HTMLファイル)より。
第二歌は、同『秋風の歌』(HTMLファイル)より。
第三歌は、同『死か芸術か』(HTMLファイル)より。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。