釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「下向きのスパイラル」

2020-06-09 19:16:47 | 経済
昨日は九州で35度にもなったようだが、釜石も明日には30度近くになるようだ。とは言え、気温が高いのは金曜日あたりまでのようで、以後はまた下がってくれるようだ。今日の釜石は25度を切っているが、内陸の北上では30度を超えた。職場の窓からは今日もウグイスの鳴く声が大きく響いて来た。夏の日射しを受けた深い緑が、開けた窓から入る清々しい風で、目に気持ちよく入る。昨夕もウォーキング中にカジカガエルの涼やかな声を聞いたが、息子はてっきり鳥の鳴き声だと思っていた言う。言われてみると、確かにカエルらしくない声である。 今日の毎日新聞は、昨日のニューヨーク株式市場で、ハイテク株中心のナスダック総合指数が史上最高値を更新したことを報じた。優良株で構成するダウ工業株30種平均なども上昇している。先週末に発表された5月の失業率が4月の14.7%から13.3%へ改善されたことも貢献したとある。しかし、米国株は先週金曜日の5月の米国雇用統計の発表前から上昇していた。新型コロナウイルスの感染拡大が若干弱まり、中央銀行FRBがジャンク債を含めて債券を買い込み、金利をゼロにまで下げ、市中金融機関の準備率までゼロにしてしまったことで、株価が押し上げられたのだ。日本も米国と変わらないことを日本銀行がやっているため、毎日新聞も本音は書けないのかも知れない。現在の米国の株式市場はもはやこれまで以上に実体経済とは遊離してしまっている。実質5000万人とも言われる米国失業者は、容易には回復しない。特に、米国企業はこうした危機を利用して企業のスリム化を進める傾向が強く、雇用の回復には長い時間を要する。米国メディアは決して報道しないが、4月17日の英国The Guardian は「'We may have to ration': US food banks face shortages as demand surges(「我々は配給しなければならないかもしれない」:米国のフードバンクは需要の急増で不足に直面している)」と題する記事で、米国の各地で食糧不足に陥った人々で溢れていることを報じている。「フードバンクは、コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされた大量のレイオフにより大きな打撃を受けた人々からの急増する需要を満たすために奮闘しており、予算を超える何百万ドルもの資金不足に直面している。」「トランプ大統領が、アメリカ人に、有毒な消毒剤を飲んだり、注射したりするよう助言する中、彼の政治的同盟者、つまり傀儡は、使用された場所では、死亡率が二倍になり、世界中のあらゆる評判が良い医療組織に禁止されているにもかかわらず、まだヒドロキシクロロキンを「万能薬」として推薦している。 それでも、今、各州は、COVID-19患者に有毒なことが証明された非合法の役に立たない薬を、何百万も買うよう強いられている。 しかも、この全てが、3500万人のアメリカ人が飢える中でのことだ。」。米国の実体経済は最悪の状態であり、株式は現在、その実体とは解離している。6月5日、米国コロンビア大学経済学のジェフリー・サックスJeffrey David Sachs教授は、ヤフー・ファイナンスのインタビューで、ハーバード大学の学生当時読んだ大著『大不況下の世界 – 1929-1939』(チャールズ・キンドルバーガー著)について、「キンドルバーガーが1930年代を独特な時代と指摘したのは、第1次大戦後に大英帝国が覇権を失い、米国が第1次大戦後に指導力を発揮しようとしなかった点だ。」、「実際、米国はリーダーとなるのを避け、国際連盟への加入も拒絶し、国内では狂騒の1920年代を迎えた。 (国際社会に)リーダーが不在で協力が行われなかったから、大恐慌は近隣窮乏化策により悪化した。 一例が関税引き上げであり、他国からの報復関税を引き起こし、すぐに貿易の崩壊により両国が苦しみ、ヒットラー台頭、第2次世界大戦へと続いた。」。現在の状況は、リーダー不在という点で、第1次大戦後と共通点があり、「もしも意図的に(米中を)分断すれば、1931年の大恐慌の暗い日々に戻り、下向きのスパイラルに陥ってしまう。」。今の米国は英国(The Guardian)が見た米国の現実から目を背け、中央銀行が提供した薬で幻影の世界を彷徨っているように見える。薬が切れた時、幻影も消える。
松葉牡丹