中央銀行の役割は通貨を発行することを通じて、国の経済の安定を図ることにある。現在の日本銀行は国債の買い入れと株の購入を行っており、いずれも市場に介入してしまっている。結果的に自由市場に介入することで、国債の価格と株価を支えている。9月20日付の日本銀行の営業毎旬報告によれば、国債は392兆円を保有しており、株式や不動産へは11兆円が投じられている。日本銀行の総資産は452兆円であり、資産の89%を国債と株式・不動産が占める。これほど異常な構成を行わなければならない理由は何か。デフレからの脱却を掲げたアベノミクスのためと言うのが表向きの理由だが、アベノミクス自体は何ら成果を上げておらず、失敗は明らかである。対前年比2%のインフレ目標も程遠い。経済成長もほぼゼロ成長である。日本銀行が国債を買い取ることにも限界がある。株式や不動産についても同様だ。これまでの異常な市場への介入をいつか止めざるを得ない。市場もそのことを理解している。いつの日か日本銀行が介入を止めた時点で、国債価格や株価・不動産価格が急落する。国債の場合、価格が急落することは利率が急上昇することを意味する。急激な利率の上昇はいわゆるハイパーインフレとなる。しかも、日本銀行が抱える損失は巨大なものになってしまう。こうした傾向は日本に限らず、米国も欧州も同じである。いずれも「金融緩和」の名で、中央銀行が国債を買い取り、資金供給を市場に対して行っているが、一向に経済は好転しない。世界の基軸通貨であったドルへの不安を打ち消すために、米国は日欧に金融緩和を要請し、なお、自国の金利を上昇させることで世界の資金を米国に向けようとしている。しかし、金利が上がれば経済にブレーキをかけることにもなるため、ためらいがある。経済がさほど好転しているわけではない。対米従属の日本は米国に請われるままに金融緩和を行っているが、政府債務が巨大な日本の場合は欧米と異なり、国債の信用を失いかねない。一たび、国債への不信が生まれれば、国債の大暴落につながる。その時、金利は大暴騰する。凄まじいインフレが到来しかねない。ある意味では財務省はむしろそれを望んでいるとも思える。ハイパーインフレは政府債務を実質ゼロにすることが可能だ。むろん、日本経済は大混乱に陥る。百円で買えたものが、1万円にも10万円にもなる可能性がある。政府債務を消費税で賄うには限界があるため、最後は禁じ手のハイパーインフレに頼るしかないのかも知れない。しかし、そこから立ち直るにも今の日本には基礎体力すらないのが実情だろう。保護された産業しかない現状は体力に余力がない。
芳香を漂わせていた金木犀